2015_03
10
(Tue)15:09

春の花

こんにちは。
あさ、です。

もうすぐプチオンリー。
き、緊張してきたっ。

当日お会いできる皆様。
どうぞ宜しくお願い致します。
そして、どうぞお気軽に話しかけてやって下さい。
せっかくですから、お話ししたいです。

子どもたちの下校時間まで少し間がありましたので、一本書いてみました。
お楽しみ頂けましたら幸いです。


あさ
【設定 離婚後を捏造→未来】
《春の花》



「あ…、雨。」

霞んだような春の空。
頑是ない子供のようにすぐ表情を変えるそれは、主婦泣かせだ。

「お洗濯、濡れちゃうわ。」
「あら、雨?」

明玉の飯店。
綺麗に空になった皿を山とのせた盆を持ち窓の外に目をやっていた夕鈴に、明玉は明るく声を投げた。

「ちょうどお客さんも減ってくる頃だし、ちょっと家に戻っても大丈夫よ?」
「いいの?」
「もちろん!ここんとこずっと今日みたいな天気だもん、参るわよねー。」
「ありがとう、明玉。」

婚約者の家の家事を手伝っている明玉は、夕鈴同様主婦仕事が身についている。
こういう気配りをしてくれる働き先は、正直有難かった。

「おじさん、すぐ戻りますね。」
「ああ、走ったりしないでいいからね、夕鈴ちゃん。」
「ありがとうございます。行って参ります!」

パッと外に出た夕鈴は、ぱらつき始めた雨のなか。
傘を持って出ることに遅ればせながら気付いた。

「…ま、いっか。」

幸い降り始め。
曇り空とはいえ、空は明るい。
きっと大して降りはしないだろう。

「このまま行っちゃおう。」

変わりやすい春の空。
そんな事は知っていたはずなのに、と夕鈴が後悔するまで。
あと、数分。




「お兄さん、そんなとこにいないで入っといでよ。」
「いや、大丈夫。」
「結構降ってきたし雷も鳴ってるよ。そんなとこで濡れていられちゃ外聞も悪いから、ほら、入っとくれ。」
「…すみません。」

章安区でも指折りの繁盛店。
その繁盛ぶりは店主の気性によるところも大きいのだろうと黎翔は胸の内で頷いた。

「注文しなくていいから、茶でも飲んで止むのを待ちなよ。」
「ありがとう。」

にこりとする黎翔。
少し濡れた外套をちらりと見やり、店主は懐から手巾を取り出した。

「すぐには止みそうにないから、ゆっくりしとくれ。」
「はい。」

素直にそれを受け取り、黎翔は肩の雫を払う。
綺麗に磨かれた湯呑から上がる温かな湯気が、冷え切っていた身体を温めた。

『お妃ちゃん、下町に戻って来たよ。』

浩大から報告があったのは、昨夜。
消えた妃を探す動きが収まりを見せ、もう良いだろうと周が判断したらしい。

王の寵愛には、力がある。
それは周が言った言葉。
そしてそれは兄王が自分を付け狙った理由。
父王が一方ならぬ寵愛を見せた妃の息子というだけで、私は利用価値があった。

「ほんと、そうかも。」

夕鈴。
君は利用価値がありすぎる。
あの妓館で、君が妓女に身を落としたのだと勘違いした時。
私は周を殺そうとすら思った。
元妃。しかもバイト妃に過ぎなかった娘の為に一国の宰相を殺そうとした、王。
愚王の極みなのは私だが、夕鈴。
君だって、本当に…。

「悪女、だよ?」

くすっと笑った黎翔。
その笑みが消えるより前に、騒々しく扉が開く。

「おじさん、ただいま…きゃーっ!!」

目もくらむような稲光と耳をつんざく雷鳴。
春の嵐に翻弄されて濡れそぼった夕鈴から悲鳴が上がる。

「おかえり、夕鈴。」
「え。」

ふわりと着せ掛けられる、大きな外套。
雫の伝う頬を手巾が拭い、大きな手が包む。

「君が戻って来るのを、待っていた。」
「へい、」

一日千秋の思いで、君を待っていた。
次の王に国を譲る準備も整った。
蘭瑶は蓉州に留め置き、晏流公が王となるのだ。

もうこの国に『狼陛下』は必要なく。
『狼陛下』の寵愛はなんの力も持たなくなって。
僕たちは、ただの珀黎翔と汀夕鈴。

「嵐の日の出会い、だなんて…夕鈴が好きなあの物語みたいだね。」
「っ!」

きっと思い出したんだろう。
真っ赤になった夕鈴の唇に、そっと触れる。
ちゅっ、と軽く音を立てて、見つめ合って。
桜色の頬を伝う涙を指先で拭う。

「あ、会いたかった…っ!へいか、陛下っ。」
「…気が狂うほど、君に会いたかった。」

抱き締めあって、微笑み合い。
黎翔はゆっくりと厨房を振り返った。

「さて、休憩は終わりだな。まったく春先は天気が変わり易くて敵わない。雷様が煩くて何にも聞こえやしないよなあ、明玉。」
「ほんと、こう激しく降られちゃお客さんも来ないしたまったもんじゃないわねー。」

