2013_07
09
(Tue)21:18

「こひすてふ」おまけ「あなたに」

SNSで26000人目のお客様となられた、Cさまのリクエストです。


【「こひすてふ」おまけ】
【成婚式の夜のお話しですが、パス付ではありません!笑】



《あなたに》




凛とした『正妃』の顔で、寄せ来る客人たちの挨拶に、柔らかく答礼する君。

口元には微笑。

瞳には温かな光。

愛らしい頬を、わずかに桜色に染め。

艶めかしく輝く唇から零れ落ちる声は、澄んだ鈴の音のようで。




『良い身体をしている。』

『柔らかそうな、華奢な身体だ。』

『この声でどのように囀るのか・・・』

『試してみたい。』

『狼陛下を虜にしたこの身体を・・・』

『________是非にも、一度。』




声なき声。

僅かに交わされる視線。

下卑た瞳。



___________私の后をそのような目で見つめるとは。


皆。

命が惜しくはないらしい。



無意識に剣に伸びる手を、力尽くで押さえ込み。

夕鈴の笑顔を曇らせぬよう、必死の思いで自重する。



ちらりと李順に目をやれば、全て承知の上で、目礼を返してきた。


早くしろ。

もう、もたん。


李順が水月に指示を出すのを目の端で確認する。


楽の音が、大きくなる。


舞が始まる、一瞬の間をついて、貴賓席を思い切り睨みつけた。


ビクッ、と、反応した男が、一人。

ほう。なかなか感がいいな。


___________翠の王太子の付き人、か?


武官のような体つきの男に軽く視線を投げ。

黎翔は、音もなく立ち上がり。


「_________夕鈴、退席の時間だ。」


なるべく優しい声を出し、夕鈴を抱き上げ、胸の中に隠し。




___________もう、お前達には指の一本たりとも、見せてやらぬ。



走り出したい気持ちを押さえ込んで、後宮へ下がった。



早足で。











回廊を、渡る。


今までとは違う、階。

今までとは違う、手摺。


正妃の宮殿にふさわしい、壮麗で重厚。そして、華やかな作りの回廊。


釣灯篭が淡く灯され、柱には香が焚き染められ。

花のような正妃にふさわしく、宮殿全体が清楚な香りを放ち。

抱き締めた夕鈴から漂う甘い香りと、混ざり合う。



柔らかく漂う、夕鈴の香りに、包まれ。


黎翔は、急速に心が落ち着いていくのを感じた。




「___________さあ、部屋に着いたよ、正妃様。」


美しく飾り立てられた正妃の部屋の長椅子に、そっと君を下ろし。

荒ぶった心を誤魔化すように、おどけて言う。

でも、夕鈴は、俯いたままで。


「・・・・・怒ってるの?もっと演目を見たかった?ご、ごめんね?!」


僕は慌てて君を覗き込んだ。











「_________夕鈴、退席の時間だ。」


その声音の硬さに、頭が冷えていくのを感じる。

優しいけど、この声は陛下がすごく怒っているときの、声。



・・・・っ!私、何かしたのかしら!?



