2015_07
16
(Thu)14:40

夏衣


本日、お仕事お休みです。

猫日記を書いているうちに蒼が寝てしまったので、SSを書こうと思ったのですが。
思いつくままに書いてはダメですね。(笑)
お掃除をしている夕鈴をぼうっと書いていたらこんなことに。
何がどうしてこうなった。
そんなSSでも宜しければ、どうぞ!(笑)




【設定 原作沿いネタバレ】
《夏衣》



「軽くて薄くて、動きやすくて。」
「……。」
「汚れが目立たない濃色がいいですね!」
「お妃よ…。」

白陽国後宮管理人・張元。
彼は嘗てない難題に頭を抱えた。





「老師、お借りしているこの衣ですが、ちょっと…。」
「なんじゃ、お妃。」

夏本番を目前に控えたこの季節。
雨続きの蒸し暑い陽気に、夕鈴は額の汗を拭いながら張元に願い出た。

「もう少し、薄手のものはありませんか?」
「薄手の?」
「はい、この衣をお借りしたのは春先でしたからちょうどよかったんですけど、最近暑くて。」

パタパタと手を団扇代わりにして夕鈴は襟元に風を送る。
確かに、汗ばんだ肌の感じがいかにも気持ち悪そうだ。

「うーむ。」
「あ、薄手のものがないなら一枚か二枚脱いでもいいでしょうか。」

後宮のお仕着せは、あまり実用本位には作られていない。
女官といえど貴族の子女であることが多い上、王のお目に留まればそのまま妃になりうる立場。
本当の下働きを担うのは彼女らではなく、妃の目に触れることもないような身分の娘達だ。

「今おぬしが着ておるのが一番実用的な衣装のはず、なんじゃがのう。」
「え。こんなに良い布で良い仕立てなのに?!」
「ここは後宮じゃからの。いくら下働きとはいえ体面と言うものがあるのじゃ!」
「そうですか…。」

ひらひらと裾の長い上衣。
膝を着いた作業には向かぬ、薄い色の下衣。
長い靴は足元を気にせず動き回れるから良いのだが、なにせ暑い。

「でも、こう蒸し暑いと、ちょっと。」
「まあ、そうじゃろうなぁ。」

腕組みをして少し考えてから、張元は夕鈴に尋ねてみることにした。

「優秀な掃除婦の頼みじゃからの、おぬしの為に作ってやっても良いぞ?」
「あの、もし良ければ私が自分で縫いますから布だけ頂ければ。」
「おお、そうか。それはこちらも助かる。で、どんな布がよい?」
「軽くて薄くて、動きやすくて。」
「……。」
「汚れが目立たない濃色がいいですね!」
「お妃よ…。」

どこまでも実用本位な夕鈴。
張元は喜んでいいものかどうか微妙な気分になりつつも、隣室の扉を開ける。

「そのような布なら、いくらでも」
「何の話をしている?」

ひやりとした空気が流れ込み張元の背を一筋の汗が伝う。
小さな悲鳴が聞こえると同時に、面白そうに笑う隠密の声が天井裏から漏れ落ちる。

「陛下、お越しとは存じませず。」
「で、何の話だ?」
「なんで怒ってるんですか陛下っ。」

担ぎ上げられた夕鈴が暴れるが、黎翔はびくともしない。

「夕鈴の衣装を、お前が仕立てるのか?」

完全に誤解した黎翔から発せられる、半ば八つ当たり気味な怒気。

「私がいくら言っても首を縦に振らぬ妃が、なぜおまえに仕立てさせる?」
「誤解です、陛下っ。」

ようやく事態を理解した夕鈴が叫ぶも、黎翔の目は張元を睨み付けて離さない。

「軽くて薄い衣装とは……誰に見せるためのものだ?」

じりっ、と半歩後退る張元。
ぐっ、と同じだけ距離を詰める黎翔。
逃げられないと悟った張元の頭上後方天井裏では腹を抱えて音もなく笑い転げる浩大の気配。

これは、もう。
こうするしかないのじゃ、お妃。

胸の内で詫びながら、後宮管理人は恭しく礼を取り国王陛下に上申する。

「軽く、薄く…かつ、透けにくい濃い色味で、とご相談を承りました。」
「それで?」
「まだお分かりになりませんか、陛下。」

にやりと笑い。
張元はずいっと黎翔に近づき声を潜めた。

「季節は、夏。上掛けすら暑いこの季節…雪の様な肌が濃色の衣から零れ出る様はさぞ趣が。」
「っ。」
「夜着は淡い色が多いですからの。たまには陛下を驚かせたいとのお妃様の健気なお申し出に一肌脱がせて頂こうと…。」
「…軽くて、薄くて?」
「御意。」
「汚れが目立たない?」
「いつも夜着の後始末を気にしてお出でのご様子で…。」
「ああ、うん。ちょっとね。」
「ご夫婦仲が宜しく、後宮の者一同誠に喜んでおります。」
「…。」

