2013_04
05
(Fri)20:15

夕花①

【設定・未来夫婦・お子さま全員&几鍔】

*オリキャラ(お子様達)でます。
*ほとんど、オリキャラと几鍔の未来話です。
*捏造しまくりです。


どうぞご注意下さい!

宜しいですか?

宜しいですね?(しつこい)




《夕花①》



『おとなしい女はこの世にいないのか』

・・・・そんなことを考えていたのはいつの頃だったか。





「おじさま!」

今日も笑顔で店にやってきた少女を見て、几鍔はため息をついく。

「あのなあ、桜花・・・」

慣れた手つきで掃除道具を取り出し、当たり前のように店先の掃除を始めた少女に、几鍔は何度目になるのかもう忘れた説教を始めた。

「仮にも皇女だろうが。やること沢山あるんだろ?・・・ほら、送ってってやるから、王宮へ帰れ。」

頭をガシガシと掻き毟りながら、困り顔の几鍔。

くるっと振り返った桜花は、極上の笑顔を几鍔に向け、言い放った。

「あら、こちらでお手伝いさせて頂くのも立派な務めですのよ?庶民の暮らしを知りなさい、というのがお母様の口癖ですもの。」

上品に手の甲を口元に寄せて鈴のような声で笑う桜花は・・・・

_______どう贔屓目に見ても庶民には見えねえ・・・

几鍔は諦めの表情で、今日港に着く荷の確認を始めた。



「今日も来てくれたのかい!____『夕花』。今日はちょっと大切な取引先と商談があるんだ。ちょうどいいから一緒に来とくれ。」

おばば様はご機嫌だ。

「あのなぁ、言っても無駄だとは思うがよ・・・つき合わすなよ・・・・」

がっくりと項垂れる几鍔とは対照的に、『夕花=桜花』はニコニコとおばば様に従って店を出た。









「おはようございます、陛下。」

黎翔と皇子達を迎えにやってきた李順は、頭を垂れて入室する。

年度替り当初の忙しさは目が回るようだ。
李順ですら見なかったことにしたいほど、王印待ちの書簡が、緊急案件が、議案が、山積みである。

「お三方とも、今日は本気で取り掛かられないと、明日になっても後宮へお帰りになる事はかないませ」

口上と共にすっと頭を上げた李順の視界に、信じがたい光景が映った。


・・・伊達眼鏡をかけた『李翔』が、怒りの形相の夕鈴に首根っこを掴まれている。

今まさに取り押さえた、取り押さえられた、といった様相を呈している二人の周りには、二人の皇子、清翔・明翔の衣服が投げ捨てられており、肝心の中身はどこにも見当たらない。

「・・・李順、今朝は早いな・・・・」

気まずそうに、黎翔が呟く。

(_________見なかったことにしてもいいでしょうか)

珍しく現実逃避した李順の身体が、ふらりと傾いだ。

が、こんなことで倒れていては黎翔の側近など務まらぬ。

「_________陛下。三人分のご政務が控えております。」

「げ。」

「正妃様。大変恐縮ではございますが、監視・・・ああ、いえ、ご一緒に王宮へお越し願えますでしょうか?」

「もちろんですわ。李順殿。」

夕鈴は氷のような微笑を浮かべ、それはそれは優雅に、黎翔を王宮へ引っ立てた。



夕花②へ
2013_04
05
(Fri)21:06

夕花②

【設定・未来夫婦・お子さま全員&几鍔】

*オリキャラ(お子様達)でます。
*ほとんど、オリキャラと几鍔の未来話です。
*捏造しまくりです。


どうぞご注意下さい!

宜しいですか?