慌てて陛下を見上げると、ふわりと微笑まれて。


私に向けた怒りではないのが、わかった。



胸の中にすっぽりと包まれるように、抱えあげられて。

陛下は早足で、宴席を後にし。


冷たい気配を押し隠しながら、私を優しく運ぶ。





__________蔑んだ眼差し。

いやらしい、絡みつく様な視線。

隠し切れぬ、嘲り。



宴の間中、私に注がれていた、それらの視線。


それは、きっと。


陛下が一番、感じていたことで。

私は、それに気付かぬ振りをして、演目を楽しんだ。

陛下にも、少しでも、楽しんで欲しくて。




少し怒ったような顔で足早に歩きながら。

私を宝物のように抱き締める、陛下。

正妃の部屋の、豪華な長椅子に、私をそうっと座らせて。

気遣いながら微笑みかけてくれる、愛しい愛しい、私の、陛下。


精一杯、私を守ってくれた、この人に。

私がこの大切な人に、いま、伝えたい事は。



「・・・・黎翔様、ありがとう。」



私を守ってくれて。

こんな私を、妻にしてくれて。



そして。


誰からも祝福されるような妻ではない、私を。

これからも。


「・・・・・ずっと、お側においてくださいね?」



もう、この手を離さない。


そう、決めているから。



「私を妻にしてくださって、ありがとうございます。」


心からの笑みを。

愛しい、貴方に。



心からの、口付けと、共に。











顔を上げ、大輪の花のように、夕鈴が笑う。


「私を妻にしてくださって、ありがとうございます。」


ぷっくりと艶やかな唇が、動く。

手が、伸ばされ。

僕の頬を、挟み込み。

小さく、口付けが贈られる。


「・・・・・・っ!」


頬が染まる。

どうしよう。

こういうときは、どうしたらいい?!


「・・・へい、か?」


くすっと声を立てて笑う君が、僕を覗き込むから。

頭より先に、体が動いてしまって。

気付けば、力の限り、抱き締めていた。



「へ、へいかっ!くるしっ!!」

「・・・だめ。名前呼んでくれないと、放さない。」

「っ!えええ?!名前?」

「うん。さっき呼んでくれたでしょ?・・・・もう一回。」

「う・・・・・一回だけですよ?」

「うんっ!!」

「・・・れいしょう、さま・・・・大好き。」

「っ!!」



____________ああ。放すの、無理。



ぎゅうぎゅうと、夕鈴を抱き締めたまま、天を仰ぐ。

目の端にずれた天井板が映り、見慣れた手が、ひらひらと舞う。


・・・・気を利かせた、か。



じゃあ、もう、いいよね?


「夕鈴、可愛すぎるよ・・・・」


ゆっくりと、君に口付けながら。


僕は、自分がこれ以上なく蕩けきった笑顔を浮かべているのを、確信し。


花の香りを漂わせる宮殿は。

ひっそりと、静まり返った。
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2013_07
07
(Sun)23:19

