2015_03
31
(Tue)14:50

呼称

あさ、です。

さすがにもう枯渇したかと思っておりましたが、書けば書けるものですね。(笑)

楽しく書きましたので、皆様にもお楽しみ頂ければ幸いです。

未来設定、本物夫婦です。

もし、宜しければ。
【設定 未来夫婦 お子様なし】
《呼称》


「陛下、お仕事は宜しいんですか?」
「少し大きな案件が済んだから、今日は皆を帰したんだ。」

ふわりと微笑んで、陛下がそう言う。
最近ずっとお帰りが遅くて、時には王宮泊まりの日もあって。
本当の事を言うと、すごくすごく寂しかったから。

「ほんとに?」
「うん、本当。」

もっと怖い顔をするつもりだったのに、ふにゃりと頬が緩んでしまった。
嬉しそうな、陛下。

「ただいま、夕鈴。」
「お帰り、なさい。」

そう。
あんまり嬉しくて、嬉しくて。
ちょっとだけ言ってみたくなったの。

「……あなた。」
「っ。」

急に、陛下が横を向いて。

怒らせ、た?

血の気が引いた。







「今日はこれまでに。」
「ああ。」

かたん、と筆を置くと同時に腰が浮く。
もう限界。
夕鈴に会いたい。

「皆さん。宿直の方以外は本日はもう退出なさって結構です。」
「はい、李順殿。」

ざわっと嬉しげに騒めく官吏達の気配はもう遥か後方。
今日はもう、休みだ!
職住接近とは良いものだと独り頷く黎翔の足に羽が生える。

後宮に入ると驚き顔の女官達が出迎えた。

「お渡りとは存じませず、失礼申し上げました。」
「よい、構うな。」

知らせなど出している間が惜しい。
いいからそこをどけ、夕鈴のところに行くんだ。

「正妃は。」
「午睡のお時間かと。」

よしっ。
胸の内で小さく呟く。
愛らしい寝顔とふっくらとした頬、さくらんぼの様な唇が脳裏を過る。
午睡の後なら、少しくらいはいいだろう。
寝起きの夕鈴の身体はうっとりするほど温かいんだ。
今日くらいは、夕鈴の香に溺れたい。

人払いを済ませ、夕鈴の元へ。
頭上から声が降ってきた。

「おーい、陛下。」
「なんだ。」
「お妃ちゃん、夜はあまり眠れてないみたいだから、」
「分かっている、無茶はせん。」

だからしっかり見張っていろ、と言い捨てて扉を開ける。
浩大が苦笑していたが、無視した。

求めていた気配に満ちた、部屋。
ああ、やっと。
帰って来られた。

正直な僕の足が真っ直ぐに寝台を目指す。
もう限界な両手が君に向かって伸ばされる。

「夕鈴。」

起こしちゃダメだと分かっていても口が勝手に動いて。

「ただいま。」

耳元で、囁いていた。

「陛下、お仕事は宜しいんですか?」

ぱっ、と起きた君の開口一番は、それ。
なんて真面目な正妃なんだ。

「少し大きな案件が済んだから、今日は皆を帰したんだ。」

正直に答えられるって、素晴らしい。
嘘偽りのない笑みを浮かべて夕鈴を見つめた。

「ほんとに?」

あ。
夕鈴が、笑った。

「うん、本当。」

僕を見て、笑った。
すごくすごく、幸せそうに。

「ただいま、夕鈴。」
「お帰り、なさい。」

全身が熱くなって、泣きそうになるほど嬉しい。
僕は君が好きで、君は僕が好き。
いつでも互いを求めていると、感じる。

幸せ過ぎて泣きそうな僕に。

「……あなた。」
「っ。」

必殺の一撃が飛んで来て。
かあっと顔が熱くなって、思わず横を向いた。

ねえ、夕鈴。
今。
『あなた』って、言った?
それって、あれだよね。
下町で見かける奥さんたちがさ、ご主人を呼ぶ時のあれだよね。
自分に一番近い大切な人を呼ぶ時の、呼称。
何の衒いもないその呼び方は、きっと。
君の本当の言葉。