宜しいですね?(しつこい)




《夕花②》



おばば様は、桜花と下男の二人を供に連れ、取引先の商家へ向っていた。

桜花はおばば様のお供という体裁なので、王都の様子をそれとなく観察しながら、下男と並んでおばば様の半歩後ろを歩む。

道行く人々は桜花を見て一瞬歩みを止め、感嘆のため息をつくが、桜花は全く気にも留めず、薄く微笑みながら歩んでいた。


至極ご機嫌に杖を振り回しながら、ズンズン進むおばば様。

それとは気の毒なほど対照的なのが、付き従う下男だ。

傍から見てもわかるほど冷や汗をかいており、身体は震え、顔色は真っ青で、呼吸も浅い。

「あら、貴方お顔の色が・・・ほら、こんなに汗が。」

美しい眉をひそめて、桜花は立ち止まり、懐から絹の手巾を取り出す。

「ぎゃぁぁぁぁ!!」

皇女様に汗を拭われそうになった哀れな下男は、耐えかねて悲鳴を上げ。

「も、申し訳ございませんーーーーーーー!!!」

一目散に、逃げ帰った。


「・・・・・」

振り返ったおばば様は、遠ざかる下男を哀れみの眼差しで見送る。

「すまないね、夕花。ちょっと気の小さい男でねぇ、悪いやつじゃないんだ。」

「あら、気にしませんわ。おじさま以外の殿方は、皆様あのような反応をなさいましてよ?」

桜花はさりげなくおばば様の手をとり、自分の腕に捕まらせ。

「________では、お供いたしますわ。・・・お祖母様。」

にっこりと、誰かによく似た花のような笑顔を向けた。

そんな二人の後ろ姿は、仲の良い祖母と孫娘そのもので。


「・・・・・桜花・・・・・」
「あいつ、着々と・・・・」

深いため息をつき、頭巾姿の二人は護衛を続けるのだった。




______遡ること数日前。

後宮、国王家族の居間では。



「将を射んとすれば、まずは・・・ですわ。」

赤い瞳をきらりと光らせ、桜花が兄達を見回す。

「おまえ、本気か?桜花。」
「ええ。何度お尋ねになるおつもり?清翔お兄様。」
「・・・・」

黙り込んだ清翔から目を離し、桜花の視線が明翔に向けられた。

「相手はあの几のおじさまだぞ?俺、馬を射られてもあのおじさまは落ちないと思う。」
「なら、引き摺り下ろすまでですわ。」

笑顔で桜花は切り返す。

「怖っ!」
「何か仰いまして?明翔お兄様?」

冷気が漂い出した居間の空気を変えるように、清翔が口調を改めた。

「桜花。お前は王になるんだぞ?」
「ええ。お兄様方がお逃げになるから。」

ツンと桜花はそっぽを向く。

「勘違いするな。私達は逃げたわけではないぞ?」
「・・・・わかっておりますわ。」

少し言い過ぎた、と桜花は俯いて答えた。

「・・・父上は、荒んだこの国をその強大なお力で立て直された。」
「冷酷非情の狼陛下______だな。」

清翔の言葉を、明翔が引き取る。

「次の白陽国の王に必要なのは、父上のような王ではなく_______」
「『光』を象徴する王でなくてはならない・・・ですわね?」
「ああ、そうだ。」
「すまないな、桜花。」

黙り込んだ二人の兄を、桜花は優しい眼差しで見つめた。

そして、重い空気を消し去るように、桜花はことさらに明るい声を出す。

「大丈夫ですわ!私、5年で『崩御』致しますから!」
「だから、それ本気?」

明翔は呆れ顔だ。

「もう!本気ですわよ!」

いたって真面目な顔で、桜花は宣言する。

「・・・・では、兄上。5年後は兄上の番、ということで。」

目を逸らして、明翔は清翔に丸投げを試みる。

「ちょっと待て明翔。私は婿に行くから、無理。」

さも当然、といった様子で清翔は言い放つ。

「なんで婿入りするんですか。嫁いで頂けば宜しいでしょう?!そんな事ばっかり言ってるから、李家との話が進まないんですよ!」

明翔が噛み付く。

「うるさい。愛しい娘をこんな場所に引きずり込みたい男がどこにいる・・・って、いたか。父上が。・・・という訳で、明翔よろしく。」

「えー・・・・ほんとに一人であの政務全部やるんですか?」

心底うんざりした明翔を、

「「大丈夫、大丈夫!!」」

兄と妹は気軽に応援する。

「兄上、桜花。絶対他人事だと思ってるでしょう!!」

明翔の心の叫びが、むなしく響き渡った。



夕花③へ
2013_04
06
(Sat)10:40

夕花③

【設定・未来夫婦・お子さま全員&几鍔】

*オリキャラ(お子様達)でます。
*ほとんど、オリキャラと几鍔の未来話です。
*捏造しまくりです。


どうぞご注意下さい!