何事もなかったように動き始める飯店の面々。
どこまでも明るい優しい笑顔が夕鈴を見つめる。

「今日はもう帰っていいよ、夕鈴ちゃん。」
「…またね、夕鈴。時々は顔見せなさいよ。」

いつの間にか、雨は止んで。
雲の間から降り注ぐ陽射しはもう、春。

「――――ありがとう。」

そう言って。
優雅に辞儀をして去って行った彼女は、本当に幸せそうで。

「…きっと今も、あの時の笑顔のまま、私たちを見守ってくれているのよ。」

今ではもう押しも押されぬ名店となった飯店を切り盛りし、すっかり女将の貫禄の明玉は。
何度も何度も、『正妃様』の自慢話をするのだった。

遠くに見える黄金色の甍を誇らしげに見つめながら。
懐かしい日々を愛しむように。
笑いながら。
春の花のようなあの笑顔を、思い出しながら。
再会1   
«  HOME  »

C.O.M.M.E.N.T

爽やかで心がほっこりするお話ですね。
今日は午後から冬に逆戻りのお天気でしたが、気持ちは春になりました。
週末のプチ、体調が許せば馳せ参じたかったのですが、まだまだつわりが治まらず…(涙)
素敵な一日になりますよう、陰ながら応援しております(^^)/

2015/03/10 (Tue) 21:23 | saara #- | URL | 編集 | 返信

saara様へ

お具合いかがですか?
どうかゆっくりとお過ごしくださいね。
つわり。
可愛らしくお母さんを困らせてるんですね。
なんて愛らしいお子さんなんでしょう。
プチでお会いできないのは残念ですが、日曜日はお天気も怪しい事ですし、ほっこりとお過ごしくださいね。
プチ。
当日の様子を後日ご報告致しますね。

2015/03/10 (Tue) 22:30 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

晴れ渡る空

店主と明玉がいい人だあとニッコリなりました。ラスト、晴れ渡る澄みきった青空が見えます\(^o^)/

2015/03/11 (Wed) 13:46 | 萌葱 #- | URL | 編集 | 返信

お気遣いありがとうございます。
つわりはなかなかしんどく、しんどい気持ちに持っていかれがちですが、愛らしいという感じ方もあるのですね。
さすがは先輩母。
勉強になります(^^)/
プチのご報告、楽しみにしていますね。
私もがんばります。

2015/03/11 (Wed) 17:36 | saara #- | URL | 編集 | 返信

爽やかです

はじめまして♪昨年からあささまの小説を読みふけっております(*^^*)
どれを読んでも夕鈴&陛下がいきいきしてますね♪
今回の話は春らしさが感じます!!
まだまだ読みふけってコメント出していきたいです。よろしくお願いします(^-^)

2015/03/11 (Wed) 22:07 | ふじ兎 #7DewFCxg | URL | 編集 | 返信

萌葱さまへ

夕鈴の幸せを皆が望んでいるはずだと思って書いてみました。
早く本誌発売になって欲しい…。

2015/03/12 (Thu) 12:14 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

saara様へ

本当に、悪阻は辛いですよね。
気持も身体も辛い。
早く治まりますように!
心から祈っております。
プチを目前にして、少々緊張気味です。
大丈夫か、私。(笑)
頑張ってきます。

2015/03/12 (Thu) 12:17 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

ふじ兎さまへ

初めまして。
「あさ」と申します!
昨年からのお越し、ありがとうございますっ。
もうすぐ春本番。
陛下と夕鈴にも、また春が巡って来ますように!
私も頑張ります。
またお越し下さいませ♪

2015/03/12 (Thu) 12:19 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

No title

今回は、陛下が一人で頑張り、自分が必要で無くなったら譲位するのですね。
やっぱり陛下も恰好良い。
夕鈴陛下を一杯愛してあげて下さいね。
今日は幸せな一日になりそうです。ありがとうございます。

2015/03/13 (Fri) 07:35 | 狛キチ #- | URL | 編集 | 返信

狛キチさまへ

よかった。
陛下カッコいいって言ってもらえた!
陛下が大好きなんです。
夕鈴も大好きですが、陛下大好き!
夕鈴は愛でる対象で、陛下は幸せになって欲しい人、な感じです。
いや、夕鈴も幸せになって欲しいですよ?!陛下と。←陛下溺愛。
今日は良い一日をお過ごしでしたでしょうか。
そうであったなら嬉しいです。

2015/03/14 (Sat) 00:46 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

コメントの投稿

非公開コメント

トラックバック