2014_08
27
(Wed)13:44

お妃様の失踪 前編

こんにちは。
あさ、です。

思い悩んだ末、謹慎しようと思いました。
が、書くのを辞めるのが辛くて。
書きたいよう、書きたいよう、としくしく泣きながら迷子になってました。

三晩ほど寝ずに探したら、ようやく帰り道が見つかりました。
「こっちだよ」と、教えて貰ったんですけどね。
やっとおうちに帰って来られました。

これからも、楽しく書こうと思います。
お騒がせ致しまして、本当に申し訳ございませんでした。

この話は、これでおしまいです。


さて。

一気に書いたので色々とおかしいと思います。
誤字脱字も多いかと・・・。見直す時間がなくてですね。←言い訳
広いお心でお進み下さいませ。

尚、私の妄想から生まれたSSです。
陛下も夕鈴も浩大も全部全部、原作とは違います
おまけに調べ物とかも一切しておりません。
細かい事は抜きで!
是非、抜きでお願いします(笑)







【設定 未来夫婦 お子様なし】
《お妃様の失踪 前編》



「・・・暗い。」

ふぅ、と吐いた息は湿度の高い闇に溶け。

「だれかー!誰かいないのー?!」

高く張り上げた声は耳障りな残響となって土壁に吸い込まれる。

「もう何日経ったのかしら。」

ざりん、と不愉快な音を立てる足枷に手を触れて。

「・・・陛下。」

夕鈴は漆黒の闇に包まれた天井を見上げた。







「まだか。」

数日前に正妃が体調を崩したのをきっかけに、季節が変わった政務室。

「・・・まだ、です。」

盛夏から真冬へ。
反転した気候は官吏たちの体力を奪い。
水月は早々に心の風邪をひき込んだ。
柳方淵ですら、顔色が悪い。

「遅い。」

ぱきん、と木の割れる音がし。
李順は黙って新たな筆を主の机上に置く。

(_____正妃様っ!!)

際限を知らず下がり続ける室温に凍り付く官吏たちの声にならない叫び声。
黎翔の身動き一つで冷気が生まれ空間が凍る。

「資料が、足りぬ・・・・」
「申し訳ございませんっ!!」

狼陛下の呟きに官吏の一人が引き攣った声を上げた時。

「_____陛下、こちらの書簡は少々急ぎでございまして・・・・」

いつの間にか跪いていた見慣れぬ侍官が何かを差し出した。

「っ!」

がたん、と立ち上がった黎翔の纏う空気が劣悪なものに変わり。

(もう、だめだ!!)

官吏たちの無音の叫びが木霊する。

(正妃様ーーー!!)

「李順。」
「承知しました。休憩に致しましょう。皆下がりなさい。」

(助かった!!!)

情況の胡乱さより、己の命。
事情を詮索した途端に比喩ではなく首が飛ぶ。

這う這うの体で逃げ出した官吏たちの後ろから、狼陛下の側近の声。

「______宜しいですか、皆さん。正妃様は・・・」

「「「はいっ!お風邪でいらっしゃいます!!!」」」

「よいお返事です。」

(((命が惜しいですからっ!!)))