宜しいですか?

宜しいですね?(しつこい)




《夕花③》


_____________しくじった・・・。

山のような書簡を前に、黎翔は暗い顔で官吏を威嚇する。


『・・・来た!逃げろ、清翔、明翔!』

確かにそうは言ったが・・・・あいつら。

『では、お言葉に甘えて!』

二人がかりで僕を夕鈴に向って突き飛ばすなんて。
まあ、柔らかい胸に向って公然と飛び込めたからそれはいいけど。

・・・・じゃなくて。

「あいつら・・・・・」

ぼそっと独り言を零した黎翔の背を、背後に立つ夕鈴がつんつんと突く。

「お手が止まっておりましてよ?陛下?」

振り向かなくとも、心底怒ったときにだけ見せる氷の微笑が見えるようだ。

仕方ない、と、深くため息をつき・・・・黎翔は開き直った。

「______さて、我が妻よ。夫を手伝ってくれるな?」

くるりと振り向き、艶然と微笑むと、掬い上げるように夕鈴を抱き上げ、膝に乗せ。

「なっ!何を・・・!」

「・・・これくらいしてくれてもいいだろう?大人しくしないと・・・・」

もっとするよ?
そう囁きながら、黎翔は夕鈴の耳朶を甘く食む。

「んっ!」

思わず漏れた自分の声に、耳まで真っ赤になった夕鈴は、もう抗うすべもなく。


(・・・結局こうなりますか。正妃様、申し訳ございません。ですが、これも全て皇子様方のせいですので・・・まあ、半分は正妃様にも責任がございますね。)

視線をさらりと王へ向け、李順は常と変わらぬ冷静さで、新たな書簡の山を崩し始めた。

急に柔らかに変じた政務室の空気に、官吏たちも解凍されたように動き出す。

皆、口には出さないが、心で叫んでいた。

(正妃様、ありがとうございます!!!!)

官吏たちの感謝の念の籠った熱い視線を一身に受け、ますます身を縮ませた夕鈴は、我が子らを恨むのであった・・・・







__________だめだ、仕事にならねえ。

港で荷の確認をしながら、几鍔は苛立ちを隠せずにいた。

・・・桜花のやつ、ほいほい出歩きやがって。
自分がどれほど人目を引くか、わかってんのか?

「・・・・わかってるはず、ねえよな・・・」

自分の容姿に関して無自覚なのは、母譲り。

花が咲くような明るい笑顔と、生き生きとした瞳に、溌剌とした身のこなし。

そして、母にはなかった・・・・漂う気品と、隠せぬ色香。

「・・・・・やっぱり、だめだ。」

几鍔は帳簿を店の者にぽんっと投げ渡し________走り出した。




走りながら、几鍔は思う。

・・・昔っから、アイツはそうだった。

にこにこと俺の後ばかりついて回って。

いつもいつも、一生懸命で。自分の事は後回しで。

ああ、俺も大概お人よしだ。

守ってやらなきゃ、なんて思うなんてな。








目的の商家へ到着したおばば様と桜花は、奥の客間へ通された。

それなりに贅を凝らした作りの客間と、供される茶菓や、香炉から立ち上る高価な香。

それらをごく自然に受け流し、優雅に座す桜花を、商家の主はうっとりと見つめ。

その隙に、おばば様はどんどん商談を進める。

_______気付けば、主は契約書に印を押していた。



その様子を天井裏で盗み見るのは、あろうことかこの国の皇子達。

浩大仕込みの技術が、思わぬところで役に立つ。

「あのさ、兄上。」

「なに?明翔。」

「・・・こういうの、詐欺って言うんじゃなかったっけ?」

「問題ないだろ。桜花に見蕩れるアイツが悪い。」

「・・・兄上、心狭い。」

「父上よりはマシだ。」

「あの人と比べるのは問題あるよ。」

「・・・・おまえ、何気に酷いな。」

「そう?」


______いずれにせよ、一国の皇子がする行いではない事だけは、確かだ。








商談を終え、ほくほく顔のおばば様は、桜花の手に捕まりながら足取りも軽く帰路についた。


普段は手強い商売相手が、桜花のおかげでこちらの言いなり。
帰り際に、桜花の素性をそれとなく探られたが、知り合いの娘だよ、と軽くいなしておいた。

あの店主、『息子の嫁に・・・』とかブツブツ言ってたが、そんなことはこの私が許さないよ!
こっちは何年も待ってるんだよ。それだけの価値がある娘さ。
そう簡単に諦めやしないからね!