こひすてふ 5

どうにも中途半端な終わり方ですが、これで、「こひすてふ」はお終いです。

そして、このお話は、「奪還」に続くことになります。


すごーく遠回りして家に帰ってきた。

そんな感じです。←






【設定・未来】
【「ものやおもふと」のその後のお話】
【オリキャラでます!】
【捏造ありまくりです。東の隣国出ます。】




《こひすてふ 5》






「___________陛下。」


「ああ、分かっている。」


夕鈴が湯殿を使っている頃を見計らって入室した李順に、黎翔は低い声音を投げる。


「見張れ。翠国を。」

「御意。」


夕鈴を見る目が、奴だけは違った。

値踏みするような、興味本位な目ではなく。


________心からの賞賛と、恋情。


こちらの警戒心を解くために、わざとらしく、自らの婚姻の話などを持ち出した。


「・・・・王太子、か。」


私から夕鈴を奪おうなどと、誰であろうが、させぬ。


「不審な動きあらば、すぐに知らせよ。」

「承知いたしました。」



この時の黎翔は、まだ知らなかった。


玉禮の、異常なまでの執着心を。

既に準備を始めた事を。


年月をかけ、少しずつ。

密やかに。

白陽国・東の砦に、一人、また一人、と、隠密が送り込まれていく事を。


二十年近い年月を費やして、少しずつ、少しずつ。

玉禮の手は、夕鈴に伸ばされる。


それを、黎翔が知るのは__________まだ、十数年、先のこと。











「________ねえ、父さん。」


王宮に準備された部屋で、青慎は真剣な顔で口を開いた。


「なんだ?青慎。」


まだ侍官姿に変装したままの二人は、額を寄せ合って話し始める。


「あのさ・・・あの、貴賓席に座っていた方で、気になる人がいたんだ。」

「貴賓席?」

「うん。なんだか楽しそうに、嬉しそうに、ずっと姉さんを見ていて・・・」

「楽しそうに?」

「うん・・・。でも、なんて言うか・・・ちょっと怖い感じだったんだ。その、『目』が。」

「・・・そうか・・・。お前がそう言うなら、きっとそうなんだろうが。」

「でも、なんの証拠もないし、こんなこと言ったら相手の方に悪いかな、なんて・・・」

「・・・だが、お前が気になるというなら、ゆうり」


ちょうどその時、バタンと扉が開き。


「__________そのお話し、詳しくお聞かせ願えませんか?汀青慎殿。」


くいっと眼鏡を押し上げながら、李順は顔を上げ。


真っ直ぐに、青慎を見詰める。



青慎は、姿勢を正して、李順を見据え。



「_________ご無礼を承知で、申し上げます。李順殿。」


しっかりと、話し始めた。


_________姉さんを、守らなきゃ。



「宴の席で、気になる方が・・・・」



_________ずっと、ずっと。



「ただ、正妃様を見つめるというには、少し異常に感じました。」


__________僕を守ってくれた、姉さんを。


「・・・あの『目』は、普通ではありません。」


_________今度は、僕が。


「・・・・以前下町で、馴染みの酒屋の売り子に執拗に付きまとった男がおりました。」


_________守る、番。


「その男の目と、その方の目が・・・似ているのが、どうしても気にかかります。」



しばし、無言で青慎を見つめていた李順は、落ち着いた声音で問いかける。


「・・・証拠が」


「ありません。」


青慎の声が李順の言葉に被る。


常ならば不躾とも取れる、その、小気味の良い端的な回答に。

李順は、思わず笑みを浮かべ。



「_________汀青慎殿。」

「はい。」

「次の科挙。必ず通って下さい。」

「は、はい。」

「宜しいですか?状元で合格なさい。榜眼や探花では、いけません。必ずや、状元で。」

「は、はいっ!」

「一切、手心は加えません。手助けも、致しません。」

「もちろんです!姉に叱られます!」

「早く、『こちら』にお出でなさい・・・・待っていますよ。」


手を、伸ばし。

青慎の肩を、励ますように叩いた。











「________さて、と・・・翠、ですか・・・」


自室に戻った李順は、なにか歌のようなものを口ずさみ始めた。

不思議な抑揚の、心地よい、歌。

だが、歌詞は聞き取れない。

というか、意味が分からない。




___________李順。覚えなさい。


夕鈴の正妃立后にあたり、李・本家の力を借りるとき。

教えられた、歌。

その曲は、李家の子どもにとっては、耳に馴染んだ『子守唄』で。

