2016_03
17
(Thu)19:48

共喰い


こんばんは。
あさ、です。
春コミが終わってから。
全く、一文字も。
ひとかけらも書けず、唸りながら書きました。←結局書いてる

「花恋」が、通販でお求めくださった皆様のお手に届き終わったタイミングで、「夜話」の通販を考えますね。
のんびりやっていこうと思っております。
皆様。
お付き合いの程、どうぞ宜しくお願いいたします。


このSSは、「ピクニックを今開催したらどうなるのかなぁ」と思って書きました。
本当の本当に全然全く筆が進まず、書いた自分も「?」な感じなのですが。
せっかく書いたので、UPします。
お楽しみいただければ幸いです。





【設定 原作沿い】
《共喰い》


今日は、後宮主催のお茶会。
貴族たちの要望を受けた氾大臣の提案により実現された、朱音姫のための茶会、である。
白陽国には後宮入りを今か今かと待っている良家の子女たちが山ほどいる。
彼らにしてみれば、ぽっと出のどこかの姫に正妃の座を奪われるなどたまったものではない。
『少しでも自分たちの存在を知らしめよう』と考えた彼らは、氾家に泣きついて。
そしてその提案に、史晴は乗ったのだった。

もうすぐ茶会へ赴く時刻。
紅珠はいつにもまして艶やかな装いに身を包み、父の見送りを受けていた。

「炎波の姫に失礼のないようにね、紅珠。きっと陛下もお越しになるだろうからお妃様のお側にいるといい。」
「はい。私、しっかりとお妃様をお守りいたしますわ。」
「…そうだね。」

微妙に食い違う、父娘の思惑。
まあ、目的は違っても敵を潰せればそれで良い。

美しく成長した娘を見つめ、氾史晴はぽつりと呟いた。

「お前より相応しい娘など、いないのだがな。」
「お父様?」
「いや、こちらの話だ。」

――――狼陛下の正妃。
辺境育ちの狼王、その隣に立つのは、白陽国の威信を示せるような正妃でなくてはならない。
この国の名は白陽国。
伝統と血筋、格式を重んじる大国だ。
前王の治世で揺らいだ屋台骨。
それを支え切り修復するために必要なのは、突然現れた炎波の姫などではない。
正妃たるべく育てられた、私の娘なのだ。

「――――では行って参ります。」
「ああ、行っておいで。後で会いに行くよ。」

嫋やかに一礼して部屋を出ていく娘を、穏やかに見送る史晴。

「お前より相応しい娘など、いる訳がない。」

低い低い囁きは。
誰の耳にも届かず消えた。





「夕鈴、やっぱり行くの?」
「当り前じゃないですか、じゃれつかないで下さいっ。」

王宮。
いつもより少し華やかに装った夕鈴は、甘えかかる小犬に手を焼いていた。

「そんな可愛い姿、僕以外の誰に見せるの?」
「お客様っ、お客様がたくさん来るんです!はなして~!」
「たくさん?それはダメだな。」

黎翔の腕に力が籠る気配を察知し、兎は必死に飛びのいた。

「ダメはこっちです!後宮主催のお茶会に妃がいなくてどーするんですか!朱音姫もお呼びしてるのに!」
「大丈夫だよ、氾がなんとかする。」
「なんともなりません!紅珠だって困りますよ!」
「…そっちじゃなくて父親の方が、なんだけど。」
「行って参ります!」

脱兎のごとく逃げ出した夕鈴。
その背を見送りながら、黎翔はくすっと笑いぼそりと呟く

「妖は妖同士、仲良く喰らい合わせておけばいいものを。」

麗らかな、春のある日。
穏やかに淑やかに、ゆったりと。
茶会が始まる。






『妃』の座を狙う者たちが一堂に会したのは、今日が初めてでではない。
だが、以前瑠霞姫が催したピクニックの時とは違い、今の夕鈴は『本物』だ。
炎波の使節団を歓迎するための宴。
あの時に投げつけられた朱音姫の一言は、夕鈴自身が驚くほどに彼女を傷つけた。
『本物』になったことで受ける、痛み。
炎波の姫が現れたことにより揺らぐ、『唯一の妃』という立場。
例え黎翔の心が自分にしかなくとも、それに安んじてはいられない。
夕鈴は、ともすれば固くなる表情を必死に寛がせつつ、蘭瑶と向き合っていた。

「宜しいですか、夕鈴様。」
「はい、蘭瑶様。」
「ご自分がどう見られているのか、どう見られたいのか。演じ切りましょうね。」
「…はい。」

茶会が催されるのは、王宮の庭園。
着飾った娘たちを一目見ようと相当な数の官吏たちが集まっていた。
公的な色合いが強い茶会ゆえではあるが、それにしても人目が多い。
四阿にいる夕鈴は、衆人環視の状況だ。
ピリピリと肌で視線を感じていた。

