2014_10
17
(Fri)11:58

一炊の夢6

こんにちは。
あさ、です。

随分と好き勝手に書かせていただいております「一炊の夢」。
収拾がつかなくなって参りました(笑)
とりあえず、これでお終いです。

さあ、次は何を書こうかな。

皆様。
いつもお付き合い頂いてありがとうございます!
【設定 未来夫婦 お子様なし オリキャラ注意】
《一炊の夢》



「意識を混濁させる毒と、痛みによる暗示を、与えた。」

血を吐きながら白状した宰相。
その内容に黎翔の頬がぴくりと動いた。

「・・・毒と苦痛で心を封じたのか。」
「ああ、そうだ。」

真っ赤な咥内で蠢く濡れた舌が、呪いの如き言葉を紡ぐ。

「なかなか、強情、だったぞ・・・?」

くくっ、と嗤う宰相。

「傷をつける訳にはいかぬからな。口と鼻を塞いで生死の境を幾度も彷徨わせた。」
「―――――っ、」

ごぼっと血が落ちるが、その舌は止まる事を知らず。

「いつまでもしつこくお前の名を呼ぶから、危うく死なせてしまう所だったぞ?」
「貴、様・・・・っ!」
「さすがは狼陛下の正妃だな。」

ガンッと石が割れる音がして、男の鼻先の床が砕ける。
一瞬怯んだ宰相が見上げた先には、狼。
牙の如き剣先が獲物の血を掬い取り、月光を受け艶やかに光る。
黎翔の腕が、ゆっくりと動いた。

「我が后を侮るな。」
「っ!」

宰相から視線を外さず屈みこむ。
半端に斬られた下腹と手足。
致命傷には及ばぬそれらを新たに抉る。
降り注ぐ月光が黎翔の怒りを表すように、宰相を濡らす。

「ぐっ、う、」
「下衆が・・・死を乞いながら永らえろ。」
「っ!」
「浩大。」

ひゅんっ、と鞭が撓り。
舌を噛み切る直前に、翠国の宰相は狼の手に落ちた。





「夕鈴。僕だよ、帰ってきて。」
「・・・はい、わが君。」

くったりと凭れ掛かる身体を抱き締めて、黎翔は馬を駆った。

「遅くなってごめんね。頑張ってくれたんだね、ありがとう。」
「・・・」

風が髪を嬲るに任せ、馬に揺られるに任せる、夕鈴。
今の夕鈴は人形に等しい。
黎翔は能う限り身体を密着させ、 彼女に無用な振動を伝えぬよう気遣った。

「君はいつも温かいな。」
「・・・・」

夕鈴が、静かに泣く。

「・・・・い・・・・か」

唇で模るだけだったその言葉が、音を持つ。

「・・・・き・・・ず、」
「夕鈴?」

馬を止めた黎翔の首筋にゆっくりと触れる手。

「き、ず・・・だ、い、じょう、ぶ?」
「夕鈴は、大丈夫?」

黎翔の首に隙間なく巻かれた包帯に滲む血。
ぴくっと眉を顰めた夕鈴の頬に赤みが差した。

「・・・陛下。」
「うん、お帰り、夕鈴。」

ぐらりと傾ぐか細い身体。
その華奢な肩を黎翔はふわりと抱く。

「酷い夢だったね、夕鈴。」
「陛下、遅い。」

けほっ、と小さく咳き込んで。

「でも、許してあげる。」

安心し切った表情で、夕鈴は眠りに落ちた。

もう、暁闇。
黎翔はそっと馬に鞭をくれ、河を渡る。

「帰って来たよ、夕鈴。」

こちら岸はもう、白陽国。

「・・・っ、」

馬から降りた黎翔の身体から力が抜けた。

「り、じゅ・・・・あと、は」

崩れ落ちた黎翔とその腕の中の夕鈴を、側近が受け止める。

「お帰りなさいませ、陛下、正妃様。」

李順は常と変らぬ表情で、ふたりを馬車に運んだ。




数日後。

「・・・一炊の夢、か。」

痛む頭を抑えつつ、玉禮は書簡に目を通す。

「何を仰ってるんですか、叔父上。さっさと薬を飲んで治して下さいよ。」
「あの方が飲ませて下されば素直に飲むのだが。」
「・・・軽口を叩けるほどお元気なら、書簡を増やしますよ。」

翠国国王の甥玉環は、呆れ顔だ。

「ああ、良い夢だった・・・」
「もうひと箱追加しますね。」

この伯父にとって、隣国の正妃以上に関心を引くものなどないのかもしれない。

「なんだ、随分と雑な上申書だな。宰相は何をしている。」
「・・・さあ。」

ぶつぶつと文句を言いながらも政務をこなす玉禮。
彼にとって。

「・・・ったく、ヤツがいないと不便だな、雑務が増える。」

長年仕えてきた臣下の失踪など大した事ではないらしく。

「ああ、夢でも良いからあの方にお会いしたい…。」

すっかり生気を取り戻した様子で書簡を広げた。
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No title

あささま
こんにちは。
だいぶ寒くなってまいりましたが、風邪等はひかれておりませんか?
私、実は『夕鈴もしくは陛下が痛い思いをするや、攫われて助け出されて愛が深まる…』みたいはお話が大好きなのです。(性格が歪んでいてごめんなさい)
なので、1話から最終話まで一気読みでした。
ありがとうございました。
本誌では、このような展開のお話は出てきませんよね…

2014/10/20 (Mon) 15:45 | れんか #U1o6tp32 | URL | 編集 | 返信

れんか様へ

ほんと、朝晩冷え込んで参りました。
冬も近いですね。
この分ではあっという間に年の瀬でしょう。
痛いお話は書いていて辛いのですが、たまに書きたくなります←おい
二次小説だから!
と、自分を甘やかしております(笑)

2014/10/21 (Tue) 15:44 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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