2015_06
19
(Fri)22:29

影宵 4

この度のSS「影宵」。
少し書き足りない気もしますが、これで最終話です。
これ以上書くと公開不可な世界に行ってしまいますので。(笑)

それでは、また。
【設定 原作沿いネタバレ気味】
【くれぐれも、全部捏造です。氾大臣が夕鈴に片思いしてます。】
《影宵4》




柔らかな、唇。
熟れた果実のようなそれに指の先でそうっと触れた。
規則正しい寝息が指を撫でていく感触。
娘ほども歳の離れた娘に、これほど興味を引かれようとは思わなかった。

『貴女に力をお貸し致しましょう。』

王の寵愛には力がある。
彼女だけが持つその力が、欲しかった。
王の心を動かす力。
だが。

『もしも私があの方のお側へ行きたい時は、自らの足で参ります。』

妃たる資格を何ひとつ持たぬ小娘からの回答は、小気味よくて。
誰にも何にも媚びることのないその微笑は、彼女の本質をよく表していた。

吹けば飛ぶように、華奢な。
決して手折られぬ、王の花。
しなやかで強く優しい微笑みが、胸に強く残り。

――――また、会いたい。

そう思わしめた。

後宮に住まう花々は、時に美しく時に残酷に咲く。
蜜と毒を使い分ける、毒花だ。
王の寵を得んと争い合う彼女たちにはなかったものが、この娘にはある。
自分の足で歩く強さと、陛下を想う心。
これまでの人生で出会った事のない花だった。

「高嶺の花、か。」

欲しいと思うと止まらなくなる、悪いクセ。
とうの昔に治ったと思っていた悪癖が顔を出した果てが、この始末だ。

「本当は、貴女と話をしたかったのだが。」

護衛を始末する事が出来なかったとの報告が望みをふいにした。
どうやらゆっくりしている暇はなさそうだ。

「……これでよかったのかも、な。」

このままここで彼女と一夜を過ごしたら。
手を出さずいられる自信は、ない。

「桃香。」
「はい、旦那様。」
「狼は?」
「そろそろ、ですかねー。」

ころころと笑う桃香。

「笑っている場合ではないよ。お前がしくじるからせっかくの逢瀬がふいになった。」
「だってあの隠密、キレる寸前だったんですもの。怖くて。」
「おや、お前に怖いものがあるのかい?」
「旦那様も相当怖い部類に入りますよ。」
「おやおや。これは酷いな。」

少し困ったように微笑んだ主を悪戯っぽく見つめて。
桃香はくるりと後ろを向いた。

「狼が参ります。そろそろお戻りにならないと。」
「ああ、そうだね。」

さらり、と。
薄茶の髪を指に絡めて、ため息をつく。

「手に入れ難いものほど欲しくなるのですよ?お妃様。」

艶やかなそれに口付けて。
その男は夕闇に溶けるように姿を消し。

「夕鈴っ、無事か?!」
「お妃ちゃんっ!!」

そのほんの少し後。
安らかに眠る夕鈴を見つけた黎翔と浩大がその部屋に踏み込んだ時には。
彼らの痕跡は毛ほども残っていなかった。



その夜。
氾家本邸。

「良い香りだね、桃香。」
「ご機嫌ですね、旦那様。」

くるくると指先で花を弄ぶ氾大臣。
薄桃色のその花は、薄茶の髪によく似合う色合いだ。

「ああ、そう見えるかい?」
「ええ、楽しそうです。」

そう。
手に入れる日は、遠ければ遠いほど良い。
力ずくで手折るのではなくこの手にするにはどうすればよいのか。
考えるだに、面白い。

「さて、どこから手を付けるかな。」

いつも彼女の髪を飾っているのと同じ花。
薄く笑った唇でその花弁を食みながら、氾史晴はくすくすと笑う。

「まあ、怖い。」

その忍び笑いは、彼が本気になった時のもの。

「狼陛下と旦那様。いい勝負ですねー。」
「そうかな、私より陛下の方が数倍恐ろしいよ?」
「またまた。」

穏やかに、しっとりと。
氾家の不穏な夜が更けていく。
«  HOME  »

C.O.M.M.E.N.T

No title

ど、ど、ど、どストライクでした!!!
あさ様、ありがとうございます。これで発売日まで乗り切れます!!

2015/06/19 (Fri) 23:14 | rejea #- | URL | 編集 | 返信

rejea様へ

え。
ほんとに?
どストライクですか?
rejea様もお好きですね。
お仲間!←めいわく

2015/06/20 (Sat) 13:43 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

久々におじゃまします
氾大臣…私も妄想しました。
私的にはこの展開好きです(*^^*)

2015/06/24 (Wed) 08:39 | けい #- | URL | 編集 | 返信

けい様へ

こんにちは。
お久し振りですー。
このSS。
ちょっと飛びすぎたな(妄想が)と思っておりますが、
お気に召して頂けたなら嬉しいです。
よかったよかった!

2015/06/24 (Wed) 19:14 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

コメントの投稿

非公開コメント

トラックバック