2014_09
14
(Sun)22:13

言葉

こんばんは。
あさ、です。

昨日から愛する家族の為に時間を注ぎ込み、SSを書く暇が全くなく。
あー、書きたい。

そう思っていたら、なんと主人が早々に寝てくれました。
よし、PC空いた!!
スマホやiPadに接続できるキーボードも便利ですが、やはりPCには敵いません。

そんなこんなで、楽しく書きました。

皆様にもお楽しみ頂ければ幸いです。









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《言葉》



いつもの四阿。
夕鈴が纏う柔らかな花の香りを、肌に優しい風が運ぶ。

温かな茶。
湯気の立つ茶器と、こっくりと甘い菓子。

「下町の栗餡とは全然違いますね、滑らかで美味しいです。」

青慎にも食べさせてあげたい。
そう顔に書いてあるから、これも君に持たせよう。

「下町のお菓子はどんな風なの?」
「えっと、それはですね。栗の粒が残っていたり、渋皮がざらりとしたり。」
「ふぅん。」
「お菓子ひとつと言っても買うと高いので。皆自分で作りますから、なんていうか・・・」

言葉を探して宙を睨む夕鈴の頬に、清楚な簪が影を作る。
よく似合っているから、これも持たせよう。

「家庭の味?」
「そう、それです!」

にこっと小犬で微笑みかける僕に、我が意を得たりとにじり寄る夕鈴のぷっくりとした耳朶に揺れる飾り。
薄茶の髪に似合う、紅水晶と金細工のそれ。
これも、持たせよう。

「夕鈴も作れる?栗のお菓子。」
「え、ええ。一応は・・・って、あまり美味しくないですよ?」

少し躊躇って。

「実は・・・栗の皮を剥くのって、苦手なんです。」
「ああ、堅そうだもんね、あれ。」

さすがに少し怖いんですよ、なんて言いながらお茶のおかわりを注ぐ夕鈴。
桜色の爪と白い指を飾る、黄金に玉をあしらった指輪。
夕鈴の指に合わせて作らせたそれも、持たせよう。

「陛下?」

涼やかな風に流れる裳裾。
夕鈴に似合う、優しい薄紫の重ね。
これも、持たせよう。

「・・・へい、か?」

俯いた僕の前に跪いて。
心配そうに覗き込んでくる茶色の瞳。


あれも、それも、これも。
僕の心も。

全部、君に持たせよう。


「夕鈴・・・。借金が、終わるよ。」
「____え?」

見開かれた瞳に映る、僕の微笑。

ああ、私は。
こんな風に笑えるようになったのか。

胸の奥がじわりと熱くなる。

記憶の彼方の父上と同じ微笑を浮かべたまま、呆然自失の夕鈴を抱き締めて。

「今まで、ありがとう。」

ありふれた言葉に、思いの丈を込める。

______本当に伝えたいことは言葉に出来ないものなのだな。

そんな考えが頭を過り。
己の無力さを噛み締めて。

「・・・ありがとう、夕鈴。」

世界で一番使い古された言葉を繰り返した。









今日の陛下は、どこか変。

「下町の栗餡とは違いますね、滑らかで美味しいです。」

私の話にも、どこか上の空。

「家庭の味?」
「そう、それです!」

にこにこ笑ってるのに、やっぱりどこか、変。

『____夕鈴殿。』

先月のお給料を頂く時の李順さん。
見慣れぬ表情を浮かべた上司が、頭を過った。

「実は・・・栗の皮を剥くのって、苦手なんです。」
「ああ、堅そうだもんね、あれ。」

そうか、そうなんだ。
私、クビなんだ。

だってもう秋だし。
『臨時』って言うには随分と長期なバイトだし。
浩大が言うには、刺客の数も減ってるらしいし。
『囮』としての、価値もない。

_____借金は、あとどのくらい残ってるのかしら。

妙に現実的な事を考えながら、最後になるかもしれないお茶を、陛下に注ぐ。
不敬にも程があるわよ、汀夕鈴。
自分に呆れるけれど。

陛下に、もう二度と、会えない。

そんな事、考えたくもないから。


お茶を注いだ手が止まった。


「・・・陛下?」

我に返って慌てて陛下の様子を伺うと。

動かない陛下。

「・・・へい、か?」

寝ちゃった?!