明日から水月殿を見習って心の風邪を引こう。
約一名を除きそう決心した彼らは、ふらつきながらも素早く走り去った。








「なんでこんな事になっちゃったのかしら。」

何も見えない天井を見つめて夕鈴は記憶を辿った。

そう。
あれは。

「青慎の昇進祝いに、って」

ご馳走を作って驚かせようとして。

『僕の分も作ってね、後で行くから!』

快く送り出してくれた陛下の笑顔がやっぱり素敵で・・・・って、違うわ。
そこじゃなくて。
いや、陛下はいつもかっこいいけど。

「あれこれ食材を買い回って、几鍔に見つかって」

『おい、そんなに買ったら持ちきれねえだろ?!ほら、こっち寄越せ!』

親切に素直に甘えることにして。
でも金貸しに借りを作るのはいやだから、お祝いの夕餉に招いて。

『じゃ、あとでな。』

台所まで荷物を運んでくれた几鍔を見送って。

『お妃ちゃん、俺の分もある?』
『当たり前じゃない。だからつまみ食い禁止よ?』
『お、ありがと!』

それで、しばらくして料理ができて。
浩大に味見をしてもらおうと思って。

『浩大ー?浩大?』

外に出た。
でも、屋根を見上げても、庭を見渡しても、誰もいなくて。

何か用でもできたのかな、って思って。
勝手口を開けた。

そこまでは、はっきり覚えてる。
でも、そのあとは。

『こいつがあいつの女か?』
『連れてけ』

変な臭いがする布を顔に押し付けられて。

_____せっかく作ったのに。青慎に食べてもらいたかったな。

そう思ったのが、最後。

「・・・・私、何にもおかしな事してないわよね。」

いつも陛下に怒られて、お・・・お・・・お仕置き、されるからっ!!
最近は危ない事に首を突っ込まないよう気を付けてるしっ。
普通にお買い物して、普通にお料理してっ。
うん。大丈夫。
何も悪い事してない。

「大丈夫・・・よね?きっと。」

きっと、大丈夫だ。

でも。

「・・・おい、生きてるか?女。」
「生きてるに決まってるでしょ。早く出しなさいよ、私が何したって言うのよ?」
「まあ、待て。あと少しで出してやるよ・・・・楽しみにしてろよ。いいとこに売ってやるから。」

この、状況。

_____陛下。

助けて。

「・・・売る、って?」
「察しはつくだろ?安心しろよ、少し遠いが普通の娼館に渡りつけてやるから。」
「なっ!冗談じゃないわよ、なんでそんな!」
「恨むんならお前の男を恨めよ・・・それとも。」
「なによっ!」
「俺達の方が、好みか?」
「っ!!」

背を這い上る嫌悪感に言葉を失った夕鈴を嘲笑いながら。

「じゃ、明日な。」

男の足音は遠ざかり。


「_____陛下、陛下・・・」

もう、怒ってくれていいから。
お願い、陛下。

「助けて・・・」

飲み込まれるような闇の中。
夕鈴は成す術もなく、膝を抱えた。









「ごめん、遅くなった!!」

人払いが済むと同時に侍官の服を脱ぎ捨て走り出した浩大。
無言でそれに続き、李順が投げて寄越した眼鏡と外套を身に纏う。

「運河沿いの土蔵。以前から人身売買の噂がある商家の倉だ。」
「なぜ夕鈴がそんなところに?」

馬に飛び乗り、腹を蹴る。
同時に隠し門の扉が開き、飛び出した。

「几商店の跡取り、いるだろ。あいつの女だと思われたらしいよ。」
「金貸しの?」
「そう。」

街中を疾駆する訳にはいかず、道を選びながら土蔵の立ち並ぶ運河沿いを目指す。

「仲良さそうに並んで商店街を買い物して回ってる姿を見て、そう思った、って。」
「・・・ほう。仲良さげに、な・・・」

低い呟きが外気を凍らせる前に。

「着いた。」

目的の土蔵が近づいてきた。



「お妃ちゃんは、地下。」
「そうか。」

つかつかと扉へ向かう主を隠密は慌てて止める。

「ちょ、待って待って陛下!!」
「なぜ止める。」
「数が多いんだって!でなきゃ俺が遅れを取るはずーーーっ!!」

己の失言に気づいた時にはすでに遅く。
浩大の眼前に鮮やかな怒気を宿した紅い瞳が迫る。

「そうだな。お前が付いていながらこの様とは・・・」
「っ!」
「・・・『優秀』が聞いてあきれるな・・・そうだろう?」
「そ、その話はあとで、あとでっ!明日の朝出る船にお妃ちゃんが乗るからっ!その後にっ!!」
「ほう。明日の朝までは生かしておいてやろう。」
「えっと・・・誰を、って聞いても」
「聞きたいか?」
「イイエ、ケッコウデス。」

______夜が明けなければいいのに。

浩大の脳裏を隠密にあるまじき非現実的な考えが過った。
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2014_08
27
(Wed)15:25

