2013_06
17
(Mon)17:03

不可触

少し暗いSSを書いてみたくなりました。

もし宜しければ、どうぞ♪



【設定・臨時花嫁】
【陛下の独白・暗いです】



《不可触》




北から王宮に戻ってきた時。

一番驚いたのは、庭園の花の多さだった。

王宮の庭園ですら、「咲き乱れる」という言葉がぴったりなほどの、花の洪水で。

後宮にいたっては、もはや呆れ返るほどの有様。


「・・・・老師。見苦しくない程度に、花を処分しろ。」


正直に言えば、全ての花を処分したかったが。



___________陛下、ほら、綺麗に咲いておりますでしょう?

___________そうだな。我が『花』はいつ見ても美しい。



記憶に残る、父と母の弾んだ声音が、それを押し留めた。




そして。

今。


私の唯一の『花』の為に、日々庭園の花を咲かせる。

慎ましやかな君が、進んで手を伸ばす唯一の飾り。

愛らしい顔を彩る『飾り』を咲かせる。



「_________陛下、ほら、綺麗に咲いてますよ?」

「_________そうだな。君はいつ見ても花のように愛らしい。」



繰り返しは、しない。

庭園の花々を見るたびに、自戒する。


我が唯一の、『花』。


その幸せを、願うならば。



不可触。



欲しい、と暴れる自分を押さえこもう。


________________手折れ。


そう吠える、自分を、殺そう。


________________欲しい。


そう願う、自分に、枷を。





『陛下にされていやなことなんて、なにも。』

『いつでも貴方の味方です。』



君の言葉に、揺らぐけれど。




不可触。


触れるな。


逃がせ。


自分に、戒めを。


咲き乱れる花々を見る度に。


忘れぬよう。



触れそうになる手に、戒めを。




「_________夕鈴、今日の『花』も良く似合ってるね。」




花で、我が手を、縛る。
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2013_06
18
(Tue)10:30

不可触・老師視点

【設定・原作沿い】
【捏造あり。陛下の父王と母君がちょっとだけ】




《不可触・老師視点》




_________お主が来るまでは、花などあって無きが如しという有様での。



ずずっと茶を啜りながら、張元は語る。



見苦しくない程度に『花』を処分せよ、との仰せじゃったが・・・

そう仰られた陛下は、まるで、苦虫を噛み潰したようなお顔でのう。

・・・全て処分せよ、と、ご本心では思っておられるのが、よく分かったのじゃ。



ここだけの話しじゃが、陛下の母君は、花がお好きでのう。

自然に咲く、ごく普通の花々を愛でるのがお好きじゃった。

広くて華やかで、多くの花々が咲き乱れた当時の後宮において、ただ一輪、別格ともいえる輝きを放ってお出でだった、陛下の母君を、父王はそれはそれは愛しまれ。

そして・・・・小さな庭園を、賜ったのじゃ。


・・・庭園、ですか?


