2013_02
28
(Thu)00:00

攻防

lala4月号の破壊力にやられて、色々おかしなことになってますので、

ここらで少し落ち着きかねば!と思い、皇子様にご登場願いました。

夕鈴が第2皇子を出産した後のお話です。

こういった設定が苦手な方は、ご無理なさらないで下さい。



【設定 未来夫婦・お子様あり】


*皇子様のお名前、決まりました!清翔くん(兄)と明翔くん(弟)です。どうぞ宜しくお願いします。


《攻防》


夕刻。白陽国、後宮。

湯殿から漂う、温かな湯煙と、ほのかな花の香りに満たされた、脱衣室。


「・・・・清翔。」

「・・・・父上。」


今日もひそかな攻防が、始まる______






正妃・夕鈴が、珠のような男児を出産した。

二人目の皇子誕生に、国中が祝福ムードに包まれ、王宮には祝辞を述べる列が途切れる事はない。

女官達は華やいだ空気を醸し出しながら、くるくると立ち働き、
老師に至っては、張り切りすぎてぎっくり腰が再発する始末。


そんな祝福ムードに、酔えない人達がいた。

____国王と、王太子である。


「・・・・・父上。今日こそは、私が明翔を受け取りますからね?」

「・・・・・ふざけるな。湯上りの我が子を受け取るのは、父である私の役目だ。」

「父上は、湯上りの母上を見たいだけでは?」

「そういうおまえは、母上と一緒に湯殿に入りたいだけでは?」

「いけませんか?私はまだ5歳ですよ?」

「・・・・・」

「父上こそ、あわよくば、とお思いなのでは?・・・人払いまでなさって。」

「・・・何か言ったか?」

「いえ、何も。」

「・・・父上、政務は?」

「大丈夫だ。」

「・・・李順に、押し付けましたね?」

「あいつは、それが仕事だ。」


「「・・・・・・・」」


脱衣室の壁の向こう側。
無言でにらみ合いを続ける父子狼を見守る隠密約一名は、深いため息をついた。

「へいかー、たいしー、もうそろそろ上がるんじゃないの?お妃ちゃんと、明翔ちゃん。」

「「浩大。絶対覗くなよ?!」」

「・・・息ぴったり。さすが親子だね!」


その時。


「陛下~、清翔~、上がりますよ~。」

湯殿から響く、夕鈴の明るい声。
父子は、ぱぁっと笑顔になる。


「母上、私が!!」
「夕鈴、僕が!!」


我先に、と湯殿へ乗り込む父子狼は。


「こら、湯殿では走らない!!!」

ほにゃほにゃと愛らしい顔で微笑む赤子を腕に抱き、眩しい肢体を惜しげも無くさらす、母兎に一喝されるのであった。


「・・・・ほんっと、今日もいいものをみた・・・」

「・・・父上。一国の王が、后の湯殿を覗き見して喜ぶとは・・・」

「うるさい。私がどれほど我慢をしているか、知ってるのか?」

「・・・・はいはい、ごめんなさい。見当もつきません。」

呆れた様に返事をする息子を、黎翔は優しく見やる。

「・・・・赤子を守るのは、父の役目だ。・・・お前の時も、こうして守った。」

「え?」

「赤子は狙われやすいからな。・・・湯上げに使う布に毒針を仕込むとか、産着に有毒な香を焚き込むとか、最悪、うっかり女官が取り落とす、とかな。」

「・・・・」

「だから、太子が生れたときは、ほんっと大変だったんだよ?警護!!」

窓から顔だけ覗かせて、浩大が話を引き取った。

「湯冷まし一匙、重湯一杯にも、何が入っているかわからない。赤子を消すなら、本当に少量の毒で済む。・・・ちなみに、産後の肥立ちが悪くて后が死ぬのも、『良くあること』なんだぜ?」

「では、父上は。」

「お妃ちゃんと明翔ちゃんを、毎日自分で警護してるんだよ?」

「・・・・もちろん、湯殿に満たす湯に何か混入していないか。不審物はないか、老師が調べてはいるが、な。」

「父上・・・・・・。」

「なんだ?」

「・・・・本当に、目的は『警護』ですか・・・・?」


自分にそっくりの疑い深い息子に、黎翔はニヤリと笑って見せたのだった。




☆もちろん、目的は警護のみではございません!
 ・・・あれ?ほのぼのを目指したのに・・・?
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2013_02
25
(Mon)20:25

李順さんの結婚

「李順さんがお見合いしたら!」を妄想してみました。
そしたら、なぜか李順さんを結婚させてしまいました・・・。

長くなってしまって、読みにくくてごめんなさい。

SNSのお友達、Y様に、捧げます!



