2014_09
01
(Mon)10:13

お妃様の失踪 side

こんにちは。
あさ、です。

昨日は受験生の長女に付き添っておりました。
長女が試験を受け終わるまでの三時間半。
保護者会などが開かれており、私も真面目にお話を伺いました。

受験って大変。

早くも逃避気味です。

真面目にお話を拝聴する中、思いついたSSです。
「お妃様の失踪」のサイドストーリーになります。









注意書きを致します。
こちらは「お妃様の失踪」(未来夫婦・お子様なし設定)のサイドストーリーになります。
《side2》にはオリキャラ(李順さんの奥さん・芙蓉ちゃん)が出ます。
全て私「あさ」の妄想の産物とご理解頂いた上でお進み下さいませ。




《side1》

「あのさー、」
「んなことたぁ、分かってる。」
「さすが、察しがいいね。」
「こっちだって毎度毎度、バカバカしくてやってられっかよ。」

夕刻。
台所から流れてくる香ばしい匂いに後ろ髪を引かれながら。
俺は几商店に向かった。

「お妃ちゃんがアンタを招いたって知れば・・・」
「ああ。あの焼きもち妬きの国王サマに悩まされるのはあいつだからな。」
「悪いね。」
「いいや。青慎におめでとうって言っといてくれよ。」
「了解。」

話はすぐに済んだ。
『家族水入らず』を邪魔するような招待客は要らないからな。
察しのいい男でよかった。

俺が護衛を外れたのは、ほんの少しの時間。

「お妃ちゃん?」

台所からは変わらずに良い匂いが漂っていたし。
日の傾きもほとんど変わってなかった。

でも。


「・・・・・でも、」
「夕鈴はいなかった、と、言う訳だな?」
「ハイ。」

ここは王宮、国王側近の私室。
殺風景なほどすっきりした室内。
そこに充満するのは怒気交じりの殺気。

俺は目下、尋問中だ。
いや、するほうじゃなくて。
される方、な?

それにしても。
夏なのに息が凍る。
おかしいなぁ。

「せっかくの『家族水入らず』を陛下に楽しんで頂こうと思った俺の気持ち、すこしは」
「汲めぬ、な。」

ああ、全然効果なし。
こんな事なら大人しくお妃ちゃんの困り顔を拝んでおくんだった。
せっかく準備した祝いの食卓。
弟くんを溺愛してるお妃ちゃんが心安らかに楽しめる様にって思ったんだけど。

裏目に出たか。

「・・・浩大。」

室温がさらに下がる。
痛いほどの殺気が降り注ぐ。

そりゃ、そうだ。

四日も真っ暗闇の土牢に繋がれたお妃ちゃんの痛みは、酷い。
じいちゃんが診てるけど、身体より心の方が傷ついてる。

「・・・もうすぐ、じいちゃんの診察が終わるからさ、早く済ませてお妃ちゃんとこ行ってやんなよ、陛下。」

ありがとう、お妃ちゃん。
俺、苦しまずに逝けそうだ。

「言われずとも、そうする。」

聞き慣れた金属音が俺を目指す。
さすが、狼陛下。
迷いなんてねえな。

最期は、俺らしく。

_______笑おう。


そう思った時。

「・・・なぜだ。」

真っ直ぐに俺を目指していた刃が止まった。

「なぜだ、李順。」
「どうこもこうもありません。」

陛下の腕を掴む、李順さん。
なんか知らねえけど、すげえ怒ってて。

「これしきの事でいちいち護衛を始末していたらキリがないでしょう?!」

懐から書付を取り出して、陛下に示した。

「ご覧下さい!陛下が頼まれもしないのに注文した正妃様の衣装や装飾品!!この経費!!」
「・・・いや、それはほら、なんていうか。」
「この上さらに、直属の隠密を新たに準備する費用をどこから捻出なさるおつもりですか?!」
「浩大が消えればその分で・・・」
「浩大の穴を埋めるための経費は、彼の俸禄如きでは足りませんよ。」
「・・・・。」
「今回は浩大にも反省すべき点が多々あります。」

くるくると書付を巻き戻しながら、李順さんがため息交じりに言う。

「・・・ですが一人分の経費で三人分の働きを賄える貴重な人材を始末するほどの失策ではございませんでしょう?」

三人分、って。
俺の給料、ほかの隠密仲間と大して変わんねえんだけど。
なんかすっげえ損してないか、俺。

「だが、夕鈴は酷く傷ついた。」

まだ不貞腐れてる、陛下。
でも、殺気は消えてる。

ふっ、と微笑んだ李順さんが。

「妻の傷心を癒すのは夫の大切な役目ですよ、陛下。」

殺し文句を言ってくれて。

陛下は颯爽と自室へ戻って行った。









《side2》(*オリキャラ注意*)



「正妃様のご様子は?」
「まだ起き上がれないみたいだよ。」

浩大が命拾いした日の、翌朝。
窓辺にぶら下がる浩大から返ってきた返事は、予想通りのもの。
一晩中陛下に『癒されて』いた正妃様は、きっと午後までお休みだろう。

「正妃様のご予定を組み直さなくては・・・」
「側近さんは大変だね。」
「まあ、その分陛下のご予定を少し詰めさせて頂きますよ。」

今宵も正妃様を『癒す』ため、陛下はきっと精力的に政務をこなされるだろう。
多少の無理は問題ない。

数日間に渡った、正妃の不在。
政務室の面々には釘を刺して置きましたが、あらぬ噂が広まらぬとも限りません。
早々にご復帰願い、夫婦仲の良さを皆に示して頂かなくては。

「あー・・・李順さん。」

業務に取り掛かっていた私の目の前に。

「これ、昨日の御礼。」

ころりとした感じの小さな壺が置かれる。

「なんですか?」
「いや、ほら。命拾いしたからさ、その御礼。」
「無駄を省いただけなんですがね・・・・ところでこれは何ですか?」
「・・・酷っ。」

けたけたと笑った浩大は。

「陛下が気に入った『薬』だよ。老師特製塗り薬。」

あっという間に窓から消え。

「・・・・こんな怪しいもの、どうしろと・・・」

迂闊なところに置いておくよりは、と。
あくまで、あくまで、そう思った私は。
その不審物を、懐にしまい。
当然の成り行きで、それを自邸に持ち帰った。



______だから。


「お帰りなさいませ、お兄様!」
「変わりはありませんでしたか、芙蓉。」

華やかな笑顔で私を迎える芙蓉。
匂い立つような艶が見え隠れして。

懐の壺が重さを増す。

「今日はお早いお帰りでしたのね。嬉しい!」
「ええ、陛下が精力的に政務をこなされて・・・」

ふわりふわりと心地よく纏わりつきながら。
芙蓉はその嫋やかな手で、私の衣装を着替えさせる。

「あら?この壺は・・・?」

懐から出てきた、壺。
そう言ってそれに触れた芙蓉の指先に見受けられた少しの傷。

「その指は?」
「あ、刺繍針を、少し。」

恥ずかしそうに指先を隠した芙蓉の愛らしい仕草。

「・・・どれ、見せてごらんなさい。」
「はい。」

素直に差し出されたその指先に、薬を塗ってやったのは。

「・・・ふっ、んぁっ・・・・」
「傷に沁みますか?」

念のため、腕にまで塗り広げてやったのは。

「い、いいえ・・・ん、くっ・・・あ・・・」
「・・・いい声です。」

決して、私のせいではありません。

そうですよね?