女手一つで几商店をここまで大きくした女傑の決意は揺るがない。



「夕花。今日はお前のおかげで本当にいい取引ができたよ。さて、礼は何がいいかねえ・・・?」

思わせぶりに、桜花を見上げる。

一瞬見つめあった二人は、同時に笑みを浮かべ。

「うふふ。それでしたら、是非お願いしたいことがございますわ。」

「・・・だろうね。立ち話もなんだから、昼餉でも食べながら話そうか。」

「嬉しい!温かいお食事なんて、久しぶりですわ!」

「「いいなぁ・・・・・」」
無邪気に喜ぶ桜花の背後に、いつのまにやら黒い影が二人。

「何を言ってるんだい、あんた達も一緒に食べさせてやるよ!今日はいい日だ。遠慮はいらないよ!」

「さすがおばば様!」
「私は、揚げたての餃子が食べたいです!」

清翔と明翔は重苦しい外套を脱ぎ、おばば様と桜花に続いてうきうきと飯店の扉を開けた。




夕花④へ
2013_04
07
(Sun)16:32

夕花④

【設定・未来夫婦・お子さま全員&几鍔】

*オリキャラ(お子様達)でます。
*ほとんど、オリキャラと几鍔の未来話です。
*捏造しまくりです。


どうぞご注意下さい!

宜しいですか?

宜しいですね?(しつこい)




《夕花④》



「どこいったんだ・・・・」

店に戻った几鍔は、桜花がまだ戻っていないことを知らされた。

「ったく、仕方ねえなぁ。」

心当たりを回るとするか。
几鍔は足早に店を出た。


商店が軒を並べる桜花が大好きな町並みを、几鍔はその姿を捜し求めながら歩く。


『おじさま!こちらのお店の干菓子、美味しかったのでもう一度求めても宜しいですか?』

つい先日の、桜花の笑顔が脳裏を掠める。

『おじちゃま、おうか、あんよがいたいの・・・。おんぶ!』

まだ幼い頃、甘えてすぐにおんぶや肩車をせがんだ、桜花。

『おじさま?おじさまはどうしてご結婚なさらないの?』
『あー・・・おとなしい女がいないから、だな。』
『・・・?おとなしい?』
『はは、桜花にはまだ早いか。』

あれは桜花が13の歳だったか。
そんな会話を交わし、しばらくした頃からか、桜花は急に大人びた。
そんな桜花を見て、そろそろ嫁入りの時期かと思ったことを、几鍔は鮮明に覚えている。