お妃様の失踪 後編

「お妃様の失踪」後編です。

再度注意書きをさせて頂きます。

一気に書いたので色々とおかしいと思います。
誤字脱字も多いかと・・・。見直す時間がなくてですね。←言い訳
広いお心でお進み下さいませ。

尚、私の妄想から生まれたSSです。
陛下も夕鈴も浩大も全部全部、原作とは違います
おまけに調べ物とかも一切しておりません。
細かい事は抜きで!
是非、抜きでお願いします(笑)











【設定 未来夫婦 お子様なし】
《お妃様の失踪 後編》




翌朝早くに、土蔵の扉が開いた。

「少しは大人しくしろよ。」
「いやっ!目隠し取ってよ!」

後ろ手に縛られ、目隠しをされた夕鈴が引き出される。

「四日もお日様見てねえんだから、急に目え開けたら潰れるぞ?」
「っ!」

親切なのかどうか判別しかねる忠告。

「さっさと歩け。往生際が悪い女だ。」
「離してっ!!」
「元気な女だな。」

あきれ果てたように呟いた男に、軽々と担ぎ上げられた。

「いい身体してんな。高く売ってやるよ。」
「触んないでよ、バカっ!!」

暴れる夕鈴の裾から覗く脚。
柔らかく輝く白い脹脛に、男たちが下卑た笑みを浮かべた。

「もっと暴れろよ、目の保養だ。」
「や、やだっ!!」

ひらひらとなびく裾を持ち上げる男達。
悲鳴を上げる夕鈴。

そして。
物陰からそれを見つめる二つの影。

「あの・・・陛下、一人は残し・・・」
「・・・・。」
「いえ、何でもありません。」
「・・・・行くぞ。」
「はい。」

ああ、俺、死ぬ。
短い人生だったな。

「・・・もっと美味いもん食いたかった。」
「もう十分だろう?」

そう言った黎翔の頬に浮かぶ笑みは。
浩大が今までに見たどの笑顔にも勝る美しさで。

「うわっ、なんだこいつ?!」
「彼女を、離せ・・・」

遺憾なく発揮された黎翔の剣技を前に、場は一瞬で鎮まった。







「あ、の・・・陛下?」
「うん、分かってる。」

累々と積み重なる男達の身体を踏みつけながら、黎翔は夕鈴を抱えて馬に跨った。

「青慎くんのお祝い、まだしてないよね。」
「・・・ありがとう、ございます。」

抱きかかえた夕鈴の髪に残る、土の香り。
なんとか外そうとしたのだろう足枷の跡が痛々しく擦り切れて。
指先にも血が見受けられる。

「目隠し外すけど、まだ目は開けちゃだめだよ。」

小さく頷いた夕鈴の目から覆いが外され、瞼の裏に感じる光に眉間に皺が寄る。

「大丈夫?夕鈴。」
「・・・はい、ちょっとびっくりしただけです。」
「あのさ、やっぱり一度王宮に帰って老師に診てもらおう?僕、心配だよ。」

小犬の声。

「・・・はい。これじゃ、お料理どころじゃないですものね。」
「ふふ、今日は素直だね、夕鈴。」

笑みを含んだ夫の声に。

「だ、だって・・・心配かけ、て・・・」

瞑ったままの目から涙が落ちる。

「うん、心配した。いっぱいいっぱい、心配した。」
「わ、わたし、も、こわ、怖かった・・・!」

緊張の糸が切れたのだろう、夕鈴の身体が小刻みに震えだし。

「し、心配かけ、て・・・っ、ごめっ・・・」

しゃくり上げながら黎翔の胸に縋り付いた。







二週間後。

「ねえ、どんなふうに買い物してたの?ねえってば!!」
「だから、普通にですっ!!!」

章安区。
夕暮れ前の賑やかな商店街の喧騒を、さらに賑やかにするのは。

「あ、ゆーりん、あれも!韮の入ったお饅頭もっ!!」
「はいはい、分かってますよ。」
「それと、桃も食べたいな!夕鈴みたいに甘い匂いの!!」
「やめて下さいっ!こんなところでっ!!」
「えー、恥ずかしがらなくてもいいのに。」
「もうっ!!」