だが、歌詞は、微妙に違う。




_________よいか、李順。今夜中に、覚えよ。


芙蓉の父である李家の当主から、教え込まれた、その歌詞には。

李家がばら撒いている隠密全ての居場所と。

その『名』が編みこまれている。



当主しか知らぬ、歌詞。

『決して書き残すな。』

そう厳命され、託された。


ぶつぶつと小さく呟き、ようやく『翠』にまで至った李順は。


「__________数が、少なすぎる・・・」


眉間に皴を寄せ。


「・・・・手が回るか・・・どうか。」


白陽国の内政は、未だ磐石とは言いがたく。

翠にまで人員を裂く余裕がない。

だからこそ、李の方で処理を、と考えたが、数が足りぬ。


__________さて。どうしましょうか。


私が『裏』に力を裂く余裕を作るためにも。


「早くこちらに来てくださいよ、青慎殿。」


李順は呟いた。
2013_07
07
(Sun)23:08

こひすてふ 4

【設定・未来】
【「ものやおもふと」のその後のお話】
【オリキャラでます!】
【捏造ありまくりです。東の隣国出ます。】




《こひすてふ 4》




華やかに宴は進む。


玉座に座る黎翔の横で、夕鈴も頬を染めながら舞姫たちの演舞を楽しみ。

勇壮な剣技や優美な楽の音に、きらきらと目を輝かせる。



「________夕鈴、楽しい?」


「はい、とっても!」


黎翔の囁きに、夕鈴は満面の笑みで答え。


「皆さんにお祝いしていただいた上に、こんなに素晴らしい演目まで・・・!嬉しい!」


無邪気に喜びを伝える。


「・・・楽しんでいるところ、悪いんだけど・・・そろそろ、退出の時間なんだ。」


「あ、はい!では、私後宮で陛下をお待ちして・・・」


「いや。私も共に下がる。」


「ええっ?!そ、それでは、宴がっ!」


「いや。下がる。あとは氾や柳がなんとでもするだろう。」


にっこりと笑い、黎翔は李順にちらりと視線を投げた。




__________分かっております。陛下。


小さく李順は頷く。



正妃様に注がれる、遠慮のない視線。


『・・・ほう、あれが唯一の妃か。』

『少女のような方だな。』

『・・・そう見えるが、閨では・・・』

『抜けるような柔肌だな。美味そうだ。』

『染まる頬も愛らしい。』

『どのようにして、正妃に成り上がった?』

『よほどよい身体をしているのだろう。』

『試してみたいな。』

『殺されるぞ?』

『冷酷非情の狼陛下に、な。くくくっ。』

『冗談だ。酒の席での戯言に過ぎん。』

『くすくす。』

『くすくす。』



貴賓席付近で交わされる、声にならない会話。

下卑た視線。




___________陛下。よくご辛抱なさいました。



主を称えつつ、李順は氾水月に指示を出し。



より一層華やかな楽の音と、艶やかに舞い踊る舞姫たちに全員の視線が集まった、隙に。


黎翔は、夕鈴を抱き上げて、さっさと退席したのだった。






「_____________やっと行ったか・・・・」


美酒を口に運び、舌の上で転がしながら、玉禮は呟いた。


あのように無遠慮な視線に、私の夕鈴様を晒し続けるなど・・・・


「許しがたいな。」


珀黎翔。


「・・・・叔父上?」


訝しげに自分を見つめる玉環に、玉禮はいつもの笑みを向け。


「・・・疲れたか?」


気遣いを見せ。


「_________さて、と。戻るか。」


席を立ち。


笑みを浮かべ、考えを巡らせる。




正妃は、永世。

下賜はありえない。


手に入れるには、どうしたらいい?



相手はあの『狼陛下』

一筋縄では、いかない。




花のような笑顔。

愛らしい頬。

鈴の鳴るような声。

穢れのない、天女のような、夕鈴様を。



我が手に抱くには___________




ふと足を止め、玉禮は呟く。


「__________悟らせて、たまるものか。」


この恋心を。


十年。


いや、二十年かかるやもしれん。


だが。


必ず、だ。


必ず、手に入れる。


どれほどの年月が流れようが。

狂うほどに焦がれようが。



「・・・・必ず、だ。」



鮮やかな笑顔を浮かべ、楽しげに笑む、玉禮を。


悪寒を感じながら、玉環は見つめ続けた。



こひすてふ 5 へ
2013_07
07
(Sun)22:30

こひすてふ 3

今回から、オリキャラが出ます。

東の隣国・翠の王太子、玉禮と、その甥・玉環です。

「奪還」をお読みになっての方が、スッキリすると思います。(すっきりって。笑)