______なのに、桜花は嫁に行くどころか・・・・

「王様、だもんなぁ・・・」

苦笑した几鍔の耳に、聞きなれた声が飛び込んで来た。

「なんだって?!あと五年も?!」

__________おばば様・・・・

頭を抱えた几鍔は、飯店の扉を開け、想像通りの光景を目にした。






「「「美味しい!」」」

ほかほかと湯気が立ち上る卓に、清翔・明翔・桜花の笑顔が弾ける。

普段は毒見済みの冷め切った食事しか出来ない三人にとって、夕鈴の手作り以外には、温かい食事など望めない。

嬉しげに次々と箸をつける皇子達を、おばば様は愛しげに見つめていたが・・・。

食事も終盤に差し掛かったころ、切り出した。

「・・・で?夕花。お前の『お願い』はなんだい?」

「・・・っ」

お茶を口に運んでいた桜花は、一口茶を飲み込み、ゆっくりと息を吐き、姿勢を改めた。

「________おばば様。お願いがございます。」

「なんだい、そんなに改まって。」

「・・・・五年後、私を嫁にしてくださいませ。」

深々と頭を下げる桜花の両脇で、清翔と明翔も同様に頭を垂れる。

「_______なんだって?!あと五年も?!」

おばば様の大声が、響き渡った_________




「嫁に、ってのはこっちから頼みたいくらいさ!でも、あと五年も待てって言うのかい?!」

バンバンと卓を叩きながら怒鳴るおばば様の迫力に、飯店中の客があっけに取られる中、
几鍔は店の扉を開けた。

「・・・おい、ばあさん、ちょっとは静かに話せねえのかよ・・・」

ガタンと音を立てて、几鍔がおばば様の隣に腰を下ろすと、それが合図だったかのように、飯店の中はいつもの喧騒を取り戻した。

「あー・・・・悪かったな、ばあさんが騒いじまって。」

決まり悪げに几鍔は桜花達を見回し、苦笑いを浮かべる。

そして、食事があらかた済んでいるのを認めた几鍔は、出された茶を一口すすると、おもむろに席を立った。

「ほら。そろそろ帰らねえと、『お迎え』が来ちまうぞ?」

微妙な空気のまま、やたらと目立つ一行は余分に代金を払って店を出た。

「几鍔、あんたも大変よね~。」

彼らを見送ったのは、明玉の明るい声_______。








とぼとぼと歩く桜花と、清翔、明翔。

もうすぐ分かれ道。

叱られた小犬のような彼らに、おばば様は決まり悪げに声を掛けた。

「・・・大声出しちまって、すまなかったね。」

「いいえ・・・・無茶なことを申しました。申し訳ございません。」

俯いたまま立ち止まった桜花は、人目も気にせず頭を下げた。

「・・・・また、いつでもおいで。」

おばば様はくるりと背を向け、しっかりした足取りで去っていった。



去っていくおばば様の背に、頭を下げたままの、桜花。

「兄上っ!桜花が泣いてますよ!ど、どうしようっ!!」
「どうしようって、おまえ・・・・・どうしようか?!」

桜花の後ろには慌てふためく兄が二人。


ああ、ったく・・・こいつらはいつまでも・・・・

几鍔は手のかかる甥っ子を持った気分で、二人の肩に手を置いた。

「ほれ、妹をしっかり守って、連れて帰れ。」

「几鍔おじさん・・・・」

清翔がすがるような目で几鍔を見るが、それに気付かぬ振りをしたまま、几鍔は言葉を紡ぐ。

「ばあさんが迷惑かけたな。悪かった。」

「おじさん、桜花は・・・・」

何か言いかけた明翔の口を、几鍔の掌が押さえた。

「それ以上、なにも言うな。」

「_______っ!」

「俺は、几商店の主だ。それは動かせねえ。・・・いいか、夢は、夢のままだからいいんだ。手に入らねえから、いつまでも変わらない・・・そんな想いもある。」

「あ・・・・」

「だから、もう、帰れ・・・・桜花を宜しくな。」


桜花の肩を抱くように、とぼとぼと王宮へ向う三人の後姿を、几鍔はじっと見送ったのだった。




夕花⑤へ
2013_04
10
(Wed)21:49

夕花⑤

【設定・未来夫婦・お子さま全員&几鍔】

*オリキャラ(お子様達)でます。
*ほとんど、オリキャラと几鍔の未来話です。
*捏造しまくりです。
*几鍔が大好きな方、先に謝ります。ごめんなさい!!!


どうぞご注意下さい!

宜しいですか?

宜しいですね?(しつこい)