【設定 未来夫婦・お子様はまだです】
【注意!!オリキャラでます!!】
【主役は李順さんとオリキャラです】



《李順さんの結婚》


「陛下。お願いがございます。」

「なんだ?」

「明日一日、休暇を頂けますか?」

「珍しいな。・・・それなら、私もやすみ」

「ダメです。明日は宰相が陛下にしっかりと付き添います。」

「えぇーーーーー!なんで李順だけ休むのさー!!!」

「貴方は国王、私はただの一臣下です。・・・それで、休暇を頂けるんですか?」

「ぶー。どうして休むの?」

「______だからです。」

「きこえないよー。」

「・・・・見合い、しなきゃならないからですよ・・・」

顔を背けつつ、心底嫌そうに呟く側近を、黎翔は呆然と見つめた______








翌朝。

・・・王宮からこっそりと抜け出す二つの陰。

被り物つきの外套に眼鏡姿の長身の男と、その男に抱き上げられた、兎のような髪型の下町娘の姿・・・。




「・・・で、陛下。李順さんのお相手は?」

「うーんとね、宰相の縁戚みたい。」

「・・・『みたい』って、陛下。ご存じないんですか?!」

「まぁまぁ、夕鈴。行けば分かるよ!!」

「行けば、って・・・。まぁ、良いです。陛下、こっそり、ですよ?いいですね?陛下!!!」

「うん、大丈夫だよ、ゆーりん♪どんな顔してお見合いするんだろうね、李順!」


完全に野次馬根性丸出しの新婚夫婦は、ウキウキとした足取りで王都を闊歩する。

道行く人々も、まさかこの二人が国王と正妃とは思わない。
手を取り合い、久々のお忍びに浮かれる二人は、すっかり町に溶け込んでいた_____




その頃、李順邸では。

「・・・お兄様!!お見合いなんですよ?!」

「・・・うるさいですね、わかってますよ。」

「で・し・た・ら!せめて御衣裳を改めてくださいませ!!」

「・・・そんな必要性が、どこに?」

「・・・・・っ!!!でーすーかーら、そのお召し物は、『普段着』でらっしゃいますよね?」

「はい。上質の反物を使い、しっかりと縫製された、よい着物ですが?」

「はい。よい着物です。お値段も張りました・・・って、違います、そうじゃなくて。」

「どう違うんですか?・・・まったく、貴女はほんとにいつも口うるさいですね。」

「・・・・・お兄様に言われたくありません・・・」

「何か言いましたか?」

「いえ。なにも。・・・とにかく、こちらの余所行きの衣装にお召し替えを。」

「・・・ひつようありま」

「うるさいっ!!!いいから、着替える!!!!わかった?!李順!!」

「・・・芙蓉。すぐに地を出すのは、貴族の子女としてどうかと思いますよ。」

「ああ、もう!!お兄様が私の言うこと聞いてくださらないのが悪いんです!!」

「・・・・なんでおまえに見合いの衣装を選ばれなきゃいけないんですか・・・」

「とにかく!!こっちの服に着替えて!!わかった?お兄様?!」

「・・・はいはい。」



李順の邸には、使用人はあまりいない。
質素倹約を旨とする主人の方針もあるが、必要がない、のがその本当の理由である。

李順の家族は、たった一人。
遠縁に当たる、18歳の嫁き遅れ。______「芙蓉」だけ。

芙蓉は李順の父方の遠縁に当たり、家柄もよい、上流貴族の娘である。
が。もって生まれた正直な性格が災いし、義母との折り合いが悪く。
15の歳に、家出同然で李順のところに身を寄せたのだ。

もともと、李順を「お兄様」と呼ぶほど懐いていたこともあり、
働き者の芙蓉のおかげで、使用人は最小限ですむ。

ずるずると、芙蓉は李順邸に居座り続け、現在に至っているのであった。



「・・・・お兄様が、お見合い、か・・・・」

澄み渡った青空を見上げて、芙蓉はにっこりと微笑む。

「素敵なお姉様がいらして下さると、嬉しいな。」

語尾が震えていることに、彼女は気付いているのかいないのか・・・。



「・・・・どうして、見合いなど・・・・」

いやいや着替えをしながら、李順は呟く。

「・・・・しかも、なんで芙蓉に送り出されなきゃいけないんですか・・・・・」

苛立ちを落ち着かせようと、李順は深くため息をついた。





「・・・・陛下、どんな様子ですか?!」

「・・・・」

「陛下ってば!」

「夕鈴、声が大きいよ!」

「・・・すいません・・・」

「・・・うん、なんか、李順が妹さんに叱られてる。衣装を替えろって。」

「李順さん、まさか、普段着でお見合いに行く気なんじゃ・・・」

「李順なら、やりかねないよね。」

「・・・そうですね。衣装にかける費用が無駄です!って仰るでしょうね・・・」

ははは、と乾いた声で笑う国王夫妻が、まさか自宅の壁に張り付いて自分の様子を伺っているとは。

いくら李順でも、夢にも思っていなかった・・・・。
に、違いない。





李順邸の偵察から一旦引き上げ、国王夫婦は露店を冷やかしていた。

「あっ!これ可愛い!」

あちらのお店、こちらのお店、と、夕鈴は久しぶりの王都に嬉しさを隠しきれない。

「おじさん、この鈴、いくら?」

「うーん、お嬢さんが可愛いから、少しおまけして・・・」

相変わらずの値切りの腕を発揮して、楽しげに買い物をする夕鈴を、黎翔は目を細めて見つめていた。


両手に一杯のお土産を抱え、黎翔と夕鈴は料亭で昼食がてら、休憩を取った。

「・・・ねえ、夕鈴。」

「なんですか?陛下。」

「・・・・あのさ・・・」

「帰りたくなんか、ないですよ?私。」

ふふっ、と悪戯っぽく微笑み、夕鈴は夫の言葉を遮った。

「確かに、下町は楽しいですよ?・・・生まれ育った場所ですし、大切なものがたくさんありますし。」

「・・・・夕鈴。」

「でもね、私が『居たい場所』は。・・・貴方の隣、ですよ?」

「ゆう、りん。」

・・・運ばれた料理の湯気のせいにして、黎翔は朱に染まった頬を隠した。







____昼過ぎ

李順は、見合いの席についていた。

・・・・今回の「お見合い」は、宰相からの申し入れ。どうしても断れなかった。

「陛下が正妃を迎えるまでは」という言い訳は、もう通用しない。

24歳、という年齢は、とっくに子どもがいてもよい年齢だ。

「・・・・・わかっては、いるんですよ・・・」

見合いの席にはふさわしくない、沈んだ声音で李順は呟いた。

その時、見合い相手が淑やかに入室し、優雅に礼をとったのを、
李順は他人事のような気分で眺めていた______



「・・・・李順様は、休日はどの様に過ごされますの?」

涼やかな声音で、令嬢が問う。

「・・・休日など、私にはございません。」

「・・・え?」

「休日なぞ、ございません。畏れ多くも陛下の側近たるもの、いつ如何なる時もお召しに応じるべく、常に心構えをし・・・・」



「それでは、ご趣味は・・・?」

「倹約、です。」

「・・・・・」



両家の仲介人は、ひそかに頭を抱えたのであった。



その頃。
隣室で聞き耳を立てる、国王夫婦は、というと。


「・・・・ちょっと、李順さん、ひどいです・・・」

「・・・・うん、完全に潰す気だね~、この見合い。」

「・・・・・」

「どうしたの?」

「・・・いえ。李順さんは、どうしてご結婚なさらないのかな、って。」

「・・・・気になる?」

悪戯っぽく笑う夫を、夕鈴は不思議そうに首をかしげて見つめた_____。






「お帰りなさいませ、お兄様!」

「ただいま、芙蓉。」

少し疲れた顔で、それでも李順は柔らかな微笑を芙蓉に向けた。



(・・・・うわっ!!!陛下!李順さんが微笑みましたよ?!)

(・・・夕鈴・・・。李順だって、たまには笑うよ?)

