2014_11
21
(Fri)19:48

月下の花

別に夫婦喧嘩をしてるわけではありません。
私が勝手に怒ってるだけです。
怒ってることすら伝わらないと言うすれ違いっぷり。
全くもう!

と言う訳で夫婦喧嘩からスタートするSSです。
もし宜しければ。
【設定 未来夫婦 お子様なし】
《月下の花》


「・・・。」
「ゆ、夕鈴?」
無言で夫を睨み付ける夕鈴。
曖昧な笑みを浮かべる黎翔は、戸惑うばかり。



「何を怒っているの。」
「知りませんっ。」
全く心当たりのない黎翔は今日一日の言動を反芻し始めた。

忙しい一日だった。
いつもより早く始まった朝議。
落としどころの見えない議論に倦んだ李順が明日への持ち越しを提案せねば、きっと昼まで朝議だったろう。
自室に戻って急ぎの案件に目を通してから政務室へ。
方淵と水月が準備していた資料に目を通して山積みの書簡に印を押して。
昼餉もそこそこに大臣達の話を聴いて。
嫌気がさした頃にはもう夕刻だった。
喉が渇いたから女官が入れたお茶を飲んだら毒入りで。
面倒だから飲み干してから捕縛させて。
部屋で待ち構えていた宰相があまりに面倒だから睨み付けたら李順に叱られた。
だって、夕鈴に会いたいからこっちに寄越せだなんて。
叔母上が無茶苦茶なんだ。僕のせいじゃない。
不貞腐れてたら李順に後宮に行けって言われて。
もとよりそのつもりだったからさっさと戻ってきたんだ。
そしたら、夕鈴の目が据わってて。
一言も口をきいてくれない。
「・・・ねえ、僕、何か悪い事した?」
夕鈴の頬がますます膨れる。
可愛いけど口を利いてもらえないのは辛い。
しかも今回はどう考えても僕に非はなさそうだ。
「・・・。」
「夕鈴?」
みるみるうちに真っ赤になった夕鈴の目。
これは、まずい。
潤みだしたそこから、涙が。
「ちょ、待って夕鈴っ!」
泣かれるのは困るっ。
「泣かないでっ。」
慌てて手を伸ばし涙を拭った瞬間。
「う、わぁぁんっ!」
「ゆ、夕鈴っ?!」
夕鈴は子どもの様に泣き出した。

「っ、なんでっ、」
我儘だって分かってる。
でも止まらなかった。
「来て、くれなかったのっ?」
ほんとは分かってる。
私との約束を忘れるほどお忙しかったんだって、分かってる。
「まって、たのにっ。」
お茶の約束。
昼過ぎにあの花を見ながら一緒に、って。

「・・・あっ!!」
自分でも驚くほど大きな声が出た。
忘れていた。
昨夜眠りに落ちる前にした約束。
『明日の昼過ぎ、お待ちしております。』
今が盛りの花を二人で観ながらお茶を、って。
まずい。
すっかり忘れてた。
「待ってたのに。」
「うっ。ご、ごめんね?」
しまった、どうしよう。
「明日っ、明日、ね?」
「明日じゃダメなんですっ。」
ダメなのか。ダメだよね。
「だって、今日はっ。」
泣きじゃくる夕鈴が僕を見上げる。
真っ赤な頬。
震える唇。
「っ、今日はっ。」
ふと、気付いた。
ああ、そうか。そうだった。
君は我儘なんて言わない。言ってくれない。
いつも仕事を優先させる。
そんな夕鈴が珍しく僕をお茶に誘ってくれたのは。
「今日は君と初めて出会った日だ。」
「っ。」
こくりと頷く夕鈴を抱き締めた。

「ごめんね。」
泣き止まない私の背を撫でてくれる陛下。
こんな子ども染みた我儘に付き合わせてごめんなさい。
謝るのは私の方なの。
困らせてごめんなさい、って、言わなきゃ。
「っ、ごめっ、」
「ありがとう。」
私を抱く腕に力が籠る。
「覚えててくれてありがとう、夕鈴。」
痛いほどに抱きしめられる。
「今から、行こうか。」
陛下の手が涙を拭ってくれた。

貴方と手を繋ぐ。
階を降りて、あの花の下へ。
朧な月に照らされた花弁がはらはらと散る。
繋いだ手はそのままに佇んで。
思い出す。
隠さなきゃいけなかった恋心。
離れ離れだった時間。
思いが通じた日の喜び。

君と手を繋ぐ。
一度は離したこの手が今、自分の手の内にある奇跡を思う。
幸せの真似事だと自分に言い聞かせていた日々。
別れを告げたあの日。
君がいない王宮の空虚さ。
忘れてはならない。
君を得た日の喜びを。
今あるこの時が、どれほど稀有なものなのか。

「・・・なんだ、手を出してはいかんのか?」
びくっと跳ねる夕鈴の肩にそっと触れる。
「せっかく愛らしい兎が来たものを。」
桜色に染まる夕鈴の頬。
「肉食なかんじだ、って思ったんですよ、私。」
「当たり。」
にっこりと微笑んだ紅と。
ふわりと笑う薄茶。
重なる二人を隠すように、花が散る。
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C.O.M.M.E.N.T

No title

全ては最初から。
ちゃんと覚えてる陛下が好きです。
傷ついた分だけ幸せは深くなるんですよね。
いつまでも、手を離さないでいて欲しい。
肉食が当たりな陛下は兎を食べちゃうのかしら。
ああ!せっかく真面目にコメントしてたのにぃ!

2014/11/21 (Fri) 22:23 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

No title

あさ様
夕鈴の我儘見てみたい。そんな可愛い事を言われたら…。
実は、毒を飲んで怒られるのかと思ってました。
ああ明日が楽しみです。
幸せな未来ですね。
可愛い我儘を聞きながら愛しい妻を大事にする陛下が見たいです。
そして閨では…。続き楽しみにしてますね。

2014/11/22 (Sat) 00:14 | 狛キチ #- | URL | 編集 | 返信

羽梨さまへ

特別な出会い。
忘れちゃダメですよね。うん。
今ある幸せは当たり前じゃない。
時々は思い出さなきゃ。
今思い知らされてます。
健康って大事。←ちょっと違う

2014/11/24 (Mon) 10:23 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

狛キチ様へ

あ!
毒をスルーしてしまいました。
忘れてた。←こら
夕鈴の我儘、可愛いですよね。
もっと言ってほしい。
閨でもわがまま言っていいのよ、夕鈴。
すいません、ちょっと脳が煮えてます(笑)

2014/11/24 (Mon) 10:24 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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