《夕花⑤》



「_________以上が即位式当日のおおよその流れでございます。」

「分かりました。準備は滞りなく?」

「はい、すべて予定通りに・・・」

深々と頭を下げ、退出していく官吏達。

彼らを睥睨する桜花の微笑には、凄みさえ感じられ、官吏達の顔色はすこぶる悪い。


「桜花、怖すぎ・・・」
「ああ、父上並みだな。」

余人には聞こえぬほどの囁きだが、桜花の耳は逃さない。

「お兄様方、何か?」

ぴきん、と音がしそうなほど、空気が冷えた。




桜花が下町でおばば様に『叱られて』から三ヶ月が過ぎ、即位式は五日後に控えていた。

あの日以来、桜花は笑わない。

ただひたすら、己を苛めるように政務に打ち込み、寝る間も惜しんで講義を受ける。

時折見せていた大輪の花のように明るい笑顔も、快活な仕草も、よくとおる笑い声も。

すべての『私』を、桜花は切り捨てた。

まるで、自分を氷の中に閉じ込めてしまったかのように。








桜花即位まであと4日。

下町・几商店では。

・・・・懐かしい諍いが展開されていた。


「このわからずや!!あの子のどこが不満なのよ?!」

「うるっせーな!そういう問題じゃねえんだよ!!」

「じゃあどういう問題よ?!あの子のあんな姿、見てられないわよ!バカ几鍔!!」

「バカってなあ、正妃が・・・。って、ちょっとまて。『あんな姿』ってのは・・・桜花がどうした?!」

顔色を変えた几鍔が、夕鈴に詰め寄ったかと思われた瞬間、大きな影が割って入る。

「・・・近すぎ。」

憮然とした表情の黎翔は、夕鈴を背後に庇い、底光りする紅い瞳が几鍔を睨む。

「なんだよ、国王と正妃が揃いも揃って・・・って、そんなことより!!」

几鍔は吠える。

「桜花が、どうした?!」



「______あの子、笑わないの。あの日から、ずっと。」

俯き加減に夕鈴は語りだした。

「・・・まるで、あのころの陛下みたいに。自分を押し殺して、誰も寄せ付けない。」

几鍔が息を呑んだ。

「あの子、全てを捨てて、『王』になろうとしているの。」

「________っ!」

ギリ、と几鍔の奥歯が嫌な音を立てた。

そんな几鍔を見つめていた黎翔は、夕鈴をそっと押しやり。

「__________頼む。」

几鍔に、頭を下げた。

黎翔の『頼み』に、几鍔の瞳が揺らぐ。

夕鈴はすがるような眼差しを几鍔に向けた。

・・・・・だが。

几鍔はまっすぐに黎翔を見つめ。

「・・・俺じゃ、あいつのためにならねえ。」

力強く、言い切った。





夜、後宮。国王一家の居間。


「父上、母上、いかがでしたか?」

「・・・だめだったわ・・・」

がっくりと肩を落とした夕鈴と、清翔・明翔。

「桜花・・・」

まだ執務室から帰ってこない桜花を思い、三人は顔を曇らせた。




「桜花、入るぞ。」

執務室で書簡に埋もれる桜花を、黎翔はじっと見つめた。

・・・・随分、やつれた。

「お父様、どうかなさいまして?」

油断なく光る紅い瞳。

ふっと黎翔の頬に笑みが浮かぶ。

「・・・?」

訝しげな桜花と、苦笑を浮かべる黎翔。

「ああ、すまないな。」

「・・・・?」

「いや、おまえは本当に私と似ている。」

「なにを今頃おっしゃって・・・」

「・・・くくっ。『自分ではお前の為にならない』そうだ。」

「?」

「本当に、おまえは私とそっくりだ・・・・何から何まで、な。愛する者まで、似通っている。」

くすくすと楽しげに黎翔は笑い、桜花は美しい眉をひそめる。

「何度言われたことか。『私では貴方のためになりません』。そのセリフを何度聞かされ、何度心を折られそうになったことか・・・今となっては懐かしささえ感じるがな。」

微苦笑を浮かべる父を、桜花は信じられないものを見るように見つめ。

口を開いた。

「・・・お父様そっくりの私。お父様同様に・・・手に入れても、宜しゅうございますか?」

見るもの全てを魅了する、妖しくも美しい天女は。

力強い光を瞳に宿し______王宮から姿を消した。





夕花⑥へ
2013_04
11
(Thu)10:23

夕花⑥

かなり楽しく書いておりましたこのお話し。

これでいったんお終いです。

おまけとか、別視点とか、そのうち書いちゃうかも・・・。

お付き合いいただきありがとうございました。ぺこり。



【設定・未来夫婦・お子さま全員&几鍔】
【ご注意!ほんのちょっとだけですが、大人風味です!!】

*オリキャラ(お子様達)でます。
*ほとんど、オリキャラと几鍔の未来話です。
*捏造しまくりです。


どうぞご注意下さい!

宜しいですか?