担ぎ上げられたままの夕鈴には届かぬ、低い声。
二人の視線が熱く絡まり、どちらからともなく口角が上がる。

「期待しているぞ、老師。」
「お任せくださいませ、陛下。」

颯爽と立ち去る狼陛下に囚われたままの兎から悲鳴が上がる。

「陛下っ、まだお掃除途中なんです!」
「続きは明日でいいよ、それよりお茶淹れて欲しいなあ。」
「私汗だくで汚いですから、とりあえず戻って着替えをさせて下さいっ。」
「あ、それなら先に湯殿にしようか。」
「い、いえっ、やっぱりお茶を淹れさせて頂きますっ!」
「いいよいいよ遠慮しなくて。先に湯殿ね!」
「だからそうじゃなくて!へいかーっ!」

何がどうしてこうなった。
訳も分からず目を回しつつ必死に抵抗するが、もう遅い。

「……この柔肌に映える濃色、か。」
「え?」
「僕としては赤なんかも悪くないと思うんだけど。」
「あ、やっ!」

ちゅっ、と音を立てて襟元に華が咲く。

「ほら、よく映える。」
「やだ、汗かいてるのにっ。」

慌てた夕鈴が襟元を掻き合わせるより早く、黎翔の顔が埋まる。

「いつもより濃くて甘い匂いがする。」
「っ、やんっ!」

ねっとりと這い回る熱い舌。
柔らかな肌を狼に毛づくろいされながら。
ゆっくりと蕩けゆく、兎。

「ねえ、夕鈴。」
「は、い。」
「湯殿まで待てないんだけど、いい?」
「っ。」

舌なめずりをして。
狼は極上の馳走にゆっくりと牙を突き立てた。


後日。
妃に新しい夜着が届けられた翌朝、後宮管理人には王からの褒美が届けられたという。



C.O.M.M.E.N.T

良いなぁ

平日のお休み…うらやましい(>_<)でも、来週は私も平日有給だも~ん(笑)中学の個別懇談ですが…(×_×)
老師…夕鈴を売ったわね(笑)流石は己の願望に忠実な人ですね(^^;)そして陛下は漁夫の利で美味しく楽しくムッフッフッ♡♡♡
良いなぁ~甘い匂いが濃く薫るんだよ!?こちとら、異臭漂うオバ汁しか出ませんわ(笑)

2015/07/16 (Thu) 16:04 | 行 #jxT87rSU | URL | 編集 | 返信

行さまへ

週三回ペースのパートなんです。
子どもたちがもう少し大きくなったらフルタイムになりたいと目論んでます。
私は再来週個人面談で。
なぜ夏休みにやるのか…。
頑張りましょうね。

陛下、漁夫の利(笑)
老師は売りましたね。仕方ない!←

2015/07/16 (Thu) 16:55 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

夕鈴。。。不憫な。
老師good job

今度は、真紅で透け透けで老師お願い致します。
布面積は少なくてよいと思います。

2015/07/16 (Thu) 17:49 | さくらぱん #H6hNXAII | URL | 編集 | 返信

さくらぱん様へ

真紅、いいですよね。
夕鈴なら何を着ても似合うのでしょうが、最低限しか纏わぬ姿ってやはりいい。←オヤジ

さて、老師はどんな夜着を仕立てるのでしょう。(笑)

2015/07/16 (Thu) 20:55 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

お引っ越しされたのですね!
ブックマークからあささまの元に伺おうとするとエラーが出る日々が続き、
もう閉じてしまわれたのかしら、
とブログというのは本人のご都合で運営されるものとは承知しつつも、
勝手にさみしくなっていたので、
またあささまのお話が読めてすごく嬉しいです!

お仕事始められたのですね。
満員電車は本当にしんどいですよね。
私も日々早く産休に入りたいと願いながら満員電車に揺られております。
まだまだ東京には慣れません…

楽しませていただいているばかりで、
何のお返しもできていない身で申し上げるのは恐縮ですが、
あささまのお話が大好きなので、
これからも無理はなさらず、
楽しくご執筆いただけると嬉しいです(^-^)

2015/07/18 (Sat) 20:00 | saara #- | URL | 編集 | 返信

saara様へ

なんのお知らせもせず前ブログを閉めてしまい、申し訳ありません。
ほんとにごめんなさい。
でも、またお会いできて嬉しいです!

お身体いかがですか?
この暑さです。
無理は禁物、どうか安らかにお過ごしを!

私ものらりくらりとブログやって行こうと思います。
これからもよろしくお願いします!

2015/07/21 (Tue) 17:05 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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