・・・そうじゃ、小さいが、陛下の母君のためにだけ造らせたものでの。

その庭園の四阿で、陛下と舞姫様が御寛ぎになられる様は、それはそれはお幸せそうでのう・・・・



老師は、しばしの間、うっとりと過ぎた日に思いを馳せていたが、ふっ、と眼を伏せ。



「_________昔は昔、今は今、じゃ!掃除娘!ほれ、今日の『花』は何にする?これなんぞが良いと思うのじゃが、どうじゃ?」


張元は、今朝摘んだばかりの花を活けた花瓶を、トン、と卓に置き、次々と花を抜き取る。


「あ、ほんとに。・・・このお花、とっても可愛らしいですね。素敵・・・花弁が幾重にも・・・」


ぱぁっ、と眼を輝かせて花に見入る夕鈴を、老師は愛しげに見つめ。



_____________手折られるばかりが、『花』ではございませんぞ?


心の中で、呟き。


_____________そうですな、まだ、『お若い』ですからな。『陛下』。


ふっ、と微笑を浮かべる。


_____________『陛下』と『舞姫様』のお心をご理解なさるには・・・・


ぱちん、と夕鈴の髪に挿せるほどの長さに花の茎を切りそろえ。


_____________まだ、少し、時がかかるやも知れませぬな。


結い上げた髪が崩れぬよう、『花』を飾ってやる。


「ありがとうございます、老師!」


「おお、よく似合っておるぞ?」


好々爺の表情で、『花』を、見遣り。


澄み渡った青空を、眺める。





________老師。・・・・あの子に、幸せを、あげて下さい・・・・


________張元。守ってやってくれ。頼む。




遠い日に賜った、誇らしい、任務。


「完遂するまで・・・・あと、どれほど、かのう。」


後宮管理人の一日が、始まった。
2013_06
18
(Tue)20:36

不可触・続

【設定・原作沿い】
【色々と暗くて痛いです】
【色々捏造してます】



《不可触・続》




ゆったりと足を運ぶ。


腕の中には、愛しい君。



「_____________夕鈴、お願いだ。」



父母が愛した庭園の四阿。


君を抱えたまま、古びた長椅子に腰を下ろす。



「____________目を、あけてくれ。」



黎翔は、愛しい妃の桜色の頬を、そっと撫でた。











「老師、ありがとうございました。私、部屋に戻りますね!」


幾重にも花弁が重なった、手鞠のように愛らしい花を髪に挿し、夕鈴は妃然と優雅に回廊を渡っていた。


「お妃様、お部屋に戻られましたら届いたばかりの花茶をお淹れいたしますわね。」

「とても可愛らしい砂糖菓子もございますので・・・・」


妃付きの侍女が、にこやかに話しかける。


「ええ、ありがとうございます。皆さんでご一緒に頂きましょうね?」


ふわりと微笑んだ夕鈴が、振り返った、瞬間。


ざわり。


殺伐とした気配が回廊を包んだ。


「っ!」


「____________お前が妃、だな。」


黒尽くめの男達が、夕鈴を庇うように立つ侍女たちを捕らえてゆく。


無駄のない動きと、侍女に悲鳴すら上げさせぬ手際は、見事なもので。


刺客に慣れた筈の夕鈴ですら、目を見張った。


「侍女たちを放しなさいっ!!」


声を上げた夕鈴に、頭目と思しき男がするりと近づき。


「_________こいつらを助けたくば・・・これを、飲め。」


小さな小瓶を、夕鈴に渡す。


「っ・・・・自害しろ、っていうの・・・?」


夕鈴は、微かに震える手で、その小瓶を受け取り。


キッと目に力を込め、刺客を睨みつける。


「俺達は、どちらでも構わない。」


「なっ・・・・」


「侍女たちを殺しても、お前が自害しても・・・・報酬は、同額だからな。」


くくくっ、と喉の奥から聞こえる乾いた笑い声に、夕鈴は刺客の言が本当である事を悟り。



____________っ、浩大!!!



心の内で、叫ぶ。



「_________ああ、妙な得物を使う護衛がいたな・・・今頃は、虫の息、か?」


夕鈴の心を見透かしたかのように、頭目は、笑う。


「安心しろ。お前が『これ』を飲めば、あの妙な被り物の護衛も、命は助けてやるよ。」