【設定・未来】
【「ものやおもふと」のその後のお話】
【オリキャラでます!】
【捏造ありまくりです。東の隣国出ます。】




《こひすてふ 3》






「__________太子、太子!」


「・・・・」


「玉禮太子!!」


「あ・・・ああ。なんだ?」


白陽国・東の隣国・「翠」。


その翠国王太子、玉禮は________呆けていた。


「・・・・もう、しっかりなさって下さいよ、叔父上。」


たしなめる玉環は、涼やかな美丈夫で。

礼服を着ていても、どことなく精悍な風貌だ。


「なぁ・・・・。この国の国法では、正妃は永世か?」


まだ夢を見ているような顔つきの太子に、玉環は深々とため息をつき。


「はい。永世ですよ。ずーっと、ずーっと、正妃は正妃!例え国王が逝去しても、ずーっと正妃!!・・・です!!」


かろうじて敬語を付け加え、玉環は、叔父を見つめ。


「叔父上・・・・しっかりなさって下さい。」


呆れたように、呟いた。



涼やかな目元と、際立った姿形。

王太子という立場にふさわしい、威厳を持ち。

誰に対しても、優しく。

誰に対しても、笑みを絶やさず。

誰からも敬愛される、叔父。



自分は王族ではあるが、軍部を目指した。

そのことに全く不満はなく、むしろ願いどおりに事は進んでいる。

中央のいらぬ勢力争いになど、興味はない。

好きな武術に勤しんで、叔父の役に立てればいい。

そう思う。


叔父は、王の器だ。


笑顔の裏にある、緻密な計算。

交易の手腕。

不敬に当たるかも知れぬが、この白陽国の王にも引けは取らぬ。



が。

なんだろう。

この不安は。


宙を見つめ、心ここにあらずといった様子の、叔父を見つめながら。

玉環は、複雑な面持ちでため息をついた。




「・・・・・・夕鈴様、か・・・・」



ぽつりと呟く、玉禮の目に。

小さな決意が宿ったのを知るものは、誰もおらず。


また、玉禮も。

悟らせる気なぞ、まるでなかった。








大広間での、宴。

正妃を迎えた祝いの宴に相応しく、かつてないほど華やかで、客人も多く。

黎翔への献杯は絶えず。

正妃への祝辞も途絶えることなく続く。


笑顔を浮かべ、一つ一つに心を込めて礼を尽くす、夕鈴。

珍しく微笑らしきものを湛え、杯を受ける黎翔。

いつもと同じ表情で、傍らに立つ李順。

面を伏せた、侍官姿の浩大。


穏やかに華やかに、宴は進む。



「________この度のご婚儀、誠に慶ばしく・・・」


玉禮が、進み出る。


「翠国王太子、玉禮さまにございます。」


なんの躊躇いもなく、李順が口を添える。


__________この側近、これだけの客の顔と名前を全て覚えているのか。


飄々とした表情の李順に、玉環は舌を巻き。


__________頼みますよ、叔父上。


祈るように願う。


先ほどの呆けたような表情とは打って変り、穏やかな微笑を浮かべた玉禮は。


「・・・実は、近々、私も妃を迎える事になりまして・・・」


とんでもない事を言い出した。


叔父上、妃って、だれ?!

心中で焦りまくる玉環に、玉禮は笑顔を向ける。


・・・・・ああ、もう!

