2015_03
04
(Wed)11:58

秘密の丘

お久し振りです。
あさ、です。

少し忙しくしておりましたのと、15日までに書かねばならぬSSに追われておりますのとで、
更新停滞しておりまして申し訳ございません。

こちらのSSはSNSにてキリ番ニアピンを踏んで下さった慎さまのリクエストです。
慎さまのおかげで幸せな家族を書くことができ、私も嬉しいです。

さて。
本日13時までに黒い猫さんがプチに搬入する荷物を取りに来てくれるはず、です。
物凄く重い本の山。
売れ残ったこれらを持ち帰るのかと思うとぞっとしますが仕方ない。
全ては自業自得です。

さて、宿題頑張って参ります。

ではでは!
【設定 未来夫婦 お子様全員オリキャラ注意】
《秘密の丘》


「あまり遠くに行っちゃダメよ?」
「はいっ。」

歓声を上げて走る子ども達。
少し頬を染め思い切り笑いながら転がる様に。
どこにでもいる、普通の子供の姿。

「母上ーっ!父上ーっ!」
「こっちこっちー!」

小高い丘の上。
穏やかな初夏のある日、国王一家は秘密の遠足に来ていた。

「お母様、お花がいっぱい!」
「シロツメクサ、っていうのよ。」
「しろつめくさ。」
「ええ。こんな風にするとね、ほら…。」
「あ!冠っ!」

花の茎を細く裂き、隙間に花を挿しこんでつなげる。
そんな簡素な遊びすら、桜花には新鮮だ。

「桜花、おじさまに作ってあげるのっ。」
「几鍔に?」
「うんっ。」

せっせと花を摘む桜花。
小さな指先が愛らしい花を集めてゆく。

「桜花、父様には?ねえ、父様には?」
「お父様には、お母様が作って下さいますっ。」
「うっ。」
「…陛下、大人げないです。」
「くっ。」

黎翔は複雑な表情で嬉しげに花を編む愛娘を見つめる。
そんな夫を横目で見ながら、夕鈴は走り回る息子たちを追った。

「清翔ー、明翔ー、離れちゃダメよ、浩大が困るでしょー!」
「いや、お妃ちゃんも陛下から離れちゃダメだって。」
「…あ、そうね。」

しまった、と苦笑いして夕鈴は踵を返した。
今日は、秘密の遠足。
護衛は最小限に抑えてあるのだ。

「夕鈴、こっちおいで?」
「は、はい。」

白い花に埋もれるように座った黎翔。
その膝には懸命に花を編む桜花。
夕鈴はそんな桜花の邪魔にならぬよう、そっと夫の傍らに坐した。

穏やかに、風が渡る。
若草の香りと生命の香。
甘やかな空気が夕鈴を包み、頭を撫でるように風が抜ける。
肩の力が抜けて行くのが分かった。

「…陛下。」
「なあに、夕鈴。」
「なんでもない、です。」

ことん、と夫の肩に頭を預ける。
それだけで安堵を覚える自分に笑いがこみ上げた。

「どうしたの、夕鈴。」
「ふふ。なんでもないです。」


―――――夕鈴、母さんはいつもそばにいるから。


目を閉じれば聞こえる、母の声。
若くして逝った、母さん。
まだ幼い青慎を残して、私を残して逝かねばならなかった、母さん。
お葬式が終わるまで泣かなかった父さんが。
初めて泣いたのは、この場所で。

「…母さん。」

この、母が眠る丘の上で、だった。

何も言わずただ涙を流し。
今日みたいに穏やかな風に身を任せて泣いていた、父さん。
今なら少しだけ。
父さんと母さんの気持ちが分かる。

「私、幸せよ。」

―――――よかった。本当に、よかった。

風が温もりを帯び、私を抱く。

「今日はね、みんな連れてきたの。」

―――――あなたによく似ているわ。

うん。
ほら、特に明翔は。
…母さんに、よく似てるでしょう?

「夕鈴。」

いつの間にか零れていた涙を、黎翔の唇が吸い取る。

「ほら、母上が心配なさるよ。」
「ええ、そうですね。」

溢れる涙と朗らかな笑み。
舞い踊る風を見上げて、黎翔は空を仰ぐ。
その腕に愛しい妻を抱きながら。

この奇跡を。
この幸せを自分に与えてくれた、亡き母に。
この世のすべてに、感謝しながら。

C.O.M.M.E.N.T

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