「大丈夫です、『演技』には慣れてますから。」

扇で顔を半ば隠し、軽く目を瞑る。

大丈夫、大丈夫。
春の宴の時だってたくさんの人がいた。
今日の私のお仕事、は。
『本物のお妃様』を演じ切ること。

「では、夕鈴様…参りましょう。」
「はい。」

花咲き乱れる、庭園。
広大なそこを埋め尽くすのは、花と見紛う娘たち。
一段高い場所に設えられたのは、朱音姫の座。
そして、その隣には夕鈴の座がある。
素性不明の下っ端妃と同列に坐さねばならぬ姫の不機嫌な顔が目に浮かぶようではあったが。

「蘭瑶さま…側にいてくださいますか?」
「ええ、紅珠さまとご一緒に夕鈴様の側におりますよ。」

ぐっ、と。
心の中で拳を握りしめ、夕鈴は四阿の階を降りた。

「ごきげんよう、お妃様。」
「お妃様にはご機嫌麗しく。」

妃に会うのは二度目となる娘たちが、優雅に微笑み挨拶を口にする。
何を考えているのか分からない瞳。
あからさまな侮蔑。
不思議そうな表情。
様々なそれらを受け流し、夕鈴はまるでいつもの散策のような足取りで庭を進む。

――――夕鈴様は後宮の主。気負ってはなりません、いつも通りに。

蘭瑶に言われたことを反芻しつつ、笑んで。
ごく自然な動作で自席に向かい、ちょうどのタイミングで現れた朱音姫を出迎えた。

「ようこそお越しくださいました。」
「……。」

ざっと辺りを一瞥した姫。
自らの席を見て、顔が曇った。

「このような場、本来朱音姫には失礼にあたるのでしょうが…ここは白陽国ですので。」
「っ。」

にっこりと微笑み椅子を進める夕鈴。

「ええ、構いませんわ。ここは白陽国ですものね。」

ぴきっと青筋を立てつつ坐した姫に、紅珠が茶を勧めた。

「お口に合うと良いのですけれど。」
「ありがとう。」

茶杯に口をつけた朱音の目が丸くなった。

「美味しいわ。」
「兄に習いましたの。」
「お兄様…水月殿ね。」
「はい。」
「水月殿は楽もお上手とか。」
「はい、さようでございます…他にもいろいろと、兄に教わっておりますの。姫様のお国の事など、も。」
「…それは、どういう、」

気色ばむ朱音姫。
その言葉が終わらぬうちに、すかさず蘭瑶が口をはさんだ。

「お初にお目にかかります。珀瑛風が母、董蘭瑶と申します。」
「あ、」

艶やかな微笑を浮かべる蘭瑶。
夕鈴ですら初めて目にするその笑顔は、見る者の目を奪い、虚をつく。

「さ、姫様。皆様がご挨拶を――――」
「え、ええ。」

蘭瑶に促されるがまま立ち上がり、手を取られ。
壇上から降りゆく朱音に、花々が群がっていく。
繰り広げられる、花が花を喰らう光景。
ぞっとするほど美しく恐ろしいそれは、だが。

「皆さん、朱音姫と仲良くなりたいんですね。」
「そうですわね、お妃様。」

夕鈴には何の恐怖も与えない。

わらわらと集まり姫を食い散らかしていく妖花たち。
淑やかに微笑み毒を吐き散らす。
そのおぞましさを理解できるのは、彼らの同類だけだ。

「お妃様は、私が守りますわ。」
「紅珠?」
「なんでもありませんわ……、っ!」

びくっ。
紅珠の肩が跳ね上がり、蒼褪めた。

「夕鈴、待たせたな。」
「陛下!」

ぱっと立ち上がる夕鈴の顔に浮かぶのは。
本物の。
花の笑顔。

「ご苦労だった、氾紅珠。」
「は、はいっ。」

父の思惑とは逆に。
紅珠は王の御前から逃げるように去っていく。
そんな彼女を迎えるのは、毛色の違う異国の花を食い散らかした仲間たち。

「紅珠は人気者ですね。」
「うん…そう、だね。」

苦笑して。
黎翔はゆっくりと手を伸ばす。

「君は、桜のようだな。」
「え?」
「…どんな花も君には敵わない。」

ぽふっ、と赤くなった夕鈴の頬を黎翔の手が覆った。

「ずっとそのままで、いてね。」
「え、陛下、まさかまたっ!」
「ほら、夕鈴。演技しなきゃ、演技。」
「それとこれとは話が別ですっ。」
「ほら、皆が見てるよ、おとなしく僕に任せて?」
「やっ、」