盛大に悪態をつきながらも、合わせるしか道はなく。


「・・・はい。近々王太子さまはご正室をお迎えいたします・・・その際は、是非、ご来臨を賜りたく・・・」


どうとでもなれ。


玉環は、開き直った。


「_________ほう、それはめでたい。」

「おめでとうございます。」


無難な言葉を返す国王夫婦を横目で見ながら。

李順は、じっと、玉禮を見つめていた。



2013_07
07
(Sun)20:14

こひすてふ 2

ふふ。

まだ2話目だというのに、早くも迷走気味です。

書きたい事を、書いております。


ご容赦願います!←




【設定・未来】
【「ものやおもふと」のその後のお話】
【まだでませんが、オリキャラでます!】
【捏造ありまくりです。】




《こひすてふ 2》






「国王陛下。お妃様。」


跪拝した李順が、準備が整った事を告げ。


儀式が、始まる。


近隣国から招かれた、王族、諸侯。

国内の貴族達や、将軍達。


正妃の美貌に息を呑み。

国王の威厳に身を強張らせ。


_____________粛々と、儀式は進む。






・・・・長かった。


李順は思う。

逃がすはずだった兎に心を奪われた、陛下。

手放せるはずなどないのに、無理に手放して。

正気を失う寸前で、ようやく踏みとどまって。

『欲しい。』

そんな簡単なことだったのに。



・・・・ああ、もうすぐ儀式が終わります。


陛下。

夕鈴殿、いえ、正妃様。


おめでとうございます。


これから、先も。

御仕え申し上げましょう。

この身の全てを、捧げて。


___________生涯。




涼やかな鐘が鳴り響き。

儀式が、終わった。












「正妃様、気を抜かないっ!」


「はいっ!」


儀礼殿から王宮の自室に移り、宴までの小休止の時間。


これ以上なく飾り立てられた夕鈴は、衣装を脱がされ、軽い部屋着に着替え。

ようやく人心地がついていた。


「まあ、お疲れなのは分かります。ですが、誰が覗かぬとも限りません!最低限の気遣いはなさるように。」


「はいっ!」


侍女が淹れた茶を飲み、少しほっとした表情を浮かべた夕鈴を、微笑ましく見やり。

李順は、これからの予定の再確認を始める。


「ほどなく、陛下がこちらにお越しになります。正妃様は、お召し替えをお済ませください。私が呼ぶまで、こちらでお待ちを。後、宴の席へご案内致します・・・」


夕鈴は真剣な面持ちで、耳を傾け。


侍女たちは微笑を浮かべ、衣装替えの仕度を進めた。







「____________夕鈴、待たせたな。」


李順が退出し、ほどなくして姿を現した黎翔は、宴用のゆったりとした衣装を纏い、満面の笑みを浮かべ。


「宴が終われば、もう今日は休めるから・・・・・。ゆっくりと、一緒に______ね?」


夕鈴を抱き寄せ、囁く。


「っ!もう、何を仰るんですかっ!」


耳まで真っ赤になって、わたわたと暴れる夕鈴を、嬉しげに見やり。


「__________正妃の着替えを。」


侍女に命じた。





さらさらと、心地よい衣擦れの音が耳に優しい。


「・・・・。」


困ったように眉根を寄せ、黎翔は微笑する。


しゅっ、と帯の締まる音。

さらり、と、衣が擦れる音。

ちりん、と、簪が揺れる音。


「・・・・ちょっとだけ。」


気配を消し、音もなく立ち上がり。

衣裳部屋の扉を少しだけ開くと。


そこには。


項をかきあげられ、襟元を肌蹴られた、夕鈴。


「________っ!!」


予想外の光景に、黎翔の頬が赤く染まり、ばっ、と、手で口元を隠す。


・・・・・しまった。もう着付けは終わっているとばかり・・・・


後悔したが、遅く。

目は夕鈴の首筋に、項に、吸い寄せられて動かない。


_________どうしよう。


込み上げてくる何かを、どうにかするために。


黎翔は、全力を尽くした。



こひすてふ 3 へ
2013_07
07
(Sun)10:51

こひすてふ 1

完結した、「ものやおもふと」シリーズ(いつの間にかシリーズ化)ですが。


せっかくの歌合せ。


「こひすてふ」も書かないと!とか、勝手に思いまして。


書き始めてしまいました。


捏造の塊にも程がある内容です。笑