宜しいですね?(しつこい)




《夕花⑥》




桜花即位まであと3日となった、深夜。


几家の主の自室で、天井がガタンと音を立てた。


几家の造作は、かなり頑丈だ。

商売柄ということもあるが、王族がよく来訪するこの商家。

李順の懇願により、隠密の抜け道が作られ、隠し扉や隠し部屋など、様々な手を入れた。

・・・そして、几鍔の自室の天井裏には、外への抜け道が作ってある。



「____誰だ」

寝台の中から、誰何し。

暗闇を見通すような隻眼を光らせた几鍔は、ありえない気配を感じ取る。


「桜花、か?!」

思わず、声を上げた

「・・・・・。」

人影は、無言。

几鍔は常夜灯を引き寄せ、立ち上がる。


________ふわり。

それを待っていたかのように、柔らかい身体が几鍔の胸に飛び込んだ。

「_________っ!」

几鍔の理性を揺らがせる、甘い香りと、熱い吐息

・・・だが、几鍔の両手は動かない。


「・・・・おじさま・・・・おねがい・・・・」

「・・・っ!」

「おねがい・・・!五年後にお嫁に貰ってなんて、もう言わないから!おじさまに迷惑なんてかけないから!おじさまがお嫌なら、一度だけでいい・・・だから、お願い!私に、一度だけ、夢を・・・っ!」

「お、うか・・・」

几鍔の両手がそっと桜花の背に回された。

そして、優しく、包み込むように、細かく震える華奢な背を掻き抱く。

________昔守ってやった、あの生意気な幼馴染そっくりな華奢な身体。

・・・似ている。でも、似ているだけ。アイツとは全く違う、大切な、大切な、俺の。



______夢は夢のままで。

そうしておけば、こいつはいつまでも俺の中で鮮やかに咲き続ける。

散ることのない、桜のように。

俺じゃ、桜花のためにはならない。
そうわかっていたから。


・・・・だが。

几鍔は自分に問いかける。


この手を離して、俺は息が出来るのか?
この温もりを遠ざけて、俺は笑えるか?
この笑顔を見ることなく、俺は・・・・


「_________俺で、いいのか?」

几鍔の手に力がこもる。

「・・・後悔しないか」

今まで聞いた事のない几鍔の低く掠れた声に、桜花は喜びに身を震わせ、そっと頷く。

「五年なんて、あっという間だ。」

「おじさま・・・」

「俺はお前の為にはならねえが・・・全力で、守ってやる。」

「おじさ」

言いかけた桜花の唇を、几鍔の指先がそっと塞ぎ。

「夫をおじさん呼ばわりするヤツがいるかよ。」

優しく微笑む。

「・・・『あなた』?」

ことん、と首を傾げた桜花の唇は、それ以上言葉を紡げなかった。








桜花が幸せを噛み締めている頃。

月明かりの下、王宮へと歩む二つの影。

「・・・・いいの?陛下。」

「うるさい。話しかけるな、浩大。」

「・・・・ぶっ・・・くっ!」

「・・・・・死にたいようだな。」

この上なく不機嫌な黎翔をからかいながら、浩大は昔に思いをはせる。




________あの日、乱れた衣装を整えながら指先を微かに震わせていた、少女。

少女の身には大きすぎる衝撃を、自分の中に押し隠した、桜花。

・・・うん。よかった、ほんとに、よかった。

陛下には、お妃ちゃん。

お姫ちゃんには、あの男。

これで俺も少しは安心できる・・・・かな?


どことなく肩を落として歩く黎翔に従う浩大の足取りは、踊るように軽かった。








_________五年後。


下町。

「あなたっ!私も港へ参ります!!」

「っ!だめだ!何考えてんだ!!」

「商船が見たいのです。最新の船は、かなりの速度なのでしょう?お兄様にお話しして差し上げようと思って。」

「港で産気づいたらどうすんだ!!!」

「大丈夫ですわ。」

「ぜんっぜん、説得力がねえぞ?!」

頭を抱える几鍔と、にこやかに歩き出す『夕花』。

「・・・・曾孫が抱けるなんて、まるで夢のようだねえ・・・」

まだまだ元気なおばば様が、二人を見送る。

ぎゃいぎゃいと言い争いながら、几鍔と桜花は寄り添って歩く。

そんな二人を浩大が護衛し、楽しげにおばば様に手を振り。

今日も始まる、几家の日常。

几商店は、今日も・・・平和?