2015_08
19
(Wed)07:54

夢のあとさき


おはようございます。
コメントへのお返事もせずブログ記事と白陽国SNS地区の日記を弄り回しているあさ、です。
あれこれ考えると煮詰まるので、とりあえず。
白陽国SNS地区にUPしていてこちらにUPしていないものを発見しましたので、まずはひとつめ。

このSSは、前ブログを全部消したあと。
保存しておいたログと新しく取得したブログIDを前に、「さてどうするか」と考えていた時に書いたSSです。
ブログ削除の際には大変な不義理を致しましたので、UPするのに勇気がいりました。
再読になる方も多いかと存じますが、お許しを。

それでは、もし宜しければ。






【設定 未来】
《夢のあとさき》


花の、香りだ。

覚醒する直前にそう認識したのがいけなかったんだろうか。
せっかく見ていた良い夢がどんな夢だったのか。
思い出せないまま目が開いた。

「……。」

これで何度目だろう。
ふぅっ、とため息をついて額に手をやる。
くしゃりと前髪を握りつぶして歯噛みをするが、『良い夢』の記憶は浮上しない。
ただ、残るのは。
甘く清々しい、花の香。
それのみ、だ。

「お目覚めですか、陛下。」
「ああ。」

ようやく慣れた呼称。
自分が即位したことを実感できるようになってきた頃から見始めた、夢。

「今日の朝議は予定通りか?李順。」
「ええ、狸を一匹仕留めるだけです。」
「つまらんな。」
「では別の予定も組み込んで宜しいですね?」
「……。」

無言で夜着を脱ぎ捨てながら、黎翔は側近を睨み付けた。

「少しは手加減をしろ。」
「これでもそのつもりです。」
「ふん。」

身体に馴染んだ細身の剣を腰に佩く。
そこはかとなく漂う血の香りがあの頃を思い出させ、心地がよい。

「ところで、陛下。」
「なんだ。」
「先日お話致しました、臨時―――――」

ふわり、と。
甘い香りが黎翔を包み込む。
突然のそれに、戸惑いながら。

「あ。」

浮上する、意識。

『……か、へい、か……陛下。』

――――夕鈴。
ああ、そうか。
僕は君に出会ったあの日の夢を、繰り返し、繰り返し―――――

「おはよう、夕鈴。」
「おはようございます、陛下。」

今度こそ本当に目を開けば、眩い朝の光。
手を伸ばせば感じる、優しい温もり。

「どうなさったんですか?」
「夢を、見てた。」
「どんな?」

ことん、と首を傾げる夕鈴。
出会ったあの頃と少しも変わらぬその笑顔と仕草。
いつまでも艶やかな薄茶の髪には白髪ひとつなく、『陛下のご寵愛の賜物』と侍女たちに噂されるほどだ。

「すごく、幸せな夢。」
「良い夢だったんですね。」
「うん。とっても。」

桜色の頬に触れる自分の手はもう、若い頃とは違うけれど。
あの頃よりもずっとずっと優しく君に触れることが出来ていると思う。

「君に会えて、本当に良かった。」
「私もです。」

楽しい事辛いこと悲しい事、嬉しい事。
笑った日も泣いた日も、もう明日が来ないのではないかと思った日もあった。
でも、それでも。
君に出会えた、その幸せを。

「ありがとう、夕鈴。」
「どうしたんですか、陛下。」

天に感謝するとしよう。

「なんでもないよ、言いたかっただけ。さあ、朝餉にしようか。」
「おかしな陛下。」

くすっと笑う夕鈴の唇が黎翔のそれに触れて。
そのままゆっくりと、重なり合う。

「いただきます。」
「一回だけに、してくださいね?」
「えー。」
「おかわりは無し、です!」
「……夕鈴の、ケチ。」
「もうっ!」

ここは、白陽国。
狼陛下が総べる国。

今日も穏やかな一日が始まる。


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