そして、お話しがどこへ向っているのか、私にも分からなくなってきました。←



もし宜しければ♪



【設定・未来】
【「ものやおもふと」のその後のお話】
【まだでませんが、オリキャラでます!】
【捏造ありまくりです。】




《こひすてふ 1》






夏が終わり、秋が深まりを見せる頃。

白陽国は、常になく華やいだ雰囲気に包まれつつあった。

御成婚。

国王・珀黎翔が、正妃を迎えるのである。

数ヶ月前、国王の唯一の妃が後宮を去った、と、王都に噂が流れ。

人々はなにとはなしに、悲しいような、寂しいような心持ちを抱いた。


自国の王。

冷酷非情な狼陛下には_______妃も居つかぬ。

そんな、殺伐とした空気が漂っていた時、

『国王御成婚』を知らせる立て札が王宮の各門前に立てられ。

人々は、王にようやく巡ってきた『春』を、心から寿いだ。










今日は、成婚式。


「__________父さん、青慎。」


これ以上なく美麗に、艶やかに仕上げられた夕鈴の姿は、神々しいほどに、美しく。

侍官の衣装を身につけた岩圭と青慎は、言葉をなくす。


「父さん、お世話に、なりました。」

「・・・・幸せに、なるんだぞ?」


「青慎、科挙、頑張るのよ?_______『ここ』で、待ってるから。」

「今まで、ありがとう。姉さん。・・・僕の事は、心配しないで。もう、大丈夫だから。」


少年から青年の顔つきに変わりつつある、最愛の弟に抱きつこうとした夕鈴だったが、長い裳裾の衣装が邪魔をして、動けず。


「・・・くっ・・・衣装が重くて、う、動きづらい・・・・!!」


諦めたように、笑い。

その笑顔につられる様に、岩圭と青慎も、笑顔になる。



_____________なあ、母さん。見てるか?



胸のうちで呟いた岩圭が、窓から見える空を見上げたとき。



「・・・・邪魔をしてよいか?」


婚礼の衣装を纏った、黎翔が現れ。


刻限が来たことを、告げる。


そして、二人に向き直った黎翔は、跪き。

衣装が汚れる、と、慌てる夕鈴たちを手で制し。


「_________お義父さん、青慎くん。」


「は、はい。」


「あなた方の、大切なお嬢さんと、お姉さんを。」


真摯な瞳で、口を開く。


「私は、不幸にするかもしれない。」


「陛下っ!」


声を上げた夕鈴に、黎翔は寂しげな微笑を向け。


「お二人に・・・嘘は言えないよ、夕鈴。」


「っ・・・」


「国王として、苦渋の決断を迫られる事があるかもしれない。戦場で命を落とすかもしれない。」


「国王陛下・・・・」


「・・・それでも。私には、彼女が必要です。」


「・・・・。」


「誰よりも愛しくて、何よりも、大切な・・・彼女がいなくては、私は、息すら、できない。」


頭を垂れ、黎翔は許しを請う。


岩圭は、そんな黎翔をじっと見下ろし。

陽だまりのような、笑顔を浮かべ。


「_______国王陛下。私の娘は、強い。」


手を差し伸べ、立ち上がらせる。


「自分の幸せは、自分で掴む。_______そういう娘です。」


なあ、母さん。


「ですから・・・・大丈夫。貴方のその心が、娘の力になりますから。」


おまえにそっくりだよ、夕鈴は。


だから。


夕鈴なら、大丈夫だ。


そうだよな?



____________なあ。おまえ。




岩圭の心の中で。

最愛の妻が、にっこりと、笑った。



こひすてふ 2 へ
2000_07
10
(Mon)15:19

「こひすてふ」おまけ「あなたに」・続

「こひすてふ」おまけ「あなたに」・続

*年齢制限ありです!大人の方のみ、ご覧下さいませ。









「ねえ、夕鈴・・・・もう一回。」

「っ!だ、だめですっ!」

「ええー。」


今ではもう、誰も呼ぶことのない、僕の名。


『黎翔』

僕を呼ぶ、母の声。



『黎翔』

僕を呼ぶ、父の声。


_________思い出すだけで、胸が潰れそうに苦しくなる。


もう慣れたはずの、痛み。



でも。



『れいしょうさま・・・・』

夕鈴が紡ぐ、僕の『名』は。


この上なく、涼やかで。

この上なく、甘やかに。


僕の耳を、喜ばせる。




「___________ねえ、夕鈴。・・・・もう一回・・・・」


呼んで?





呼んで?