(・・・・そうですよね、すいません・・・)



「・・・・いかがでしたか?・・・お見合い。」

李順からは表情を伺えない角度に顔を逸らし、芙蓉は問う。

「ええ、あれだけ言えば、もう何も言ってこないでしょう・・・」

「?!何をおっしゃったんですか?!」

「いえ、何も。仕事に休みはなく、趣味は倹約だと、正直に申し上げただけですよ?」

「・・・・お兄様・・・・」

「さあ、芙蓉。今日は滅多にない休暇です。・・・・遅くなりましたが、貴女が以前から行きたがっていた桃園にでも連れて行ってあげますよ。」

「わぁ!ほんとですか?!嬉しい!!」

頬を桃色に染め、輝くような笑みを見せる芙蓉と、それを優しく見つめる李順。



・・・・夕鈴は、ようやく納得したのだった。





翌日。王宮。

「・・・陛下。昨日はさぞかしお仕事が進まれたことと拝察いたします。」

こめかみに青筋を立て、朝から李順は絶好調である。

「あ、ばれてた?」

まったく悪びれずに答える黎翔に、李順は深くため息をつく。

「ばれますよ!っていうか、隠れる気あったんですか?!あんなにあからさまに後を付けられたら、いくら私でも気付きます!!」

「・・・だって、李順だけお休みなんて、ずるい・・・」

「だっても何も!!!私は見合いだったんです!!」

「ぜんっぜん、受ける気なかったくせに。」

「・・・・」

「____李順。もうそろそろ、良いのではないか?」

「・・・私は、まだ妻を娶る気は」

「夕鈴が、芙蓉を後宮に呼んだぞ。話し相手に、とな。」

「______っ!」

「もう、良いだろう?・・・李順。」

「陛下・・・・」





お独りで戦ってこられた、陛下。
私はその側近であり、この命は陛下のもの。
私の全てを、陛下の御世のために_______


その気持ちに、その覚悟に、揺らぎはない。


芙蓉。
大切な貴女を、巻き込むわけにはいかない。

そう思って、いたのに。


・・・陛下は「独り」ではなくなり。
私に、「もう良い」とおっしゃる。


良い、のでしょうか?・・・芙蓉?




芙蓉を迎えに後宮への回廊を渡る。

少し色素の薄い、柔らかな髪をなびかせて。

常になく、優しく穏やかな笑みをたたえた李順に、礼をとる女官達は頬を染める。


正妃が準備した、自分のための茶会に向う。

「お待たせして申し訳ございません。正妃様。」

「ふふっ、李順さんったら。・・・お待たせしたのは、私ではございませんでしょう?」

かつて自分が教えた通り、いや、それ以上に優雅な仕草で正妃は答える。

その姿を満足気に見つめた後、李順は芙蓉に相対した。


「_____長いこと、待たせましたね、芙蓉。」

・・・私の、大切な、掌中の珠。

「帰って、式の準備をしなくては・・・ですが、式は」

「「なるべく簡素に!!」」

見事に重なった、李順と芙蓉の声。

思わずこぼれた笑い声が、穏やかに後宮の花園に響くのだった。
2013_02
25
(Mon)20:20

墓穴(ぼけつ)

SNSでの7000人目のお客様、k様からのリクです♪


【設定 臨時花嫁 原作沿い】



《墓穴(ぼけつ)》



それは、ほんの出来心だった。

____お酒に弱い君。

以前離宮で強めの酒を飲まされたときは、酔って寝てしまったけど。

・・・・あれより少し弱い酒なら、どんな楽しい姿を見せてくれるのかな?





「今日、珍しいお酒が届いたんだ。果実酒なんだけどかなり軽めだから、夕鈴と一緒に飲もうと思って。」

下心を上手に隠蔽して、僕は兎に罠を仕掛ける。

「・・・私、お酒飲めませんよ?」

警戒する兎。

「大丈夫、今日はもう寝るだけでしょう?夕鈴が酔って寝ちゃっても、僕が寝台に運んであげるから!」

「それは『大丈夫』とは言いませんよ?!」

夕鈴の最もな言い分を、僕は軽く笑って聞き流し、持参した杯に透明の液体を注いだ。

「一緒に飲もう?夕鈴。・・・僕とお酒飲むの、嫌?」

悲しげな顔で頼めば、君は断れない。
それを承知で僕は頼む。

「う・・・。ほんとに、少しだけ、なら・・・」


__________かかった。

紅い瞳が鋭く光ったのに、愛らしい兎は気付かない______



「・・・・・っ!美味しいですね。」

ほんのりと香る、果実の香りと甘い舌触り。
食前酒程度の、弱い酒。

二人で他愛のないおしゃべりをしながら、少しずつ、少しずつ。

無防備な君が、杯を重ねさせられていることに気付かない程度に・・・・。


頬をピンクに染め、楽しそうに今日あったことを話してくれる君。

お酒のせいでいつもより口調が柔らかく、子どものような笑顔だ。

おしゃべりに夢中で、僕が肩に手を回していることにも気付かない。

「・・・・でね、へいか。そのときお庭から子猫が迷い込んできてね・・・」

「・・・へぇ、そうなんだ・・・。僕も見たかったな、それ・・・」

どうと言うこともない、ただのおしゃべり。

夕鈴。その名の通り、君の声は鈴のようだ。

優しく、柔らかく、僕の体に染み渡る・・・・。



とん。


不意に、夕鈴が僕の方にもたれかかった。

「・・・夕鈴?」

「・・・・・・」

返事がない。

寝ちゃったのかな、と思い、そうっと顔を覗き込もうとしたら、紅く染まった兎のような目が僕を見つめていた。

「へいか。」

「なに?夕鈴。」

「どうして、へーかは、私なんかにやさしいの?」

突然の問いに、僕は固まった。

「わたし、にせもの、なのに。どーして、ほんもの、みたいに、する、の?」

「・・・・ゆう、りん?」

「あんまり、やさしく、しないで・・・・。かんちがい、しちゃう、か、ら・・・」

真っ赤な兎は、固まる狼を置き去りに、そのまま眠りに落ちた。



全身から甘い匂いをさせて、くったりと僕にもたれかかる君。
薄い衣から伝わる、君の体温と、柔らかさに、僕は自分を呪った。

・・・・なんで、自分にこんな試練を与えるようなことをしたんだろう。

罠にかけたつもりだったのに。

_______墓穴。その意味を体感した黎翔であった
2013_02
22
(Fri)11:19

色をくれる花

2月22日は、「猫の日」だそうです。にゃん♪

ですので、猫がらみのSSを書くつもりが、ぜんっぜん違う方向に。
不思議です。どうして思ったように書けないのでしょう。

・・・・はい、力不足です。

あいかわらず、ちょっとおかしなSSですが、宜しければどうぞ♪



《色をくれる花》

汀夕鈴。17歳。
白陽国、王都下町章安区在住。
家族構成は、下級役人の父・学問所に通う弟の三人。
家計は、火の車。

よし。大丈夫。

______私は、今日も鏡の中の私に確認をする。






いつまでも慣れない大きな寝台と、滑らかで冷たい絹の肌触り。
私はいつも早朝に目覚める。
長年の主婦の習慣は、早々抜けてはくれないらしい。

侍女さんたちが来る前に、自分で鏡台の前に座り、身支度を整える。
貴族の子女である彼女達に、バイトの世話をさせるなんて。
・・・それがバイトの「仕事」とは言え、やっぱり気が引ける。

