2016_01
17
(Sun)23:34

予兆


こんばんは。
あさ、です。

先日拍手15000のキリ番をクラップしてくださいましたTさまから、リクエストを頂戴いたしました。
久しぶりの、オリキャラ芙蓉。
脳内の李順さんと相談しながら楽しく書かせて頂きました。
Tさま、どうかご笑納くださいませ。

それでは、どうぞ。
あ、オリキャラ注意です!



【設定 未来 オリキャラあり(李順さんの奥さん・芙蓉)】
《予兆》


――――それは、少しの変化。




「お帰りなさい、お兄様。」
「ただいま帰りました、芙蓉…具合は?」

ここは、白陽国。
ただ一人の后を愛し続ける狼陛下が治める国。
一時の衰退が嘘のような賑わいに包まれた王都。
その中心にある王宮の程近くに、李順の邸はあった。

「ふふっ、具合も何も…私は病ではありませんわ。」

ころころと笑う芙蓉。
口元に軽く手をあてるその仕草が、李順は好きだった。

「今日は、蹴られましたの。」
「蹴られた?!誰にですか!」

気色ばむ李順。

「お兄様ったら怖いお顔。赤子が、ですわ。」
「…あ。」

ほっとして。
李順はゆっくりと芙蓉の手を取った。

「大事な体なのです。私の出迎えは不要ですから、休んでいなさい。」
「もう、お兄様は過保護すぎますわ。」

妻の足元に気遣いながら、李順は温かいものが胸に満ちるのを感じていた。


――――李芙蓉。
触れることも想うことも許されない、義理の妹。
そして、李の次期当主。
彼女の夫となるべきは、一族で最も優れた男。
何をおいても彼女を守れる、そんな男でなくてはならない。
自分は狼陛下に忠誠を誓った。
この命は彼女のためではなく、陛下のためにある。
これは李家の総意でもあり、自分の意志でもある。
従って。
自分は。
「夫、失格……。」
なのだ、と。
李順はもう何度も自分に言い聞かせていた。

「どうなさいましたの?」
「いいえ、ちょっと思い出したことがあっただけです。」

にこりと笑って芙蓉を安心させる。
そう。
彼女には言えない。
自分の妻になるにあたり、彼女はかなりの無理をした。
北の領地に帰ることを拒みつつ当主の任を果たす、などと。
前代未聞の荒業を、笑顔で覆い隠してこなしている。

「お兄様、お茶を。」
「ありがとうございます。もう充分頂きましたから、湯殿へ行きます…芙蓉は寝台で待っていなさい。」
「あら、お背を流そうと思っておりましたのに。」
「それも嬉しいですが、今宵のように冷える夜は寝具を温めていてもらう方が宜しいのですよ。」

少し残念そうに小首をかしげる芙蓉。
李順の手のひらがその頬をしっとりと覆う。

「今宵も、抱いて眠らせてください。」
「はい、お兄様――――でも、」

冷酷非情の狼陛下を陰に陽に支える役目を賜り、幾星霜。
誰よりも手を汚し誰よりも泥をかぶってきた彼が得たのは、至上の珠。

「こんな風に甘やかされると、芙蓉は調子に乗りますよ?」
「…望むところです。」

この命は陛下のために在るが。
――――芙蓉。
この心は、お前のために。


ほのかに香る柑橘の湯。
ゆっくりと息を吐いて、李順は妻を想う。

「心身を尽くし黎翔殿下にお仕えせよ、との本家の命には背くことになるかもしれませんが。」

心に嘘は、つけないから。
大切な珠を、いつまでも想おう。

「――――お兄様、やっぱりお背をお流ししても良いかしら?」

この、狂おしいほどに大切な珠を。
私は、心の限り愛そう。

「こちらにおいでなさい、芙蓉。」
「宜しいの?」
「ええ、誰がお前を拒むものですか。」
「よかった、最近は全然お世話をさせてくれないから。」

少女のように微笑む芙蓉は、少しほっとしたようで。
李順は己の至らなさをまた思い知る。

「大事にしようと思えば思うほど、遠くに置いてしまうのはなぜでしょうね。」
「それはお兄様がまだ私を子どもだとお思いだからですわ。」
「そんな事はありません…ただ。」

李順は目立ち始めた妻の腹に手をあてて。

「私が少し臆病だから、なのでしょうね。」
「それくらいでないと、『側近』なんてお仕事は勤まりませんわ。」
「―――まったくです。」

微笑む。

「お兄様、最近はよく笑いますのね。」

それは、少しの変化。

「そう、ですか?」
「ええ。」

凍てつく冬を越え芽吹きの春を迎えつつある、兆し。
そして。

「―――あ、いま、」
「ええ、蹴られましたわね、お兄様。」

永久に続く未来を紡ぐ、予兆。

抱雪   
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C.O.M.M.E.N.T

し、し、し、幸せです(*^^*) ありがとうございます!

芙蓉さんが幸せで私が幸せでーす!
書いて貰えて本当に幸せでーーす!

ここまで幸せだと王宮での李順さんにおちが来そうで心配ですが。

(=´∀`)人(´∀`=) ふふふふふ♡

2016/01/18 (Mon) 17:24 | タイフーンです(≧∇≦) #- | URL | 編集 | 返信

タイフーン様

こちらこそ、久しぶりに芙蓉を楽しく書かせて頂きました。
ありがとうございます。

李順さん、王宮でも少し優しい雰囲気になっていそうです。
そして陛下に気味悪がられる、っていう。(笑)

2016/01/18 (Mon) 21:10 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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