「あの、お嫌でしたか?」
「ううん、全っ然っ!」

動かなくなった僕を心配そうに覗き込む君。
勘違いさせちゃったのが分かって、慌てて否定する。

「ね、夕鈴、もっと呼んで!」
「え……陛下?」
「そうじゃなくて、さっきの!」
「っ、う、あ。」

真っ赤に頬を染めて、少し上目遣いで。

「ね、もう一回。」
「……あな、た?」

夕鈴が、僕を呼ぶ。
君だけが紡ぐことのできる、僕への呼称を。
呼ぶ。

「今日はずっと、『あなた』って呼んでね。」
「はい。」

ふわっと微笑む夕鈴に、この幸せをどうやって伝えよう。

「あ、まだ外、明るい……まって、陛下。」
「違うよ、今日はなんて呼ぶの?」
「っ、待ってください……あ、あなた。」
「ごめん、待てない。」

まずはこの胸の高鳴りを。
君への愛で高まった熱を伝えよう。

「んぁっ、へい、」
「夕鈴?」
「あ、や、もっとぎゅってして、あな……た。」
「うんっ。」
「ああっ、あっ、んっ!」
「ね、もっと呼んで。」

呼んで、夕鈴。
僕を、僕だけを、ずっとずっと。

君の言葉で。
君だけの、呼称で。

君の夫を。
僕を。

――――――呼んで。

C.O.M.M.E.N.T

仕事帰りで、疲れはてているところにこのお話!
癒される(*´ω`*)
あさ様、ありがとうございます。
また書いてくださいませ。

2015/03/31 (Tue) 19:54 | 凛子 #- | URL | 編集 | 返信

まぁ(^^)なんて幸せいっぱいの二人!
やっぱりあさ様のSSは素敵です。ごちそうさまでした♪

2015/03/31 (Tue) 21:46 | まるねこ #- | URL | 編集 | 返信

仲良し\(^o^)/

仲良し二人にドキドキわくわくですニッコリ

2015/03/31 (Tue) 21:49 | 萌葱 #- | URL | 編集 | 返信

凛子さまへ

お仕事お疲れ様です。
少しでも癒しになりましたのなら嬉しいです。
うちのも毎晩ぐったりと帰宅します。
7時に家を出て0時に帰宅がデフォ。
凄い体力だなと感心する今日この頃です。
帰宅するとすぐに子どもたちの寝顔を見に行くだんなさん。
陛下なら夕鈴だろうなと思って書きました。(笑)

2015/04/01 (Wed) 07:43 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

まるねこ様へ

素敵とのお言葉ありがとうございます。
最近、文章の書き方が分からず停滞気味です。
今更ながら、不勉強を悔いる日々ですよ。(笑)

2015/04/01 (Wed) 07:47 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

萌葱さまへ

きっと何年たっても新婚さんなんでしょうね、陛下と夕鈴。
いいなぁ。←

2015/04/01 (Wed) 07:48 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

ご無沙汰しております。
今日もつわりのsaaraです(最早キャッチコピーのよう笑)。
呼称、らっぶらぶでいいですね!
読んでいて幸せな気持ちになりました。
文字で人を幸せにできるあささまは素敵ですね。
また読みに伺います(^-^)

2015/04/01 (Wed) 12:39 | saara #- | URL | 編集 | 返信

saara様へ

すっかり暖かくなりましたね。
ひなたぼっこしながらのんびりと悪阻を乗り切って下さいませ。
過分なお言葉ありがとうございます。
全ては原作が素晴らしいからっ。
早く来月号を読みたいですね。

2015/04/02 (Thu) 07:35 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

お久しぶりです

「年度末」という地獄の日々を送っておりました・・・。
思うようにこちらへもうかがえず、
我が家に来てくれた御本も開けず、
まさに生き地獄 (T-T)
そしてやっとの思いでうかがってみれば、この癒し!!
天国ですか!?ここは!
ああ、あさ様、書いてくださってありがとうございます。
「あなた」って夕鈴が言うとホントに可愛らしいですね。
私は一度もそんな風に呼べません( ´_ゝ`)

2015/04/02 (Thu) 16:55 | しじみ #GvBRGAME | URL | 編集 | 返信

しじみ様へ

年度末。
笑うしかないその響き。
年度始め、も笑えないですよね…。
少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
…しじみ様がご注文下さった本を確認しに行って参りました。
あの。
しじみ様。
近い(笑)

2015/04/02 (Thu) 22:59 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

Σ(゚Д゚;

・・・近い?
・・・趣味趣向が? 壁|д゚*)ドキッ ←今更ですよね
まさかの居住地が? 壁|彡サッ(照)

2015/04/03 (Fri) 00:42 | しじみ #GvBRGAME | URL | 編集 | 返信

しじみ様へ

> まさかの居住地が? 壁|彡サッ(照)
(´>∀<`)ゝ))エヘヘ
近いです。(笑)
びっくりしました♡

2015/04/03 (Fri) 06:50 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

No title

甘っ甘な二人がいいですね~~
日々の疲れがぶっ飛んでいくようですわ。
『あなた』かぁ~~
いつまで呼んでたかな・・・・・・・
もう遥か昔のような。
今度、旦那に云ってみよう~っと。
どんな反応してくれるかしら。
うしし。
いつまで経っても新婚の様な国王夫婦に
素敵な日々を。
では!!

2015/04/03 (Fri) 07:44 | 瓔悠 #- | URL | 編集 | 返信

アラマッ! Σ(・ω・ノ)ノ

わぁ・・・近くに憧れの作家様が・・・
そう思うだけで見慣れた風景がキラキラしてきました~☆
よしっ!今日も頑張るぞ!って気持ちになれます(^^)♪
思えば御本の件は春の羽根の方にコメントしてしまって、
こちらでは報告やお礼ができないままでした m(_ _)m
遅くなりましたが、ありがとうございましたっ!!

2015/04/03 (Fri) 14:44 | しじみ #GvBRGAME | URL | 編集 | 返信

瓔悠さまへ

わたくし、一度も「あなた」などと呼んだことはございませんっ。
甘さとは無縁の結婚生活ですよ、ええ。
ふっ(-_-メ)
別に夫婦げんかしたわけじゃないんですよ。
私が勝手に怒ってるだけです。

2015/04/04 (Sat) 09:13 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

しじみ様へ

実家がね、しじみ様と同市内なんです。同市、北部地域。
路線は違いますが、近いですよ。(笑)
春の羽根へ下さいましたコメントは、羽梨さまも私も同じように拝見しております!
こちらこそ、ありがとうございました。

2015/04/04 (Sat) 09:17 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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