丁寧すぎるほど丁寧に手入れをしてもらった栗色の髪を自分で梳き、細紐で結い上げ、
数々の髪飾りの中から、なるべく地味なものを選び、髷に通して飾る。
・・・簪は、とてもきれいだけど、やっぱり落とすのが怖い。
だから、昨日陛下と摘んだ花を髪に挿す。

衣装も選んで着替えなきゃ。
汚れが目立たない、なるべく地味な色の物を選ばないと!
・・・・うん。これにしよう。

さらり、と絹の夜着を脱ぎ、下着姿になる。
・・・下着まで絹なんて、贅沢すぎる・・・

手早く着替えを済ませ、夜着を畳み終えたとき、いつもどおりに侍女さん達が入室してきた。

「おはようございます。」
「おはようございます、お妃様。・・・今朝も、もうお召し替えはお済みでいらっしゃいますか・・・」

侍女さんたちの残念そうな声音に、少しの罪悪感を感じるが、背に腹は代えられないのだ。
これ以上の借金は、御免だ。


今日の朝食も、贅沢。
冷たいものばかりなのが残念だが、お茶だけは温かくてほっとする。

李順さんに教えられたとおり、ゆっくりと箸を運ぶ。
・・・うん、見つめられながら食べるのって、食べた気がしないわ。

一度でいいから、一人っきりでこの贅沢な食事を食べてみたい・・・・。

こわばった顔にお妃スマイルを貼り付けてお茶を飲んでいると、急に廊下が騒がしくなり、
_____陛下が現れた。


(来た!!!)