ビックリして膝をついたら。

「夕鈴・・・。借金が、終わるよ。」

思わず固まった。


違う。
私の借金は、あと一回の支払いで終わるような額じゃない。


そうか。

もう、本当に要らないんだ。
私は、『臨時花嫁』は。
陛下の邪魔にしか、ならないんだ。

だから、借金を終わりにして。
私を、『臨時花嫁』を終わりにして。

これで全部、元通り、に_______


「今まで、ありがとう。」


なりっこ、ない。


「・・・ありがとう、夕鈴。」


震えながら抱きしめてくれる、陛下の腕。


この腕に抱き締められることが二度とないなんて。
この声を二度と聞けないなんて。
この温もりに二度と触れられないなんて。
この香りに二度と包まれないなんて。


この人に、二度と会えないなんて。


そんなの、無理だわ。

「ここにいちゃ、ダメですか。」

想いが溢れた。










「ここにいちゃ、ダメですか。」

思いがけない言葉に、思考が止まる。
身体を離して夕鈴を見つめると。

「私、は・・・・汀夕鈴、は。陛下のおそばにいては、いけませんか?」

澄み切った泉の様な瞳が僕を映した。

「掃除婦でも・・・そう、掃除!まだ立ち入り禁止区域の掃除、終わってませんよ?!」

がしっと襟を掴まれて、引き寄せられる。

「陛下に、お食事を作って差し上げたいんです!栗のお菓子も!栗の皮、頑張って剥きますから!」

泉から溢れた雫が光る。
今までに見たどの宝玉よりも綺麗な輝き。

ぽろりと一粒、それが地に落ちるのを見た瞬間、身体が動いた。

「夕鈴」

唇を塞ぐ。
ぷるりとして温かな唇を食み、舐め上げて。

「愛している。」

この世で一番信用ならない言葉で。
この世で一番大切な想いを、伝える。

不安に震える私に、返ってきたのは。

「陛下が、好きです。」

この世で一番、素直な言葉。

「陛下が、大好き。誰よりも、好き。」

この世で一番、温かい言葉。


返す言葉は、唯一つ。

「僕も、大好き。」

自分の気持ちを伝える言葉。

この世で一番、簡単な言葉。


あなたが、好き。


ただ、それだけ。

それが全て。

想いを届ける、唯一つの言葉。

C.O.M.M.E.N.T

NoTitle

ウァ━ 。゚ (゚´Д`゚)゚。━━ン
こういうのが、読みたかったの!
澄み切った泉のような、清らかで輝く
あさ様の文章。
大好きです。

2014/09/14 (Sun) 22:28 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

NoTitle

はい、わたしもこういうの大好き、読みたかったです。
あささんのお話し、私も大好きです。ありがと。

2014/09/14 (Sun) 23:14 | kazeno aya #- | URL | 編集 | 返信

∪ノシ>ω<∪ノシ~~~~~♪

もう!
ホンットに言葉になりません!!←
あさサンのお話、ホンット大好きです♪( ´艸`//)

2014/09/14 (Sun) 23:21 | 桃月 #- | URL | 編集 | 返信

NoTitle

素敵。なんてピュアなの。
これから明日の仕事に備えて寝ようと思っていた所にこんなお話が待ってたなんて。
幸せです。
良い夢が見られそうです。
やっぱり、夕鈴と陛下が心一つで思いあうこんなお話を待っていたのですね、私。
いや、でもやっぱり色々なお話が好きです。
本当にありがとうございました。
お休みなさい。良い夢を見てくださいね。私も良い夢がみられそうです。

2014/09/14 (Sun) 23:57 | 狛キチ #- | URL | 編集 | 返信

おはようございます

爽やかな青空の朝の下、爽やかでほのぼののお話しを拝読。
かわいい、とてもかわいいです

2014/09/15 (Mon) 06:28 | くみ #17ClnxRY | URL | 編集 | 返信

NoTitle

おはようございます
素敵な心和むお話ですね~
私の汚れた心が少しだけ洗われたような気がします!
もうあさ様最高に素敵です~~
私このまま読み専で行こう!!
朝から爽やかになれました
ありがとうございます(*⌒▽⌒*)

2014/09/15 (Mon) 07:51 | よゆまま #- | URL | 編集 | 返信

羽梨さまへ

濁り切ったどす黒い私へのお褒めのお言葉。
ありがとうございます(笑)
羽梨さまのお家で癒されつつSS書いています。
今日も何か書けるといいな。

2014/09/15 (Mon) 10:11 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

kazeno aya様へ

駄文ですが、喜んで頂けて嬉しいです。
また書きますので、どうぞよろしくお願い致しますね。

2014/09/15 (Mon) 10:12 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

Re

桃月さまへ
いつも可愛らしい顔文字、ありがとうございます。
お話、お気に召しましたなら、何よりです!
いつもありがとうございます。

2014/09/15 (Mon) 10:14 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

狛キチ様へ

いつもありがとうございます。
良い夢をご覧になれましたか?
どす黒い私に「ピュア」とのお言葉。
恐れ多い限りです(笑)
毎日お仕事、本当にお疲れ様です。
少しでも癒しになればと存じます。

2014/09/15 (Mon) 10:17 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

Re

くみ様へ
ありがとうございます。
青空!いいですね。
こちらは晴れなのですが曇天です。
明るい曇り空。
日焼け止め必須!(笑)
たまにはほのぼのを書いてみようかと思いまして。
褒めて頂けて嬉しいです。

2014/09/15 (Mon) 10:19 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

よゆまま様へ

なんか物騒なコメントですね。
誰が読み専ですって?
よゆまま様が読み専なら、私も読み専ですよ?(笑)
ちなみに、このSS。
夫婦喧嘩の決着がなかなか着かなくて、どろどろとした気持ちを反転させて書きました!
心の穢れっぷりなら負けません。←威張るな

2014/09/15 (Mon) 10:24 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

いつも楽しく拝見させて頂いています。子供達が寝て旦那も寝て、ようやく自分の時間にあささんのブログを読む事が息抜きだったり、ご褒美だったり(^-^) 母でもなく妻でもなく、素の自分にもどって1日のリセットをさせてもらっています。
明日からも頑張れそうです。素敵な妄想をわけてくれてありがとうございます。

2014/09/16 (Tue) 21:51 | 二児の母 #- | URL | 編集 | 返信

二児の母さまへ

こちらこそ、お越し下さってありがとうございます。
そうですよね、母でも妻でもない自分の時間。
それを私に与えてくれるのが、SS書きです。
ふぅ、と肩の力が抜けて、また頑張ろう!という気持ちになります。
お揃いですね!

2014/09/17 (Wed) 19:26 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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