商店街名物、汀夕鈴の里帰り。

「相変わらずお似合いな夫婦だね、旦那さん!こっちの西瓜も持っていきなよ!」
「ありがとう、全部ちょうだ・・・」
「一個でいいですっ!!」

顔を真っ赤にして恥ずかしがって、怒って。
愛らしくこちらを睨み付ける妻に、黎翔は思う。

「これでもう、金貸し君の女だなんて思われないよね?」
「え?何ですか?」
「ううん、僕の奥さんは可愛いなー、って!ね、そうだよね、おばさん!」
「ああ、そうだね!白陽国一、可愛い奥さんだ!ほら、こっちの葉物も持って行きな!」
「うん、ありがとう、ぜんぶ・・・」
「一束でいいですっ!!」


青慎の昇進祝い。
今日の汀家の食卓には、きっと。
食べ切れないほどの幸せが並ぶ。







☆救出された夕鈴と陛下の閨。読みたい方お出ででしょうか。脚フェチ陛下を書いてみたいなぁ、と(笑)
2014_09
01
(Mon)10:13

お妃様の失踪 side

こんにちは。
あさ、です。

昨日は受験生の長女に付き添っておりました。
長女が試験を受け終わるまでの三時間半。
保護者会などが開かれており、私も真面目にお話を伺いました。

受験って大変。

早くも逃避気味です。

真面目にお話を拝聴する中、思いついたSSです。
「お妃様の失踪」のサイドストーリーになります。









注意書きを致します。
こちらは「お妃様の失踪」(未来夫婦・お子様なし設定)のサイドストーリーになります。
《side2》にはオリキャラ(李順さんの奥さん・芙蓉ちゃん)が出ます。
全て私「あさ」の妄想の産物とご理解頂いた上でお進み下さいませ。




《side1》

「あのさー、」
「んなことたぁ、分かってる。」
「さすが、察しがいいね。」
「こっちだって毎度毎度、バカバカしくてやってられっかよ。」

夕刻。
台所から流れてくる香ばしい匂いに後ろ髪を引かれながら。
俺は几商店に向かった。

「お妃ちゃんがアンタを招いたって知れば・・・」
「ああ。あの焼きもち妬きの国王サマに悩まされるのはあいつだからな。」
「悪いね。」
「いいや。青慎におめでとうって言っといてくれよ。」
「了解。」

話はすぐに済んだ。
『家族水入らず』を邪魔するような招待客は要らないからな。
察しのいい男でよかった。

俺が護衛を外れたのは、ほんの少しの時間。

「お妃ちゃん?」

台所からは変わらずに良い匂いが漂っていたし。
日の傾きもほとんど変わってなかった。

でも。


「・・・・・でも、」
「夕鈴はいなかった、と、言う訳だな?」
「ハイ。」

ここは王宮、国王側近の私室。
殺風景なほどすっきりした室内。
そこに充満するのは怒気交じりの殺気。

俺は目下、尋問中だ。
いや、するほうじゃなくて。
される方、な?

それにしても。
夏なのに息が凍る。
おかしいなぁ。

「せっかくの『家族水入らず』を陛下に楽しんで頂こうと思った俺の気持ち、すこしは」
「汲めぬ、な。」

ああ、全然効果なし。
こんな事なら大人しくお妃ちゃんの困り顔を拝んでおくんだった。
せっかく準備した祝いの食卓。
弟くんを溺愛してるお妃ちゃんが心安らかに楽しめる様にって思ったんだけど。