私は心に予防線を張る。
間違えないよう、踏み越えないよう。
鏡に映した自分を思い出し、己が分を弁え直す。

「_____おはようございます、陛下。お会いしとうございました・・・」




今日も、甘くて苦しい、私の一日が始まる。









白陽国、国王。珀黎翔。
「冷酷非情の狼陛下」。

・・・・それが、僕。

うん、大丈夫。
わかってる。

いつもの位置に鏡台を移動させ、部屋の死角を、潰す。

さあ、今日も始めようか。

張り詰めた、夜を。



夜、眠ってはいけない。

深い眠りに落ちた途端、刺客が襲ってくるかもしれない。
風でカタリと窓が鳴る度、
冷えた空気に床が軋む度、
僕は目を覚まし、気配を伺う。

いや、違う。
眠っていても、眠っていない。

常に頭のどこかは起きている、浅い睡眠。
いつの頃からか、それが当たり前のことになっている。


だから、私は朝を好む。
静かな緊張を強いられる、暗い夜が明ける、朝を。



「・・・・おはよう、夕鈴。」

今朝も明るい笑顔を僕に向けてくれる君をみて、僕は一日の始まりを知る。









天気もよく、政務も一段落ついたため、夕鈴は黎翔と共に後宮の庭園を眺めながら昼食をとっていた。

侍女たちに傅かれつつ、の、緊張する食事。
甘い笑顔で「演技」をする陛下。

・・・・苦しい。

____夕鈴は、我知らず箸を置いていた。


「・・・・り、ん?ゆう、りん?・・・・ゆうりん!!」

「・・・・?!はいっ!!なんですか、陛下?」

「・・・なにって・・・。どうしたの、夕鈴。大丈夫?」

慌てて周囲を見回すと、すでに人払いされているらしく。
自分の意識が少しの間飛んでいたことに、夕鈴は驚いた。

「あ、あの・・・。すいません、私、ぼーっとしてしまって・・・」

失敗した!と、青ざめる夕鈴を、黎翔は心配そうに覗き込んだ。

「・・・ほんとに、どうしたの?具合でも悪い?」

「いえっ!バイト中に失礼しました。なんでもないです!!」

慌てて手をぱたぱた振りながら答える夕鈴に、黎翔は深くため息をついた。


「_____なんでもない、はずがないだろう。妻の憂いは夫が晴らさねばな。」

美しい、紅い瞳が濃さを増し、形の良い薄い唇が弧を描く。

「っ!」

「さあ。・・・・我が妻の心を悩ませる不届きな者は、誰だ・・・?」

少し骨ばった大きな掌が、青ざめた頬を撫で。
長い指が、薄桃色のぷっくりとした唇をなぞる。

その、思いのほか温かな感触に、夕鈴は思わず涙をこぼした。

驚きに見開かれた、紅い瞳。

その瞳に捕らわれ、夕鈴は正直に言ってしまった。

「・・・毎日毎日、緊張して、場違いで、戸惑うことばかりで、甘い言葉にドキドキして、苦しくなって・・・ひっく・・・・ここが、く、くるし・・・ひぃっく・・・」

胸を押さえ、ボロボロと涙をこぼす。

遠くから、侍女たちが何事かと様子を伺っているのが分かった。

「・・・・・無粋な。」

黎翔は短く呟くと、泣き止まない夕鈴を抱き上げ、庭園の奥へ、奥へと歩を進めた___




「・・・ここなら、もう誰にも見つからないよ?夕鈴。」

「・・・ごめん、な、さい。・・・ひぃっく・・」

嗚咽が止まらない夕鈴を、黎翔は堪えきれずに抱きしめた。

「へい、か、痛・・・」

「ごめん!夕鈴!!」

ぎゅうぎゅうと夕鈴を抱きしめながら、黎翔は謝罪する。

「ごめん、夕鈴。手放してあげられなくて、ごめん。」

「・・・?陛下・・・?」

驚きで夕鈴の涙も止まった。

それでも黎翔は、抱きしめる力を弱めない。

「毎晩、毎晩、眠れないんだ。夜は、暗くて。・・・朝、君に会うと、ほっとするんだ。」

「陛下?」

「どうしようもない、この王宮で。君だけが、僕に『色』をくれる。」

「・・・色、ですか?」

「うん。あったかい、やわらかい、『色』。」

「・・・・難しい事はよくわかりませんが・・・。私は陛下のお役に立っている、ということでしょうか?」

「うん。とっても。」


抱きしめる力を緩め、黎翔は夕鈴と相対する。

麗らかな早春の陽射しが、二人に降り注ぎ、風が通り過ぎる。

どちらからともなく、手を取り合い、微笑みあう。

握り合った手をそのままに、二人は陽だまりに座り込んだ。

「ほら、陛下!もう春ですよ!小さなお花がこんなにたくさん咲いてます。」

「ほんとだね、気付かなかったよ。」

「ふふ。陛下はお背が高いから、気付きにくいんですかね?」

「ああ。私はいつも掌中の花しか目に入っていないからな。」

「・・・・?陛下、いつも花をお持ちなんですか?」

・・・・あぁ、もう。本当に無自覚な「花」だな。

「そうだよ、『夕鈴』っていう名前の花でね、ちっとも退屈しない、楽しくて可愛らしくて・・・・とても大切な、僕だけのお花なんだー。」

僕は、真っ赤になって固まる夕鈴を抱き寄せ。

「ほら、キレイに咲いている。真っ赤に、ね。」

真紅の頬に優しく口付けて、愛しい花を包み込んだ。
2013_02
21
(Thu)17:13

香り

夫婦設定です。

お子様はまだいません。


「油断」では夕鈴の香りについて触れたので、陛下の香りも書きたくなりまして・・・。




《香り》


陛下からは、深い森の香りがする。

何者をも寄せ付けない、深い、荘厳な森の香り。






立春も過ぎ、暦の上ではもう、春。

夕鈴は、衣装に無頓着な夫のために、春先にふさわしい衣装を選んでいた。

もちろん、新たに仕立てたりはせず、陛下の衣装部屋の整理整頓も兼ねて、である。


「・・・・どうして、こんなに着てない服があるの・・・?」

山と積まれた、新品同様の衣装。

「思ったよりも時間がかかりそうだわ。」

今日中に衣装棚の整理を終わらせるのは無理だと悟った夕鈴は、

色白の陛下の肌に映えそうな淡い色合いの衣装を数着選び、自室に持ち帰ることにした。



「お妃様、こちらの御香はいかがでしょうか?」

「・・・いい香りですね。・・・でも、もう少し、深みのあるものの方が・・・」

穏やかに微笑みながら、侍女たちと陛下の衣装に焚く香を選ぶ。


・・・が、なかなか「これ」というものが見つからない。


「陛下のいつもの御香が何か伺っておくんだったわ・・・。」

少し難しい顔をして考え込む正妃を、侍女たちはお互いに顔を見合わせて、微笑ましげに見つめるのであった。







夜、後宮。

いつものように、黎翔は夕鈴のお茶を飲みながら、ほにゃっと寛いでいた。

「ゆーりん、こっちにおいで~♪」

ニコニコと妻を手招きして呼び寄せ、膝の上に座らせる。


・・・すると。


いつもは顔を真っ赤にして恥らう夕鈴が、大人しく黎翔のされるがままにしている。

そればかりか、自分の胸にしな垂れかかり、ぎゅっとしがみつくではないか。

(!!!・・・・これって、おさそい?!)

素面の夕鈴からは滅多にない「お誘い」に、黎翔は喜色満面、意気揚々と妻を抱き上げた。

驚いたのは夕鈴である。

「っ!陛下?!何を!」

「・・・・なにって。愛しい妻からの嬉しい誘い。夫たるもの、応えるのが当然だろう?」

艶然と微笑む黎翔に、夕鈴は訳がわからず慌てだした。

「・・・は?さそい??」

「夕鈴ってば。照れなくてもいいのに♪」

ご馳走を目の前に、小犬が喜びを隠しきれない様子で答える。

「な、なにをっ!私、誘ってなんか!!」

夕鈴が下ろしてもらおうと暴れだすと、狼が小犬を一瞬で消した。

「・・・心当たりがない、と?」

無駄に色気がある狼に、兎の本能が警鐘を鳴らす。

「・・・いったい、なんのことでしょうか?」

嫌な汗が背に伝うのを感じつつ、兎は必死に牙を剥く。

「夫の胸に顔を寄せ、悩ましい吐息で私を煽ったではないか。」

「あ!そ、それはですね!!陛下の御香を知りたくて・・・!」

「我が后は恥ずかしがりだな。・・・言い訳は、それだけか?」

「言い訳なんかじゃ、ない・・・っ!!!んぅっ!」

狼に唇を塞がれた可愛らしい兎は、無駄とは知りながらも抵抗する______。







ねぇ、夕鈴。

僕が香を使わない事は、後宮では周知の事実なんだよ?

それなのに、僕の『香』を探したいだなんて、侍女たちも困っただろう。

・・・だけど、君が僕の香りを侍女たちにどう説明したのか、是非とも知りたいな。

・・・・明日の朝、ちゃんと聞かせてね・・・?


しっとりとした、夜の闇の中。

捕食された兎を柔らかく抱きしめながら、狼は満ち足りた眠りに就く_____
2013_02
20
(Wed)21:20

油断

2月20日は、「夫婦円満の日」ということで、SNSにUPしたSSをこちらにも。

のんびり、まったりとした新婚夫婦でございます。

起伏のないお話しですので、お暇つぶしに・・・・♪



【設定 未来夫婦・お子様はまだいません】



《油断》



夕鈴からは、花の香りがする。

誰の心をも和ませる、淡く、ほのかな花の香り。





後宮、夜。

本当の夫婦になってまだ日も浅い夕鈴は、陛下の一日のお疲れを少しでも癒せるよう、日々努力を続けていた。

今日は、一日書簡とにらめっこしていた夫の疲労を和らげるべく、
長椅子で膝枕をして、温かく蒸した手巾を目隠しにし、ゆっくりと頭皮をマッサージしてあげている。


「・・・陛下、痛くないですか?」

「・・・う・・・ん。」

黎翔はあまりの心地よさに、うとうとしていた。


・・・・いい匂い。
甘くて、あったかくて、柔らかくて。
ほんのりと香る・・・・花の香り。

君の柔らかい小さな手が、僕の髪を掻き分け、可愛らしい指がゆっくりと癒してくれる。

あぁ、ほんとに気持ちいい。

今日は朝からずっと、ずーっと、書簡と格闘していたから・・・。

あ、そうか。

夕鈴は、知ってたんだ。

だから、このマッサージなんだ。

・・・・僕って幸せものだなぁ~。下町に逃げられなくて、ほんと、よかった・・・・





「・・・・へーかっ!」

小さな囁きが、黎翔の眠りを破った。

「浩大。」

天井裏から音も立てずにふわりと舞い降りた浩大は、驚きを隠せない表情で黎翔を見た。

「珍しいね~。話しかけるまで気付かないなんて。」

「・・・・うるさい。何の用だ。」


せっかく夕鈴に膝枕してもらってたのに____って、夕鈴?!