時間を稼がなきゃ。


夕鈴は、必死に言葉を探す。


「・・・・うそ、よ。私の護衛は、そんなにヤワじゃないわ・・・・」


ギリッと、唇を噛み締める夕鈴を、頭目は嬉しげに見下ろし。


「いいねぇ、その表情。気が強くて、身体は極上で。おとなしく『自害』させなきゃならねえのが、残念だ。」


さも楽しげに、嘲笑い。


まるで蛇のように長い腕を夕鈴に向けて伸ばした。


「___________この、柔らかそうな、乳房も。」


掌で、夕鈴の膨らみを撫で回し。


「___________この、真白い肌も。」


夕鈴の手を取り、二の腕が見えるほどに袖をまくり。


「・・・・・もったいねぇが、仕方がない。_________おい。連れて来い。」


頭目の合図に、二人がかりで引き摺って来られた、生死すらも定かではないほどに血に染まった、あれは・・・・


「浩大っ!!!!」


「__________さて、どうする?『お妃様』。」


頭目は、夕鈴の掌中にある小瓶を指差した。










老師からの急使が来たのは、黎翔が執務室へ向った時だった。


普段は姿を見せることなどない老師の『使い』が、黎翔が渡っていた回廊に舞い降り。



_____________後宮で、緊急事態。



短く、告げた。




「話せ。」


黎翔は、全速力で抜け道を走りながら、使いに問う。


「賊が数十名、乱入。人数の多さに、対応しきれず・・・。賊は、回廊にてお妃様を取り囲み、自害を迫りました。」

「続けよ。」

「お妃様は、毒薬を煽り、重態。」

「っ!」

「侍女や浩大殿を質にとられたものと思われます。」

「・・・・賊、は。」

「ただ今交戦中です。」

「妃はっ!!」

「老師が解毒中にございます。」



________________自害を迫った、だと?


黎翔の瞳が、赤黒く変じる。


________________夕鈴に、毒を飲め、と?


『陛下、ほら、お花が綺麗ですね。』

『陛下、ご一緒にお茶を・・・』

『陛下、陛下・・・陛下。』


ぐるぐると、夕鈴の姿が、声が、黎翔の内で、渦を巻き。


「___________っ!許さん!!!」


狼の真っ直ぐな怒りが、賊に向けられた。










ぽたぽたと、床に赤い染みを作る滴もそのままに、黎翔は老師のもとへ向った。




_________命が惜しくば、解毒剤を。


虫の息の賊の頭目に、剣を突きつけ、迫った。


_________そんなもん、あるわけ、ねえだろ。


さも楽しげに、賊は笑い。


_________ああ、こんなことなら、あの妃・・・味わっておくんだったな・・・


くっ、と顔を歪め。


息を止めた。





________夕鈴。


どうか、無事でいてくれ。



祈るような思いで、老師の部屋の扉を開けた、僕は。


眠るように、寝台に横たわる君を、見つけた。





「・・・・ゆー・・・り、ん?」


桜色の頬。

愛らしい唇。

大丈夫、血は、通っている。


「・・・・・ゆー・・・・」


・・・吐息を、感じ・・・ない。


「あ・・・・・」


胸に耳を当て、鼓動を探る。


わから、ない。


ぐにゃ。


世界が歪んだのを、感じた。


身体が、傾ぐ。


視界が赤く染まる。


「・・・・・あ・・・・・あ・・・・・」


手が、足が、震える。


「う、わぁあああああっ!!!」


自分の叫び声が、遠くから、聞こえ。


歪んだ世界が、ぷつん、と、途切れた。





目覚めた場所は、老師の部屋。


「・・・・解毒が、ほんの少し、遅れました・・・・」

「かろうじて息はあり、脈も微弱ながらもございます、が。」

「お目覚めになられるか、否か・・・・このままお目覚めにならねば、もって、十日かと。」


信じたくない言葉が、耳に滑り込んできて。


「・・・・・夕鈴、が?」


死ぬ、のか?


僕を、おいて?





気付けば、君を抱き上げてふらふらと歩いていた。


______________ねえ、夕鈴。


君に、まだ見せていない場所があるんだ。


小さいけど、とっても綺麗な庭なんだよ?


