檻の夜
【ネタバレ注意】
《檻の夜》
幾重にも区切られた檻への扉を抜ける。
君を囲い、君を守るための扉を一つずつ開けていく。
『手を出してはいかんのか』
これは、一つ目の扉の鍵。
『君が私の妃だ』
これは、二つ目の扉の。
『―――おいで』
これは、三つ目の。
君へと走り出す心が紡ぎ出した言葉。
それらが現実の扉と化して、僕を迎える。
君へと続く扉は、僕の心そのもの。
夕鈴。
君はきっと、ずっと。
僕の心に住んでいたんだ。
*
かしゃん。
もう聞き慣れてしまった金属音。
王宮と後宮の境にある薄暗い牢とは違うどこか品のある造りのそれからは、澄んだ音がする。
「お帰りなさいませ、陛下!」
下町での君と何ら変わりのない、君。
妃の演技はもう要らないから、そのままの君が僕を出迎える。
「ただいま、夕鈴。」
ずっとずっと繰り返されてきたこの言葉も、以前とは違う味がして。
「…ただいま。」
「お、おかえり、なさい。」
どこまでも果てしなく甘いから、言葉と同時に君を引き寄せてしまうんだ。
「いまので、終わりですか?」
ぎゅっと目を瞑って口付けを受け入れる夕鈴。
やっぱり君って本当は悪女なんじゃないのかな。
「終わらなくても、いいの?」
ほんの少しだけ。
次の扉を開けたくなった。
「ちょっと我慢できる?」
「は、はい。」
ぐっと顔を近づけて覗き込む。
驚きながらも逃げない君が見つめてくれる。
やや開き加減の唇に、伸ばした舌を押し込んだ。
「っ、ん、」
「そ、上手だよ。」
びくっと後退る身体を抑え込む。
腰を抱き寄せ、後頭部を引き寄せて。
小さく開いた口の中に、舌の根元までを押し込んで、掻き回す。
「んーっ、んんっ、」
いっぱいになる、夕鈴の咥内。
自分よりも大きな舌が味見をするようにあちこちを舐めて、這い回って。
息もできないままに、唾液が溢れ出す。
「んぅっ、」
どんっ、と拳を振り上げて黎翔の胸を叩くが、効果はなく。
可愛らしい抵抗に黎翔の笑みは深まり口付けがより一層深くなる。
「ふぁっ、へい、」
「あと少し。」
ようやく許された息継ぎもすぐに終わりを余儀なくされて。
喰らいつくされるような口づけが夕鈴を襲い、黎翔を酔わせる。
「っ、はぁっ…やぁ、あま、い。」
「…っ。」
息継ぎの合間に漏れる吐息交じりの囁き。
息も絶え絶えの夕鈴が発する艶めいた声が黎翔を滾らせる。
「ね、夕鈴。あと少しだけ、いい?」
「ん、陛下にされて、いやな事なんてないからいい、です。」
とろりと濡れた瞳に吸い込まれるように。
ゆっくりと、二人の影が重なって。
「最後までは、しないから。」
「さいご、って?」
「えーっと、ね…。」
珀黎翔、21歳。
自分と戦う一夜が始まった。
《檻の夜》
幾重にも区切られた檻への扉を抜ける。
君を囲い、君を守るための扉を一つずつ開けていく。
『手を出してはいかんのか』
これは、一つ目の扉の鍵。
『君が私の妃だ』
これは、二つ目の扉の。
『―――おいで』
これは、三つ目の。
君へと走り出す心が紡ぎ出した言葉。
それらが現実の扉と化して、僕を迎える。
君へと続く扉は、僕の心そのもの。
夕鈴。
君はきっと、ずっと。
僕の心に住んでいたんだ。
*
かしゃん。
もう聞き慣れてしまった金属音。
王宮と後宮の境にある薄暗い牢とは違うどこか品のある造りのそれからは、澄んだ音がする。
「お帰りなさいませ、陛下!」
下町での君と何ら変わりのない、君。
妃の演技はもう要らないから、そのままの君が僕を出迎える。
「ただいま、夕鈴。」
ずっとずっと繰り返されてきたこの言葉も、以前とは違う味がして。
「…ただいま。」
「お、おかえり、なさい。」
どこまでも果てしなく甘いから、言葉と同時に君を引き寄せてしまうんだ。
「いまので、終わりですか?」
ぎゅっと目を瞑って口付けを受け入れる夕鈴。
やっぱり君って本当は悪女なんじゃないのかな。
「終わらなくても、いいの?」
ほんの少しだけ。
次の扉を開けたくなった。
「ちょっと我慢できる?」
「は、はい。」
ぐっと顔を近づけて覗き込む。
驚きながらも逃げない君が見つめてくれる。
やや開き加減の唇に、伸ばした舌を押し込んだ。
「っ、ん、」
「そ、上手だよ。」
びくっと後退る身体を抑え込む。
腰を抱き寄せ、後頭部を引き寄せて。
小さく開いた口の中に、舌の根元までを押し込んで、掻き回す。
「んーっ、んんっ、」
いっぱいになる、夕鈴の咥内。
自分よりも大きな舌が味見をするようにあちこちを舐めて、這い回って。
息もできないままに、唾液が溢れ出す。
「んぅっ、」
どんっ、と拳を振り上げて黎翔の胸を叩くが、効果はなく。
可愛らしい抵抗に黎翔の笑みは深まり口付けがより一層深くなる。
「ふぁっ、へい、」
「あと少し。」
ようやく許された息継ぎもすぐに終わりを余儀なくされて。
喰らいつくされるような口づけが夕鈴を襲い、黎翔を酔わせる。
「っ、はぁっ…やぁ、あま、い。」
「…っ。」
息継ぎの合間に漏れる吐息交じりの囁き。
息も絶え絶えの夕鈴が発する艶めいた声が黎翔を滾らせる。
「ね、夕鈴。あと少しだけ、いい?」
「ん、陛下にされて、いやな事なんてないからいい、です。」
とろりと濡れた瞳に吸い込まれるように。
ゆっくりと、二人の影が重なって。
「最後までは、しないから。」
「さいご、って?」
「えーっと、ね…。」
珀黎翔、21歳。
自分と戦う一夜が始まった。