状況に気付いた黎翔に、浩大が笑みを含んだ目線を投げる。

「・・・・ぷぷっ!へーかってば、お妃ちゃんに風邪、引かさないでくれよ~!」

用は済んだ、とばかりに隠密は再び天井裏へと消えた。




「・・・・ふぅ。」

黎翔はおせっかいな隠密にほんの少しだけ感謝しながら、ちいさくため息をついた。

(浩大の気配に気付かないとは・・・。少し、気を緩めすぎたな。)

身を起こし、その原因を作ってくれた、愛しい妻を抱き上げる。


(夕鈴・・・。君が刺客なら、僕はあっさり仕留められるんだろうな・・・)

腕の中で安らかに眠る、愛しい妻の額に唇を寄せた。





その後しばらくの間。

今日はどこを疲れさせて夕鈴に癒してもらおうかと、真剣に悩む陛下と、呆れ顔の側近、という、

少々不思議な政務風景が見受けられるようになったのだった。
2013_02
18
(Mon)21:57

ライバル おまけ

SNSでの6000人目のお客様、t様からのリク、「ライバル」のおまけです。

・・・・やっぱりおまけつけちゃいました♪


【夫婦設定・お子様でます!】
陛下のキャラ、壊れ気味です。
捏造しまくりです。
ご注意下さい。



《ライバル・おまけ》

国王夫婦の居間からは、子どもの部屋にも行き来できる。

もちろん、将来生まれるであろう皇子皇女の部屋なので、
かなりの広さがある部屋ばかりだ。


その中でも、一際広い部屋。
つまり、第一皇子の部屋の、寝台では。

______父と子の、密かな攻防が繰り広げられていた。




夕鈴が提案した、「みんなで一緒に寝る」案は、不承不承ながらも採用され、
今はいわゆる「川の字」で就寝中である。

中央に、皇子。その両脇に夕鈴と黎翔が寝ている。

・・・・が。

夕鈴に背を向ける格好で寝ている皇子と、それに相対する格好で寝ている父王。
二人は、無言の睨み合いを展開中である。

(・・・・子どもは、早く寝ろ!!)
(まだ眠くないんです!・・・父上こそ、まだ政務があるのでは?)

(甘いな。全て片付けた。)
(・・・今夜のために、ですか?)

(あたりまえだ。)
(・・・・・・)

(だから早く、寝ろ。)
(い・や・で・す。母上と朝までくっついていたいんです。)

(だ・か・ら、母上は父上のものだと何度いったら分かる?)
(父上こそ。母上は僕のものだと何度申し上げればお分かりになられますか?)

周囲の空気が凍りつくような微笑を交し合う、父と子。

「・・・ぅ・・・・ん。まだ、起きてらっしゃるの?」

うっすらと目を開けた夕鈴が、にこりと黎翔に微笑みかけた。

蕩けるような夕鈴の微笑みに、黎翔は今すぐ抱きしめたい衝動に駆られるが、
愛しい妻との間には、自分にそっくりの子狼が立ちはだかっている。


「・・・・ああ、皇子がまだ眠れないようなのでな。寝かしつけているところだ。」

「・・・皇子。ほら、今日は疲れたでしょう?母様が抱っこしてあげるから、ゆっくりお休みなさい・・・」

くるりと息子を自分の方に向かせ、可愛らしい頭を胸に抱え込むように、夕鈴は皇子を抱きしめた。

そして、そのまま、ゆっくりとリズミカルに、とんとん、と、優しく背に触れる。

安らぐ、母の鼓動。甘い香り。温かい柔らかさ。

(・・・・・まずい・・・・きもちよすぎて、ね・・・ちゃう・・・・)

まだ5歳。
皇子は母の手により、あっけなく夢の世界に落ちた。



「・・・陛下?」

息子が寝入ったのを見計らって、夕鈴は黎翔にそっと声をかけた。

「・・・夕鈴、皇子は寝た?」

「はい、やはり疲れていたようですね。」

愛しげに皇子の頬を撫でる夕鈴を、黎翔は複雑な気分で眺めた。

(・・・どうしよう。僕たちの寝室に行こう、なんて言ったら、怒るかな・・・)

「・・・あ、あの、陛下?」

「なぁに?」

内心の動揺を悟られないよう、にっこりと微笑みながら、黎翔は答えた。

夕鈴は、その微笑に頬を染めながら、遠慮がちに申し出る。


「・・・あ、あのですね?・・・・・ぎゅって、して?」

黎翔の意識は白み。

・・・・気づけば、愛しい兎を抱き上げ、王と正妃の寝室へ向っていた。

腕の中の兎は、今日はいつになくおとなしく。
湯上りの香油を念入りに塗られたのか、いつもよりも濃い香りがした。

見えない尻尾を高速で振りながら、黎翔は後ろを振り返る。


(・・・・今日はよく頑張ったな。・・・だが、母上は、やはり父のものだぞ?)


最後まで大人気ない、黎翔であった。
2013_02
18
(Mon)21:55

ライバル

SNSで6000人目のお客様になられた、t様からのリクです♪



ご注意下さい!!
【本物夫婦・お子さま有】
陛下のキャラが崩壊気味です。
捏造しまくりです。

苦手は方は、ご無理なさいませんよう・・・・。



《ライバル》



白陽国の太子は、5歳になると『謁見の儀』を行い、以後公式行事に出席が義務付けられる。

黎翔と夕鈴の長男は、今年で5歳になり、吉日を選んで儀式を執り行うこととなった。



その当日。

愛しい我が子の初めての公式行事に、正妃は大変に緊張していた。

正妃らしく装い、化粧も施され、
息を呑むほどに美しい仕上がりなのだが、
いつもは桃色の頬もすっかり青白くなり、
肩は緊張で微かに震えている。

・・・・・青慎の任官式の時よりはマシだと思ってたのに!!

心の叫びを押し隠し、夕鈴は控え室で陛下の到着を待ちながら、必死に笑顔を浮かべ、緊張を周りに悟られないよう努めていた。

・・・が、努力もむなしく、愛らしく緊張する正妃の心情は、優秀な侍女達にはすっかりばれており。

労わりの微笑を向けられていることに、気付かないのは夕鈴だけ・・・・。







一方、父親である黎翔は。
自室で・・・・いじけていた。

長椅子に突っ伏し、ピクリともしない。
が、感心にも衣装だけは、儀式用のものに着替えていた。


深いため息をつきながら、側近は窘める。

「ほらほら、陛下。頑張りましょう。『謁見式』ですよ?おめでたい儀式なんですよ?」

「・・・・『謁見式』、なんて、めでたくないよ・・・」

蚊の鳴くような声で答えた黎翔の言葉を無視し、話し続ける李順。

「・・・懐かしい儀式です。・・・あの日のことは鮮明に覚えてますよ。貴方の母上様のお美しさに臣下の視線と王の視線が集中して、主役である兄君の影が薄れてしまうほどでしたからね。________思えばあれが始まりでしたか。」

だが、懐かしくも物騒な思い出に耽る李順の言葉など、今の黎翔には届かない。
なぜなら。


「・・・むすこのばか・・・ゆうりんをかえせ・・・」

大人気ないヤキモチで全身を蝕まれているからである。


側近は、深々とため息をついた・・・・。





あぁ、もう二ヶ月、夕鈴と二人っきりで過ごせていない。
式の練習や準備で、夕鈴が忙しかったからだ。
・・・・百歩譲って、それは承知するが。

なぜ夜まで!!