幼い僕が大好きだった場所。


僕の大切な、場所。




黎翔は、古びた長椅子に腰を下ろし、夕鈴を抱きしめ。


「_________夕鈴、お願いだ。」


震える指先で、桜色の頬を撫で。


「________目を、開けてくれ。」


懇願、する。





それから、三日の間。


黎翔は、庭園を見渡せる部屋で、夕鈴を抱きしめて過ごし。


ほとんど一睡もせず、四日目の朝を迎えた時。


「・・・・・ん・・・・・」


微かに、夕鈴の唇から、声が漏れた。




「おそらく、もう大丈夫かと。まだしばらくは安静が必要ですが・・・・お命の危機は、脱しました。」


老師の言葉に、黎翔はその場にへたり込み。


「・・・・・はー・・・・よか、った・・・・」


深く、息を吐く。


その姿は、まるで子どものようで。


微笑んだ張元は、ゆっくりと、口を開いた。


「__________陛下。余計な事とは、重々承知しておりますが、の・・・」

「・・・なんだ。」

「昔、さるお方に・・・・『手放せば、鳥は幸せになれるのか』と、問われた事がございます。」

「・・・・」

「美しい鳥を、心から愛してしまった、そのお方に。」

「老師。」

「わしは、何もお答えできませなんだ・・・」

「・・・老師!」

「ですが、一つだけ。これだけは、お伝えせねばなりませぬ。」

「老師、もう」

「・・・鳥の『幸せ』は、鳥が自分で決めるもの。だ、そうでございます。・・・陛下。」



押し黙ってしまった黎翔を、温かい眼差しで見つめ。

礼を取って辞そうとした張元に、黎翔は声を投げる。


「・・・・幸せ、だったのか?・・・その、『鳥』は。」


張元は、満面の笑みを返した。






翌日。



かつて、母が過ごした部屋で、夕鈴を抱きしめ。


黎翔は、『願い』を口にする。



_____________ねえ、夕鈴。お願いが、あるんだけど。



僕、君に・・・・触れても、いい?



その『願い』を、兎が叶えたかどうかは。


咲き誇る花々のみぞ、知る。
2013_06
19
(Wed)11:48

不可触・花守・浩大

【設定・原作沿い】
【暗くて痛いです】
【捏造がいっぱいです】




《不可触・花守・浩大》




この『花』は、あの人のだ。


__________触れる、な。


その汚ねぇ手で、この『花』に・・・・


「・・・・触るな、って、い、って、る、だ、ろ・・・」


ああ、まだ声が出た。


_________よし。いける。


指先が動いてくれるのを、確認した。












今回の客は、凄い。

本気だ。

あいつら、本気で『妃』を獲りに来た。

そう思った。


半端ない数の刺客。多すぎる。

いくら俺でも、三十人を一度に相手にするのは、さすがに、キツい。

飛び道具と鞭で減らしたけど・・・残った五人に、やられた。

回廊にいるお妃ちゃんに殺到する賊に、一瞬気を取られたのがまずかったか。


背と、腰を、ざっくり。

あー・・・・派手にやってくれちゃって。

・・・トドメを刺しにこない、って事は・・・なるほど。


俺は、『質』になりうる、ってことか?