耳元で、陛下が囁く。


涼やかに。

甘やかに。


低くて艶やかな声が、私の名を紡ぎ。

腰の奥のほうが、ずくんと疼く。


「・・・・・んっ・・・・」


思わず肩をすくめ、身を捩ると。


貴方は嬉しげに笑い、私の首筋に顔を埋め。


「・・・・夕鈴、いい匂い・・・・」


甘えるように、擦り寄る。



さらさらの黒髪が、耳の辺りをくすぐる。


「はぁっ・・・・夕鈴・・・・甘くて・・・・・柔らかくて・・・・」


熱い吐息が、私を煽る。


「・・・・・ん・・・ふっ・・・・ぅあっ・・・・・んっ」


知らず、息が上がる。


「ゆう、りん・・・ふ、ぅっ・・・・あまい・・・」


いつになく息を乱し、私を味わう貴方。



嬉しい。

私が、貴方を悦ばせているのが、嬉しい。



「___________もっと・・・」


もっと、悦んで?


「ゆ、う」


貴方の唇を、ちゅっ、と塞ぎ。

手を取り、指先に口付ける。


ごつごつして、少し硬くて。

私の頬をそっと撫でてくれる、とっても優しい、陛下の手。


「・・・・んっ・・・・・んぅ・・・」


掌から指先までを、唇で味わい。

そのまま二の腕まで、舌を這わせ、貴方を味わう。

片手で胸から腹までを撫で下ろし。

熱く反り返った、陛下のそこを、きゅっ、と掴む。


「_________っくぅっ!」


びくり、と跳ねる、陛下の身体。


・・・・綺麗。

白い肌に、珠のような汗を浮かべ、しなやかに仰け反る、陛下。


「・・・・陛下、とっても、きれい・・・・」

「ゆうりん・・・・君は、何がしたい・・・?」


息の上がった陛下が、戸惑ったように私を見上げたから。


「__________陛下に、もっと・・・・悦んで、ほしいの・・・」


そういった、だけなのに。



目を見開き、にやりと笑った陛下は。


「___________そうか。」


言うや否や、私を捕らえた。






「__________あぁぁぁっ!あ、あ・・・・・っ!!」


夕鈴を、捕らえる。

脚を開かせ、膝立ちにし。

戸惑う君の下に、自分を滑り込ませ。


「・・・・いやぁぁっ!」

怯えたような嬌声を楽しみながら、花芽を舐め上げ、転がし。

指で花の入り口をくすぐり、くちゅくちゅと水音を立て。

震える腰を、押さえ込む。


「・・・・ああ・・・・・いい眺めだ・・・・・」

柔らかい花びらを味わいながら目を上げると、真っ白い、なだらかな腹が映る。

しどけなく仰け反る夕鈴。

美味しそうな赤い頂。

腰から手を離し、きゅっ、と摘み上げると、さらに麗しく夕鈴が鳴く。


「きゃぁぁぁっ!!!ん、やぁっ!あぁっ!」


花が指を挟みこむように絞り、蜜が滴る。


香る。

甘い夕鈴の香りで、自分が満たされるのを、感じる。

花芽を嬲る舌を休めず、指を増やす。

自分が笑んでいるのが、分かる。

さぞかし凶悪な顔をしていることだろう。


でも。


「・・・・もっと、もっと・・・・悦ばせてくれ・・・・・」


君が、悪い。


「っ!んあっ!いやぁっ!へいか、へいか!」

「なあに?夕鈴。」


僕の指の動きに合わせる様に腰を揺らし続ける君の手が、僕を掴んだ。


「____________くっ!」


びりびりと、背筋を突き抜ける、悦楽。

息を止め、堪えたのに、君の手が動き出し。

自分の腰の動きにあわせて、僕を扱く。


「・・・あ・・・・・あ・・・・へ、いか・・・・もっと・・・もっと・・・・」


悦んで?


耳朶を食まれながら、注がれる、夕鈴の吐息と囁きが。


・・・・手加減、は、無理だな。


理性を壊した。


「__________では、遠慮なく・・・悦ばせてもらうぞ?」


覚悟しろ。


僕は、最後の言葉を飲み込んで。


ゆっくりと、夕鈴を押し倒した。
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