夕鈴は、幼い我が子が不憫だと、この二ヶ月、毎夜皇子を抱いて眠っていた。
当然黎翔は、皇子が寝入った頃を見計らって、夫婦の時間を過ごすために、愛しい妻を起こそうとするのであるが・・・・・。

夕鈴の聖母の様な寝顔に、玉砕する日々が続いていたのだった。

・・・が。何事にも限度というものがあるだろう!と黎翔は思う。
だが、面と向って夕鈴に思いを伝えれば、きっとものすごく怒られる。

もちろん、皇子は可愛い。この上なく大切は、可愛い我が子だ。

・・・・だけど、だけど!!!

側近に負けないほど、深く深くため息をついた黎翔は、
今日さえ終えれば!の思いを胸に、いや、それだけを糧に、のろのろと立ち上がったのだった。







控え室で夫を待つ夕鈴のもとに、笑みを浮かべた黎翔が現れた。

「・・・・待たせたな、我が妻よ。・・・顔色が優れないようだが、大丈夫か?」

「お気遣いありがとうございます。陛下。少し、緊張してしまって。・・・でも、大丈夫です!私よりあの子の方がずっと大変な思いをしているはずですもの!!」

胸の前で握られた夕鈴の手は、カタカタと震えていた。

その手をそっと包み込み、黎翔は妻の肩を抱く。

「・・・大丈夫。私たちの子だ。きっと、度胸だけはあるさ。」

久しぶりに触れた夫の温もりに、夕鈴は緊張がほぐれていくのを感じていた。

そして、

「・・・・そうですね、私たちの子ですものね。」

頬を桃色に染め、ふわり、と夫に微笑みかけた。





夕鈴の心配などどこ吹く風、とばかりに、皇子は堂々と優雅に儀式を進めた。

父王譲りの紅の瞳と漆黒の髪。
母后譲りの柔らかい微笑。

威厳と優しさを兼ね備えた息子の姿に、夕鈴は涙腺が緩むのを止められず。

・・・黎翔は、微笑みながらも、胸騒ぎを感じていた。






その夜、宴が終わり、国王一家は久々に家族団欒の時を過ごし、
着飾ったままだった夕鈴は、幸せな気分で、侍女に促されて先に湯殿に向った。



そして夕鈴のいない居室では。

_____父と息子の戦いの火蓋が切って落とされた。




「今日からは、一人で寝なさい。」
「えぇー、僕、母上と寝たい!!」

「だめだ。母上は、父上のものだ。」
「違うよ、母上は、僕の。」

「私の!!」
「僕の!!!!」

「湯上りの母上のいい匂いと一緒じゃなきゃ、僕眠れないよー。」
「・・・我が子でなくば、斬り捨てるところだぞ・・・」

「父上、こっわーい!そんなんじゃ、母上に嫌われるよ?」
「うるさい。母上は、怖い父上も好きなんだ。」
「・・・・自信満々だね・・・・」


先ほどまで和気藹々とした温かい空気で満たされていた居室は、
いまではブリザードが吹き荒れる極寒の様相を呈している。

もしここに水月がいれば、早退確定だ。


「・・・・おまえは、もう2ヶ月も母上を独り占めしたろう。・・・少しは父に譲れ。」
「・・・・うーん・・・・。じゃぁ、母上に決めてもらうのはどう?」
「それじゃ、おまえが勝つに決まってるだろう!」

両者一歩も引かない戦いは、夕鈴が戻ってきた途端、終止符が打たれた。

「今日は疲れましたね。さぁ、陛下も皇子も、早く寝なさいね?」

「母上!」
「夕鈴!!」

「「僕と一緒に寝よう!!」」

さすが親子、ぴったりと息が合う。

一瞬目を丸くした夕鈴は、くすっと笑うと返事をした。

「じゃぁ、みんなで一緒に寝ましょうね?」

「「えぇーーー!!!」」

親子の狼の不満げな遠吠えが、後宮に響き渡ったのだった・・・・・。




☆おしまい

「ヘタレで残念な陛下」がお題でございました。ぷぷぷ。
2013_02
15
(Fri)12:42

失態 続き

少し、陛下が悪い人です。
某国SNSでお友達のH様に勝手に捧げさせて頂きました♪


【設定 未来夫婦】
【少し大人な感じです。苦手な方はご注意下さい】


《失態・続き》


「ねえ、夕鈴。君の夫は誰かな・・・?」

じりじりと壁際に追い詰められる夕鈴と、妖艶な微笑を浮かべる黎翔。

「な、なにを・・・」

「・・・夕鈴、僕にはあんな風に話しかけてくれないよね・・・?」

黎翔は拗ねる小犬の風情を醸し出すが、狼の眼光を隠しきれていない。

「あ、あんな風、って?」

「こんな風に、だよ。」

黎翔は夕鈴の額に自分の顔をぐいっと近づけ、壁際に夕鈴を追い詰めた。




今は北部地方への移動中。
夕鈴が追い詰められているのはその馬車の中である。

当然、御者がおり、前後左右を警護兵が守る。
もちろん、馬車は頑丈かつ壮麗な作りで、中の物音も多少ならば漏れる事はない。
とはいえ、白昼に人の気配を感じる中、黎翔に追い詰められた夕鈴は、目をぐるぐる回してパニックに陥っていた。