___________なら。まだ『俺』は使える。


そう判断して、気を失った振りをした俺を、ズルズルと奴等が引き摺る。


薄っすらあけている目に、お妃ちゃんが映る。


_________おい、お前。その手を一番先に切り落としてやるからな。


賊の頭目の手が、綺麗なお妃ちゃんを撫で回している。


こいつ、許さねぇ。




「__________さて、どうする?『お妃様』」


楽しげに選択を迫る頭目。


キッと、いい目つきで敵を睨みつける、お妃ちゃん。


ああ・・・強いな。いい目だ。


妙なところに感心している場合じゃ、ない。


「・・・・触るな、って、い、って、る、だ、ろ・・・」


声を振り絞る。


はっとしたように、お妃ちゃんが俺を見た。


大丈夫だ。

心配すんなよ。

もうすぐあの人が来るから。

それまで、『道具』が盾になるから。


にぱっ、と、いつもの様に、笑ってみせ。


崩れ落ちた体勢のまま、袖に仕込んであった小さな針を数本投げる。


「っ!」


目を潰されちゃ、どんなヤツでも怯む。




___________こんなの、使えんの?


___________ちゃんと毒も塗っておるわ!・・・便利なもんじゃぞ?




さすが、じいちゃん。

ほんとに役立った。


ずる、と身体を引き起こし。

ぐっ、と、立ち上がり。


「・・・・・俺が使えなくなる前に、あの人が来るはずだから・・・心配すんなよ、お妃ちゃん。」


いつも通りの声音を、作る。



『花守』の役を、果たそう。



そう覚悟を決めた俺の前に・・・・あろうことか、『花』が立ちふさがって。


「__________私が、これを、飲めばいいのね?」


厳然と、言い放つ。


「ダメだっ・・・・・・っぐ!!!」


ドン、と右肩に衝撃が走り、やつらの誰かが俺に小刀を当てたことに気付く。


「浩大っ!」


お妃ちゃんが悲痛な声を出す。


「・・・・・さあ、お妃様・・・・どうなさいますか?」


右目を潰された頭目が、けたけたと、笑い。


気を失った侍女たちの首筋に、赤い筋が伝い。


お妃ちゃんは。


「___________浩大。陛下に、お伝えして。」


「ダメだっ!待て!」


「愛しています、って。大好きです、って。どこにいても、味方です。って。」


「っ!自分で言え!俺に言わせるな!!」


「__________お願い、ね?」


最後に見せたのは、花のような笑顔。


小瓶の蓋を開け、一気にそれを煽ったお妃ちゃんは___________


はらり、と、花弁が落ちるように、崩れ落ちた。




刹那。



残りの毒針を、一気に投げ打ち。

倒れた敵から得物を奪い。

手当たり次第に、数を減らしていく。



「_________小僧っ!!」

「じいちゃん、遅いっ!お妃ちゃんの解毒を早くっ!!」

「っ!!任せろっ!」


屋根の上から飛び降りてきたじいちゃんを庇い、逃がし。

ただひたすらに、怒りのままに、数を減らしていく。




もう、前なんて、見えない。

痛みなんて、そんなの、分かんなくなってる。


どれほど、そうしていたのか。


_____________遅いよ、へーか。


よく知る殺気の渦を感じた時には、きっともう動けてなかったんだろうな。



あー・・・そうだ。


お妃ちゃんからの伝言、伝えてやんなきゃ。


仕方ない、死なないように、気をつけて、戦お・・・



ガツン、と重い衝撃が、頭部を襲い。


意識が暗転した。











「う・・・・・」

「お、小僧、目が覚めたか。」


薬臭い部屋で、目覚めた。


「お妃ちゃん、は・・・」

「・・・・まだ昏睡状態じゃ・・・」

「解毒、は?」

「手を尽くしたが・・・の。」




ずきん。


・・・ああ、痛え。


ずきん、ずきん。


心が、痛え。


まだあったんだな、俺にも。


ずきん、ずきん、ずきん。


ごめんよ、陛下。お妃ちゃん。



「__________じいちゃん。俺、『花守』失格だ・・・」


「・・・それは陛下がお決めになることじゃ・・・・」


慰めも褒めもしない、『後宮管理人』。

その態度に、救われる。



___________頼む、お妃ちゃん。


目を開けてくれよ。


俺に、言わせんなよ。


自分で、言ってやってくれよ。


頼む。





浩大の頬に伝う、綺麗な雫を。


張元は、黙って見つめた___________
2013_06
19
(Wed)16:04

不可触・甘露・夕鈴

【設定・原作沿い】
【捏造しまくりです】



《不可触・甘露・夕鈴》



私一人で、三人分なら。


・・・ふふっ。お得、よね。



こんな時でも笑えるなんて。

私も強くなったわね。



「___________浩大。陛下に、お伝えして。」


「ダメだっ!待て!」


「愛しています、って。大好きです、って。どこにいても、味方です。って。」


「っ!自分で言え!俺に言わせるな!!」


「__________お願い、ね?」



大丈夫。

浩大一人なら、逃げ切れるわ。

私がこれを飲めば、侍女さんたちも助かる・・・はず。


___________陛下。


大好きな貴方の笑顔を思い浮かべながら。


私は、一気に毒を煽った。










「・・・・う・・・・」


なんだろう。頭が、重い。

・・・ここ、どこ?

