2015_04
20
(Mon)09:40

無音8

細切れ更新、失礼申し上げます。
纏まった時間が取れないので、この様な事に。
ちまちまと書いておりますが、お付き合い頂けると嬉しいです。
コメントも大変嬉しく拝読しております。
ありがとうございます。
お返事もう少しだけお待ち下さいませ。

注意書きを致します。

本誌ネタバレ、少しだけ未来の設定。
夕鈴の耳が聞こえなくなりますのと、陛下の過去捏造。

もし宜しければ。
【設定 本誌ネタバレ 少しだけ未来 夕鈴の耳が聞こえなくなります】
《無音8》




目覚めてもやっぱり、音のない世界。
ズキンズキンと痛む喉と首。
重苦しい頭。
侍女さんがそっと握らせてくれた筆先が震えるけど、知りたかった。

「私の耳、元のように戻りますか?」
「っ。」

乱れた筆跡が我ながら見苦しいけど、今は仕方ない。
紙を見て、ふっと、老師の目が閉じる。
ああ、やっぱりダメなのね。
分かってしまった。

締め付けるように痛む喉を宥めながら、ゆっくり息をして。
目を瞑る。

これくらいの事。
覚悟は出来てる。

「陛下には、言わないで下さい。」

今度は震えずに、書けた。
驚いて私を見つめる老師。
『良いのか』と唇が動く。
頷いて、更に書く。

「心配をおかけしたくないんです。時期を見て私から陛下にお話ししますから。」

無言で探る様に私を覗き込む老師に、笑いかけた。
大丈夫、私はまだ笑える。
まだ、陛下にあげられるものがある。
陛下のそばにいられる。

忘れないもの。
私を呼ぶ、愛しい声を。
何度も何度も繰り返し伝えてくれた、言葉を。

愛してる、って。

絶対、忘れないもの。


「この紙を、燃やして下さい。」

最後に小さくそう書いた紙を、深く頷きながら老師はくしゃりと握りつぶしてくれた。


「夕鈴、入るよ。」

聞こえないけど、気配が薫る。
ゆったりと動く空気が陛下の温度を私に運ぶ。
包まれるような温もりに、肩の力が抜けて。
涙が出そうになる。
でも、泣かない。

「お帰りなさい、陛下。」

なるべく小さな声になる様に、喉を震わせる。

「ただいま、夕鈴。」

哀しげに愛しげに私を見つめる陛下の唇がゆっくりと言葉を模る。
記憶が音を紡ぎ、陛下の言葉が心で鳴る。

聞こえる。

嬉しくなって、笑いかけたら。

「愛してる。」
「ごめんね。」

一番欲しい言葉と一番欲しくない言葉が、胸を潰した。

「あやまらないで、陛下。」

泣き出しそうな陛下の顔。
震える身体と指先と、苦しげな色を湛えた綺麗な紅眼。
ああ、やっぱり言えない。
もう聞こえないだなんて、ずっとこのままだ、なんて。

――――言えない。


「怖かった……怖かったんだ、君がいなくなったらと思うと、怖くて、怖くて。」
「陛下、なんて?……聞こえないの。」

私を抱き締めて、陛下が泣く。
何をも恐れぬ狼陛下の怯えが伝わる。
これ以上陛下を苦しめるものを、私は許さない。
だから、絶対。
言わない。

「もう少しだけ、このままで。」
「……へいか?」

こんなに苦しそうな陛下は、初めて。
ふと疑念が湧く。

老師は、陛下に本当の事を言ったのかもしれない。

まさか、そんな。

確かめ、なきゃ。
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2015/04/20 (Mon) 11:40 | # | | 編集 | 返信

陛下は夕鈴のため。
夕鈴は陛下のため。
お互いがお互いを思い合うが故に、時には傷つけあう道を歩いちゃうんですかね………
∪´TωT∪ カナシイナァ(泣)
…老師は話してないからね?夕鈴

2015/04/20 (Mon) 12:35 | 桃月 #- | URL | 編集 | 返信

ますたぬ様へ

読み返してみると、全員が辛い話になってました(・_・;)
反省しきりです。
コメントありがとうございました!

2015/04/22 (Wed) 15:35 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

桃月さまへ

仲良し夫婦も時にはすれ違う、ってことで…。←
老師、濡れ衣。(笑)

2015/04/22 (Wed) 15:36 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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