「へ、へいか!!落ち着いてください!!」

「これ以上なく落ち着いているが?」

「だから、何を仰ってるんですか!!」

「・・・・夕鈴、わからないの?・・・・ほら、昨日僕が目覚めた時、李順と額をつき合わせるように話してたでしょ?」

「っ!あ、あれはですね!お疲れの陛下を少しでも休ませて差し上げたくて、李順さんの口を塞いでお願いした・・・」

「・・・・口を、・・・塞いだ・・・?」

黎翔の雰囲気が一変した。
もはや、狼を隠そうともせず、夕鈴の顔を両手で挟み込み、ぐいっと自分を見上げさせる。

「どの様に、口を塞いだのだ?」

夫の豹変振りに夕鈴は蒼白になる。

「・・・とっさに、掌で・・・・」

やっとのことで言葉を搾り出す。

「________李順め。どうりで大人しく留守番するはずだ・・・・」

苦々しげに黎翔は呟き、鋭い視線を夕鈴に向けた。

「・・・・どちらの掌だ?」

ぎゅっと両手首をつかまれた痛みに眉をしかめながらも、夕鈴は、

「右手、です。」

と弱々しく答えた。

途端に、右手を黎翔の口元に運ばれ、掌を舐られる。
夕鈴は驚いて手を引くが、びくともしない。

「・・・・夕鈴。私を休ませようとしてくれた心は嬉しいが・・・・感心しないな。私の全てが君のものであるように、君の全ては、私のためにあるのではないのか?」

言葉は甘いが、黎翔の瞳は怒りで満ちていた。

夕鈴はその瞳を見て、自分の軽率さに気付く。

「・・・申し訳、ありませんでした・・・。」

もし、逆なら。
黎翔が舞姫に酌をされるだけでも心が掻き乱されるのに、女官の口を黎翔の掌が塞いだら。
・・・・想像するだけで、涙が出そうになった。

「・・・・ごめんなさい・・・」

涙が一粒、ポロリと零れ落ちた。

黎翔が驚いたように唇を離す。

「夕鈴?」

ポロポロと涙をこぼしながら、夕鈴は謝罪し続け。

そんな展開を予想していなかった黎翔は、戸惑いながらも愛しい妻を抱きしめ続けた。



数刻後。

馬車から降りる王の腕の中には、頬を紅く染めて眠る正妃の姿が見られた。
その姿はしどけなく、妖艶ですらあり、出迎えの貴族や官吏たちは、馬車の中での様子を想像し、陛下の寵愛の深さを改めて思い知ることとなった。


また、その後の夕鈴は、というと。


「陛下?!私も『視察』に、『視察』に来たんですよね?ね?」

・・・・再び、壁際に追い詰められていた。

「ああ、もちろんその通りだが?」

「もう今日で3日目ですよ?!いい加減に離宮に閉じ込めないで、お仕事させて下さい!!」

「大丈夫。僕がちゃんとしているよ。君が休んでいる、昼の間にね。」

「誰のせいで昼間休むはめになってると思ってるんですか!!私が来た意味ないじゃないですか!!」

「・・・・・夕鈴?まだお仕置きは終わってないんだよ?」

黎翔はにこやかに笑みながら、一切の隙を見せずに夕鈴を寝台の隅に追い詰める。

「さぁ、次はどんな『お仕置き』がお好みかな?我が妻は。」

「いやぁぁぁ!!」

「・・・・では、まずは右手から・・・・」

結局その翌日も、夕鈴は昼過ぎまで起きられず、自分の行いを激しく後悔することとなったのだった。


☆ただの意地悪陛下になっちゃいました・・・・。すいません。ぺこり。
2013_02
15
(Fri)12:39

失態

【設定 未来夫婦 ご注意下さい!】



《失態》


・・・陛下が休憩から帰ってこない・・・

政務室にて陛下が戻るのを待っていた李順は、
深いため息をつき、陛下捜索に向かった____



ここ7日ほど、政務は多忙を極めていた。
なぜなら、明日から陛下が北部地域の視察に赴くからだ。

北部地域は黎翔が皇子時代の大半を過ごした地域であり、安全性は高い。
したがってそちらの心配はあまりないのだが、問題は、王宮だ。

李順は視察に同行せず、留守を預かるので、黎翔不在時に予想される政務を全て前倒しせねばならなかった。

その結果、黎翔はここ7日ほど、政務室に付属した休憩室で仮眠をとるありさまであり、官吏たちも24時間勤務体制をとっていたのだった。

「・・・・まぁ、そのおかげでどうにかなりそうなんですがね・・・」

李順は黎翔を探し、まっすぐに後宮へ向かった。


「・・・正妃様、陛下はお見えでは・・・」

李順が問いかけながら正妃の部屋に足を踏み入れた途端・・・・。

柔らかいものに、口を塞がれた。

「?!」

「しーっ!李順さん、陛下は今お昼寝中です!」
李順の口を掌で塞ぎながら、必死の形相でひそひそと囁く夕鈴。

「いいですか?!大きな声を出さないでくださいね?!」

さすが、狼陛下の花嫁。凄い気迫だ。
・・・・などと、感心している場合ではない。

コクコクと李順がうなずくと、夕鈴はホッとした様に掌を外した。

「・・・夕鈴殿?!陛下がお昼寝なさってるのなら、お起こしして下さい。まだ政務が残ってるんです。」

夕鈴に倣って声を潜めて話す李順と、さらに声を潜めて返答する夕鈴。

「それが、陛下、ものすごくお疲れのようで。ここに来るなり、長椅子に突っ伏して眠ってしまわれたんです。珍しく、とっても良く眠ってらっしゃるので、せめて、あと少しだけ眠らせて差し上げても宜しいですか?」

夕鈴の瞳は、心配で曇っている。
・・・黎翔を、心から案じていることが感じられ、李順も折れた。

「・・・わかりました。では、あと一刻したら、お迎えに上がりますから、それまで陛下を宜しくお願いします。お目が覚められたら、頭がスッキリするお茶でもお淹れして差し上げてくださいますか?」

「ふふふ。わかりました。」

額をくっつけ合うように、声を潜めて話す、李順と夕鈴。



「_____何をしている」

一気に、部屋の温度が10度は下がったと、李順は感じた。

「陛下!お目覚めですか?」
パッと振り向いた夕鈴を、黎翔はやや乱暴に抱き上げた。

「っ!陛下?!」

「・・・夕鈴。君の夫は?」

「?!陛下ですよ?!なに言ってるんですか?」

「・・・・李順。明日からの視察。正妃も同行する旨、関係する部署及び視察先に早馬を出せ。」

「「陛下!なにを突然!!」」

奇しくも、息ぴったりに反論した李順と夕鈴。

黎翔の冷気はますます強まり、李順は己の失態を悟った。

(_____こうなったら、もうダメですね・・・。うっかり正妃様のペースに乗ってしまった、私の失態です・・・。腹をくくって、後始末を致しましょう・・・)


李順は叩頭し、是の意を表した。

その姿に満足したのか、黎翔は暴れる正妃を片手で抱きかかえて、感心にも、政務室へと戻っていったのであった。


_____翌日からの視察で、夕鈴がどんな目にあったのか。

それは同行しなかった李順には知るよしもない。
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