他の花は要らぬとばかりに夕鈴だけを愛で続ける黎翔。
ぷるぷると震えながら羞恥に、口づけに耐える夕鈴を。
蘭瑶は微笑を浮かべて。
紅珠はうっとりと、見守る。

「まあ、羨ましい。」
「これこそ、愛ですわっ。」

そして、その足元には。
見る影もなくやつれ果てた異国の花が蹲っていた。




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C.O.M.M.E.N.T

うわぁ(°°)毒花対決…食い散らかされたお姫様(笑)←

ちょっと離れて酒の肴に宴会したい!…って思う私は大概、腹黒です( ̄∇ ̄)こんなハハに育てられた娘も勿論!腹黒計略女子(笑)←

そっかぁ!後宮ってそんな家系女子の集まりなんだね(笑)←チガウ

2016/03/17 (Thu) 20:20 | 行 #jxT87rSU | URL | 編集 | 返信

陛下には一輪の愛らしい花しか見えていませんものね♡
愛ですわー愛(*´`*)
夕鈴を桜に例えるなんて素敵です‼︎

夜話!次こそはGETしますー♡

2016/03/17 (Thu) 20:52 | 理桜 #- | URL | 編集 | 返信

ちょっと…スッキリ?(笑)

こんばんは、あささん。

ふふふ。
異国の姫のやつれた様子にちょっと溜飲が下がる思いです~(笑)。

妖の花同士の恐ろしい様も夕鈴にはわからなくていいんですよね~。

あの朱音姫の夕鈴への言葉の刃。
傷つけられた愛しい妃の“かたき”は いつか陛下がとってくれると信じてます。
 
 

2016/03/17 (Thu) 21:34 | みかんママ #- | URL | 編集 | 返信

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2016/03/17 (Thu) 22:36 | # | | 編集 | 返信

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2016/03/18 (Fri) 10:30 | # | | 編集 | 返信

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2016/03/18 (Fri) 17:49 | # | | 編集 | 返信

うわあああ、怖い( ̄◇ ̄;)
絶対混ざりたくないですよねぇ。
まさに毒花の饗宴。
そんな中でも夕鈴は相変わらずかわいいですね(o^^o)
これからもすれていかないでほしいものです。

2016/03/18 (Fri) 19:28 | まるねこ #- | URL | 編集 | 返信

行さまへ

そう、そんな女子の集まりです。(笑)
朱音姫はどちらかというとそういうの苦手なタイプなんじゃないかなー、と。
私の中では蘭瑶さまが超楽しそうでした。
毒花代表。(笑)

2016/03/19 (Sat) 06:35 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

理桜さまへ

どんな花も桜の前には!
陛下にとっての夕鈴ですよね。←思い込み

夜話。
ただいま通販テンプレ準備中です~。

2016/03/19 (Sat) 06:36 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

みかんママ様へ

私もちょっとスッキリしました。
陛下、朱音姫をガツンと叱ってくれないかなぁ。
夕鈴は強いから必要ないのかもしれないけれど、怒ってほしいです。

2016/03/19 (Sat) 06:39 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

タカさまへ

到着のご報告&ご感想ありがとうございます!
読み返して頂けるとは。
望外の喜びです。
不可触は、私も好きなんです。←
よかった~。

通販。
次をお待ちくださってありがとうございます。
準備頑張ります。

2016/03/19 (Sat) 06:44 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

あい様へ

いかがですか、あい様っ。
お体は!大丈夫ですか?!

夜話の通販。
連休中か連休明けにでも通販フォームをUPしようかと思っております。
またもやゆっくり通販です。←

いやいや、そうではなくて。
ほんとに大丈夫ですか?!

2016/03/19 (Sat) 07:00 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

くみ様へ

到着報告ありがとうございますー!
郵便屋さん、優秀!

拍手、ありがとうございます。
励みになるんですよ、あれ。
コメントも、ご無理のない時に頂けると嬉しいです。←

夜話の通販、ただいま準備中です。
予約制ですからご希望の方全員にお渡しできるかと。
もう少しお待ちくださいませね。ありがとうございます!

2016/03/19 (Sat) 07:19 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

まるねこ様へ

ですよね、混ざりたくない!
というか。
夕鈴を混ぜたくないです。(笑)

陛下、いいなぁ。
私も夕鈴を愛でたいです。←そこか

2016/03/19 (Sat) 07:21 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

うわあああ。
毒花が全員で夕鈴を護る。
そう。こういう話が読みたかった!
読んでて涙がでました。
ありがとうございました。

2016/03/19 (Sat) 08:58 | けい #- | URL | 編集 | 返信

けい様へ

「ピクニックを書いてみよう」と単なる思い付きで書き始めたら。
蘭瑶さまと紅珠が楽しそうなことに。(笑)
いやいやいや、泣かないで下さい!
そんなに大した話じゃないですから!

2016/03/19 (Sat) 16:47 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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