裏目に出たか。

「・・・浩大。」

室温がさらに下がる。
痛いほどの殺気が降り注ぐ。

そりゃ、そうだ。

四日も真っ暗闇の土牢に繋がれたお妃ちゃんの痛みは、酷い。
じいちゃんが診てるけど、身体より心の方が傷ついてる。

「・・・もうすぐ、じいちゃんの診察が終わるからさ、早く済ませてお妃ちゃんとこ行ってやんなよ、陛下。」

ありがとう、お妃ちゃん。
俺、苦しまずに逝けそうだ。

「言われずとも、そうする。」

聞き慣れた金属音が俺を目指す。
さすが、狼陛下。
迷いなんてねえな。

最期は、俺らしく。

_______笑おう。


そう思った時。

「・・・なぜだ。」

真っ直ぐに俺を目指していた刃が止まった。

「なぜだ、李順。」
「どうこもこうもありません。」

陛下の腕を掴む、李順さん。
なんか知らねえけど、すげえ怒ってて。

「これしきの事でいちいち護衛を始末していたらキリがないでしょう?!」

懐から書付を取り出して、陛下に示した。

「ご覧下さい!陛下が頼まれもしないのに注文した正妃様の衣装や装飾品!!この経費!!」
「・・・いや、それはほら、なんていうか。」
「この上さらに、直属の隠密を新たに準備する費用をどこから捻出なさるおつもりですか?!」
「浩大が消えればその分で・・・」
「浩大の穴を埋めるための経費は、彼の俸禄如きでは足りませんよ。」
「・・・・。」
「今回は浩大にも反省すべき点が多々あります。」

くるくると書付を巻き戻しながら、李順さんがため息交じりに言う。

「・・・ですが一人分の経費で三人分の働きを賄える貴重な人材を始末するほどの失策ではございませんでしょう?」

三人分、って。
俺の給料、ほかの隠密仲間と大して変わんねえんだけど。
なんかすっげえ損してないか、俺。

「だが、夕鈴は酷く傷ついた。」

まだ不貞腐れてる、陛下。
でも、殺気は消えてる。

ふっ、と微笑んだ李順さんが。

「妻の傷心を癒すのは夫の大切な役目ですよ、陛下。」

殺し文句を言ってくれて。

陛下は颯爽と自室へ戻って行った。









《side2》(*オリキャラ注意*)



「正妃様のご様子は?」
「まだ起き上がれないみたいだよ。」

浩大が命拾いした日の、翌朝。
窓辺にぶら下がる浩大から返ってきた返事は、予想通りのもの。
一晩中陛下に『癒されて』いた正妃様は、きっと午後までお休みだろう。

「正妃様のご予定を組み直さなくては・・・」
「側近さんは大変だね。」
「まあ、その分陛下のご予定を少し詰めさせて頂きますよ。」

今宵も正妃様を『癒す』ため、陛下はきっと精力的に政務をこなされるだろう。
多少の無理は問題ない。

数日間に渡った、正妃の不在。
政務室の面々には釘を刺して置きましたが、あらぬ噂が広まらぬとも限りません。
早々にご復帰願い、夫婦仲の良さを皆に示して頂かなくては。

「あー・・・李順さん。」

業務に取り掛かっていた私の目の前に。

「これ、昨日の御礼。」

ころりとした感じの小さな壺が置かれる。

「なんですか?」
「いや、ほら。命拾いしたからさ、その御礼。」
「無駄を省いただけなんですがね・・・・ところでこれは何ですか?」
「・・・酷っ。」

けたけたと笑った浩大は。

「陛下が気に入った『薬』だよ。老師特製塗り薬。」

あっという間に窓から消え。

「・・・・こんな怪しいもの、どうしろと・・・」

迂闊なところに置いておくよりは、と。
あくまで、あくまで、そう思った私は。
その不審物を、懐にしまい。
当然の成り行きで、それを自邸に持ち帰った。



______だから。


「お帰りなさいませ、お兄様!」
「変わりはありませんでしたか、芙蓉。」

華やかな笑顔で私を迎える芙蓉。
匂い立つような艶が見え隠れして。

懐の壺が重さを増す。

「今日はお早いお帰りでしたのね。嬉しい!」
「ええ、陛下が精力的に政務をこなされて・・・」

ふわりふわりと心地よく纏わりつきながら。
芙蓉はその嫋やかな手で、私の衣装を着替えさせる。

「あら?この壺は・・・?」

懐から出てきた、壺。
そう言ってそれに触れた芙蓉の指先に見受けられた少しの傷。

「その指は?」
「あ、刺繍針を、少し。」

恥ずかしそうに指先を隠した芙蓉の愛らしい仕草。

「・・・どれ、見せてごらんなさい。」
「はい。」

素直に差し出されたその指先に、薬を塗ってやったのは。

「・・・ふっ、んぁっ・・・・」
「傷に沁みますか?」

念のため、腕にまで塗り広げてやったのは。

「い、いいえ・・・ん、くっ・・・あ・・・」
「・・・いい声です。」

決して、私のせいではありません。

そうですよね?
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