見えない。


「っ!夕鈴っ!!」


___________あ、陛下。


「夕鈴、夕鈴!!」


___________なんで、そんなに呼ぶの?陛下。


「誰かっ!すぐに老師を呼べ!!!」


___________なんで、老師?


「・・・・な・・・・」


おかしいわ。声が出ない。

目も、開かない。


「夕鈴、しっかりしろ!私が分かるか?!」


もちろんですよ、陛下。


「老師はまだか?!」


そんなに早く来るわけないじゃないですか・・・老師だって、お忙し・・・


「お妃様のご様子は?!」


あれ?もう、来た。


「お妃。目を開けてみよ。」


老師が言うとおり、目を開けようとするんだけど、開かなくて。

そっと、冷たい布で瞼を拭われたのが分かった。


「・・・・今度は、どうじゃ?」


冷えた布の感触を頼りに、よいしょ、っと瞼を持ち上げると。

薄ぼんやりとした視界に映ったのは・・・・・物凄く顔色が悪い、陛下。


「・・・へ・・・・か」


どうしたんですか、って言いたいのに。

やっぱり、声が出ない。


「水を飲ませませんと。」

「私が。」


温かくて柔らかいものが、唇に押し付けられる。

なんだろう、と思っていたら、ざらりとしてぬるりとする、なんだかわからない物に入りこまれて。

・・・・少しぬるくなった水が、とっても甘く感じた。



「夕鈴、もう少し飲むか?」


心配そうな陛下の声がする。

今度は声がでた。


「・・・は、い。」

「わかった。」


また、口の中に何か大きく蠢くものが入ってきて。

甘い水が、流し込まれる。


「・・・・っふ・・・・う・・・」


水の甘さに、息を吐いた私を、陛下がぎゅうっと抱きしめた。


「よかった・・・・・!」



徐々にはっきりと甦ってくる、記憶。


「へーか、こう、だい・・・じじょさん、たち・・・・」


「みんな無事だよ。浩大も、怪我はしてるけど、大丈夫。侍女たちもね。」


安心させるように、陛下の大きな手が私の背を撫でる。


・・・・いい気持。


「・・・・夕鈴。」


私は再度、眠りに落ちた。





翌朝。



目覚めると、知らない部屋で。

すぐ横には、陛下がいて。


「・・・・・おはよう、夕鈴。」


心配そうに、私を見つめる陛下のお顔は、やっぱり青白くて。


「おはよう、ございます。陛下、お顔の色が・・・・だいじょうぶ、ですか?」


お熱はないかしら、と、手を動かそうとして。

・・・体が動かない事に、気付いた。


「夕鈴、毒を飲まされて、三日以上昏睡状態だったんだよ。身体が動くようになるまで、まだ数日はかかるだろうって、老師が。」


寝台の中から私の手を出し、陛下がそっと撫でてくれた。


「・・・・ふふ、いい気持ち、です。」


・・・・また、眠っちゃいそう・・・・


うとうとし始めた私を、陛下が抱きしめる。


「_____________ねえ、夕鈴。お願いが、あるんだけど。」


横たわったままで、耳元で、そんな声で囁くのは反則だと思う。


「僕、君に・・・・触れても、いい?」


驚いて陛下を見上げると、そこにあったのは、優しく揺れる、紅い瞳で。


「・・・どう、して、ですか?」


突然の事に、問い返す事しか、出来なかったのに。


「君が大切だ。君を愛している。君を失いたくない。君に側にいて欲しい。君しか欲しくない。君だけが、私の后だ。」


陛下からの答えは・・・・真摯な瞳と、なんの躊躇いもない・・・・告白。


「陛下、えんぎ・・・」

「違う」


わかってる。

この陛下は、演技じゃない。私だけが知っている、私だけの、『陛下』。

でも、それでも。

逃げな、きゃ。

この人の、為に。


「_________私、偽者」

「違う」


「私、何も持って、な」

「夕鈴だけが、欲しい。」


「借金が、ま」

「今回の危険手当で完済する。」


「う・・・あ・・・・」

「・・・ほかに言う事は?」


にっこりと微笑む陛下に、敗北を悟り。


「・・・・ごめんなさい。陛下。」


ふふっ、と、笑ってしまう。


_____________そうよ。


一番、貴方に伝えたい事は・・・・・


「____________愛しています。陛下。」



『っ!自分で言え!俺に言わせるな!!』



浩大の悲痛な叫びが、耳に甦る。


そうよね、浩大。


大切な事は、自分で伝えなきゃ。



「陛下・・・・珀黎翔様。私は、貴方を愛しています。・・・心から。」



死を目前にして、たった一つだけ浮かんだ、心残り。

それは。


「__________大好きです。陛下。」


それを、貴方に伝えられなかった事。




私は、野の花。

どこにでもある、ただの花。

でも、その花の甘露は、きっと、大輪の花にだって負けない。


____________貴方が、大切です。誰よりも、何よりも。


野花の想いを、集めて。

心に溢れる甘露を、貴方に。



私の全てを。

愛しい、貴方に。


それが、私の___________『幸せ』。
2013_06
19
(Wed)18:30

不可触・花

【設定・原作沿い】
【捏造しまくりです】



《不可触・花》



甘露。



君は、甘露だ。

君という『花』の甘露は尽きることなく溢れ続け。

僕は、花を守り、貪る。







夕鈴の唇から零れ落ちる言葉を、胸に刻む。


「__________愛しています。陛下。」


うん。僕もだよ。


「陛下・・・珀黎翔様。私は、貴方を愛しています。・・・心から。」


初めて君が紡いでくれた僕の名前。

今では誰も呼ぶことのない、名。


「__________大好きです。陛下。」


ゆう、り


「____________貴方が、大切です。誰よりも、何よりも。」


っ!


「私の全てを。愛しい、貴方に。」


視界が、潤む。


「それが、私の____________『幸せ』。」



心の望むまま、君に手を伸ばし、抱きしめた。


_________触れるな。


そう呟く自分も。

我が手を縛る、花も・・・もう、ない。



薄茶の髪をさらりと撫でつけ、頬に口付け。

優しい抱擁と、心を込めた口付けを贈る。

横たわったままの夕鈴に、頬を寄せ。

誘うように薄く開かれた唇に、自分のそれを重ね。

ぷるんとした唇を愛しむように、食み。

自分が望むままに、口中を探る。

小さな口を、自分の舌で丹念に探り、可愛らしい歯列をなぞり、逃げる舌を搦め取る。


「・・・・っ!・・・・っ!!・・・・は、ふぅっ!・・・・・っ!」


上手く息が出来ない、と、首を振って逃げようとする君の後頭部を押さえ込み。


「夕鈴、鼻で息して?」


優しく囁き、獰猛に貪る。

________________足りない。まだ、足りない。


「っ・・・・!!あ、ふっぅ・・・・・!は、あ、あっ・・・・!」


可愛らしい嬌声が、僕を煽る。


「・・・・んっ、へいか、・・・・くるし・・・」


夕鈴の背を擦り、呼吸を整えさせ。


「落ち着いた?」


にっこりと笑むと、少し頬を染め、こくん、と夕鈴が頷いた。


・・・・ああ。だめかも。


「・・・じゃあ、もう一度・・・」


「っ!・・・っ!・・・んふっ・・・あはっ・・・・!」


ああ・・・・甘い。

吐息すらも、甘い。

夕鈴、夕鈴。



何度も何度も、甘露を啜り。

もう幾度目かも分からない口付けを交わし続けていた時。

急に、夕鈴の身体から力が抜けた。


「っ!ゆ、夕鈴?!」


慌てて唇を離し、夕鈴を見ると。

愛らしい頬は、これ以上ないくらい真っ赤で。


「うっ!ちょっと、まずいかも!」


黎翔は、慌て。

気を失った夕鈴の額に、冷やした布をのせてやりながら。


「______うん。夕鈴が元気になるまで、加減しよう。・・・自信、ないなぁ・・・」


物騒な事を呟いて、夕鈴に優しく口づけた。






_________まるで一幅の絵の様な、その様は。

張元の記憶に残る、いつかの王と寵妃の姿。

黎翔の幸せそうな横顔を遠目で見やり、張元はゆったりと茶を啜る。

くすくすと笑うように揺れる花々に、微笑みかけながら。


そして、屋根の上では。


「・・・・へーか・・・・ちょっとは加減してやんなよ・・・・」


楽しげに呟く隠密の声が、風に乗って流れていった。
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